コード編

I章 : 基本の体系

「Ⅰ章 : 基本の体系」では、コードネームやコード進行に関する最も基本的な部分を学びます。基本的な語彙・概念と少々の編曲に関わる知識、簡単なコードアレンジ法など、このI章だけで小さな理論体系が完成します。
  • 1コード理論をはじめる

    そもそもコードとは何か。コード理論の概要を、また「3つのレイヤー」を用いて説明する。

  • 2長調・短調の区別について

    コード理論を進めていくうえでの前提となる、「長調・短調」の区別について。キーの長短が区別しづらい楽曲を、理論上どう扱うか。

  • 3二音のハーモニー

    音を2つ重ねたときに生じるハーモニー、その質感差について。

  • 4六つの基調和音 ❶

    コード進行の根幹をなすのはたった6つのコードだけ。六つの基調和音を学ぶ。

  • 5メジャーコードとマイナーコード

    最も基本的な2つのコード、「メジャーコード」と「マイナーコード」について。

  • 6六つの基調和音 ❷五度圏の活用

    五度圏を活用し、どんなキーでも基調和音を作れるようにする。

  • 7コード演奏/分析の基本事項

    コードを実際に演奏/分析する際のポイント。配置の方法や、どこまでをひとかたまりのコードとみなすか。

  • 8ディグリーネーム

    より理論的に音楽を理解するために、コードに番号を振って抽象化する。キーの中での「相対的な位置」という概念を知る。

  • 9コードの周期と連結

    コード進行のサイクルや、コード同士の繋ぎ方に関する基礎。

  • 10スリーコードと代理コード

    6つの基調和音を、2つのグループに分類する。キー内での相対位置が、コードそれぞれにキャラクターを与えることを理解する。

  • 11コードの機能分類

    コードをトニック・ドミナント・サブドミナントの3機能に分類する。それに基づいて、コード進行の性格を解釈する。TDSの生まれを簡単に知る。

  • 12セブンスやテンションの活用

    三和音に音を付加して、様々なサウンドを得る。II〜IV章で扱う高度な和音を、“名前抜き”で先取りゲットする。

  • 13クオリティ・チェンジ

    コードのメジャーとマイナーを入れ替えることで、より曲想の幅を広げる。コードの幅を倍増させる。

  • 14ケーデンスと進行のリズム

    コードがトニックに終止する「解決」のパターンやタイミングについて、またハーモニック・リズムについて。


接続系理論

I章の後半戦です。接続系理論は、ポピュラー音楽のための実践的な理論です。2つのコードを繋げた際に生じる曲想について徹底的に論じます。
  • 15コントロール・ファクター

    接続系理論の概要、およびコードの接続を分析する際の“ものさし”となる、2つのコントロール・ファクターについて。

  • 16系統分類

    コードを、そのルートの移動に基づき分類する。各接続系の特徴について簡単にまとめる。

  • 172度上行/下行の用法

    2度上下の接続について。V→IVの禁則がいかに禁則でなくなったか。

  • 185度下行の用法

    ポピュラー音楽における基礎と言える、5度下行の接続について。

  • 195度上行の用法

    個性的な曲想を生む5度上行の接続について。また『かつての禁則』だったV→IImの活用法。

  • 203度下行の用法

    3度下行の接続について。また『かつての禁則』だったIIIm→Iの活用法。

  • 213度上行の用法

    3度上行のうち、広く受け入れられているI→IIImとIV→VImについて。また『かつての禁則』だった3つの接続の活用法。

  • 22王道進行と文化の差

    ジャンルによって好まれるコード進行がいかに異なっているか。音楽理論は文化であることを知る。

  • 23接続系理論の総括

    最後のまとめ。『かつての禁則』をまとめて暗記する方法や、データの分析、抽象と捨象について。


II章 : 拡張と借用

II章では、メジャー/マイナーコードに音を足したり引いたりして拡張する技法と、他の調からコードを引っ張ってきて表現を広げる技法について学びます。シンプルなコードの音楽以外のほとんど全てのジャンルで重要になる知識です。
  • -ゲートウェイ

    コード編I章の内容をきちんと理解できているかを確認できるテスト場。ここで良い得点を取ってから進むと安心です。

  • 24パワーコード

    ロック系音楽で多用される独特な奏法、パワーコードについて。その音楽理論的特徴。

  • 25セブンスコード

    メジャーコード・マイナーコードに音を追加して、「セブンスコード」を作る。4種類のセブンスコードの区別の仕方。

  • 26二次ドミナント

    より複雑なサウンドで曲を彩る技法、二次ドミナントについて。

  • 27近親調

    ある調に対して関係の深い調と浅い調について。同主調、平行調、属調、下属調。

  • 28パラレル・マイナー ❶

    同主調からコードを借用して、さらに表現の幅を広げる。その定番パターンを紹介。

  • 29パラレル・マイナー ❷

    より具体的な音階の選択や、名称について。


III章 : コード種の網羅

この章では、メジャー・マイナーコード以外の様々なコードについて学びます。sus4、aug、dimといった多種多様なコードの知識を詰める章です。技巧的なコードを要しないジャンルにおいては、少し重要性が落ちます。
  • 30III章のガイドライン

    III章でどのようにコードバリエーションを増やしていくかの概要を確認。

  • 31詳細度数

    I章では少ししか使わなかった「詳細度数」の全容を知る。

  • 32シャープファイブの和音

    メジャーコードの第5音を半音上げて、シャープファイブのコードを作る。

  • 33マイナーフラットファイブの和音

    マイナーコードの第5音を半音下げて、マイナーフラットファイブのコードを作る。VIIの和音と再会する。

  • 34sus4とsus2

    コードの第3音を上下させて、sus4/sus2を作る。その独特の効果と用法について。

  • 35ディミニッシュセブンス

    不気味なサウンドを特徴にもつDiminished Seventhについて知る。構成音の特徴や、その用法について。

  • 36変化系のコードのまとめ

    ここまで紹介してきたコードのまとめと、別名・別表記についてこの一記事に集約してまとめる。

  • 37スラッシュコード ❶ 転回形

    コードのルート音以外をベースが奏でる技法、スラッシュコードの中でも最も基本技術である転回形について。いかにベースラインを滑らかにするか。

  • 38スラッシュコード ❷ ペダルポイント

    ベースがコードを無視して一定の音を演奏し続ける技法、ペダルポイントについて。定番のパターンや実例の紹介。

  • 39スラッシュコード ❸ ハイブリッドコード

    コードとルートが別動することにより、2種類の機能感を混成させる技法、ハイブリッドコードについて。

  • 40シックスコード

    コードに6度の音を足して、Sixth Chordを作る。サスペンド的用法と、そうでないものについて。

  • 41ナインスコード

    セブンスコードをさらに進化させて、9th Chordにする。各種9thコードと、add9について。sus2との違い。

  • 42基調外和音と接続系

    基調外和音を接続系理論でどう取り扱うか。またクロマティック・ミディアント、トライトーンの接続について。

  • 43異名同音を区別する

    異名同音を区別する方法、およびその意義について。楽譜を書かない人も異名同音を意識する意義がある。


IV章 : ポップスの技法

この章では、おしゃれなアレンジ方法や定番パターンなどを知り、よりプロフェッショナルなコードワークを身につけます。この章の技法までマスターすれば、ポップスの技法はほぼ全て網羅したに等しいです。

V章 : 近代の技法

音をあえて濁らせる、和音に和音を重ねる、複数の調を同時に奏でるなど、主に近代クラシックやジャズの入り口となるような、近代の発展的技法などを学ぶステージです。大衆音楽で使用するようなものは、もうほとんどありません。
  • 55トーン・クラスター

    3度間隔ではなく半音や全音差で音を敷きつめるユニークな技法、トーン・クラスターについて。また、それをよりカジュアルに用いるクラスター・ヴォイシングについて。

  • 56四度堆積和音

    前回とは逆に、4度で音を配置する技法について。ジャズ、近代クラシック、ポピュラー音楽それぞれで四度堆積が活用されている事例も紹介。

  • 57オルタード・ドミナント

    ドミナントセブンスコード上に、9th以外の応用的テンションを乗せる。-9,+9,+11,-13それぞれが持つ個々のサウンドの違いについて。

  • 58複合和音(ポリコード)

    和音に和音を重ねる技法について。またテンションコードをアッパーとロウワーに分割する技法。

  • 59パラレル・メジャー

    「同主調借用」の応用編。同主短調ではなく、同主長調からコードを借用する。IV#m・VIIm・I#mを使いこなす。

  • 60多調性(ポリトーナリティ)

    複数の調を同時に演奏する前衛的技法、多調性について。3つの調を同在させる方法についても紹介。

  • 61コードネームの決定法

    「♭5」と「♯11」など、どちらで書くべきなのか迷うコードネームの決定法を、様々な事例と共に解説。


VI章 : ジャズの世界

モダン・ジャズ理論の入門編です。ジャズ理論の特徴的な部分だけを抜粋し、基礎領域を学ぶことができます。特に一般音楽理論との構造・思考の違いを理解し、相対的な価値観を養うことを目的に作られています。
  • 1ジャズ理論への招待

    ジャズ理論の特徴、理論に求めるものの違いについて。即興演奏を想定していることが理論系にどう影響を与えているか。

  • 2ジャズ理論のコード基礎

    これまで学習してきたコード理論を、ジャズ的目線からまとめ直す。ポピュラー系との考え方の違いについて。

  • 3トゥー・ファイヴの応用

    ジャズ理論の核であるii-Vの応用法を学ぶ。ii-Vを利用した転調や、Related IImについて。

  • 4トライトーン代理の拡張

    トライトーン代理を発展させ、V7以外のドミナントセブンスコードを増4度ウラにひっくり返す。

  • 5モーダル・インターチェンジ

    II章で扱った「同主短調からの借用」をさらに発展させ、メロディックマイナーやミクソリディアンといったスケールからの借用を行う。

  • 6ドミナント・コード上でのテンション

    二次ドミナント、代理ドミナントといったドミナント系コード上でのテンションの選び方について。また、ルートを固定点としたスケールの入換え。

  • 7ジャズのヴォイシング基礎

    ジャズ理論の重大要素のひとつであるヴォイシングについて。Drop2ブロックコード、種々のアプローチについて。

  • 8サイド・ステッピング

    ジャズ特有の技法であるサイド・ステッピングについて。他の演奏からスケールアウトしてソロを弾くことの効果や実例。

  • 9トライトーン代理の拡張②

    トライトーン代理をさらに発展させ、ドミナントセブンスでないコードでも増4度反転を試みる。

  • 10コルトレーン・チェンジ

    遠隔調へ転調する「Giant Steps」や「Countdown」のコード進行、またマルチトニック・システムについて。


コードスケール理論

VI章の後半戦です。「複雑な転調」の中での「アドリブ」を効率的に行うために特化した「コードスケール理論」の基礎を学びます。

VII章 : 古典の世界

古典派理論の入門編です。クラシック音楽の理論的特徴や、一般音楽理論とは大きく異なる様式、そして「和声」に関する理論の基礎。こちらもやはり、ポピュラー理論と“なぜ”異なるのかという背景世界を理解することが目的の中心です。
  • 1古典派理論への招待

    古典派の歴史上の位置付けや、その内容、時代性など、古典派理論の導入ガイド。

  • 2古典派長調の様式

    古典派理論における長調の体系。異なる規則や、第四の機能プラガルについて。また、古典調の雰囲気を出すための基本事項を確認。

  • 3古典派短調の様式

    古典派理論における短調の体系。古典派の極めてユニークな点である、長調/短調の完全な対照化について。

  • 4度数と倍音列

    和声論の入り口。それぞれのインターバル関係がもつサウンドの質感と、音響学の基本である「倍音」について。

  • 5標準配置

    和声論の第一回。4つの声部の名称や、標準配置の存在について。

  • 6標準連結と原則

    和音同士の連結に関する基本ルールを学ぶ。3種類の連結種別と、2つの基本原則「最短経路の原則」「外声反行の原則」について。

  • 7属七と限定進行音

    和声論における、V7・V9のコードの限定的な進行について。また、理想的な配置が決定されるまでの思考プロセスについて。

  • 8跳躍と対斜の禁則

    和声における基本的な原則、増音程の移動や対斜について。

  • 9連続8度・5度の禁則

    連続8度・連続5度の禁則について。パワーコードは古典派理論では禁則なのか? 禁則の意味や目的からより深く理解する。

  • 10並達8度・5度の禁則

    並達8度・並達5度の禁則、またそれが例外的に許可される場合について。II-Vの連結についても補足。

  • 11転回形と表記法

    和声論における転回形の様々な表記法を解説。数字付き低音についても軽く紹介。

  • 12第一転回形

    3rdをバスに据える第一転回形の配置や進行について。マイナーコードではなぜ3rdの重複が許されるのか。

  • 13第二・第三転回形

    5th,7thをバスに据える第二・第三転回形について。また、短調の場合にどうなるか。

  • 14クラシックの転調技法基礎

    属七・減七・増三和音を用いた、クラシックの基本的な転調技法について。

  • 15ナポリの六とナポリの和音

    「ナポリ楽派」が象徴的に使っていた和音、「ナポリの六」と、そこから派生して生まれた「ナポリの和音」群について。

  • 16増六の諸和音

    特徴的な音程である「増6度」を含む様々な和音について。トリスタン和音や、異名同音を利用した転調について。

  • 17和声を学ぶ本質

    VII章の総括。現代の我々が古典派和声を学ぶ意義。コードという概念からの解放。


VIII章 : 超流派の世界

特殊な理論系の解説、流派を超えた理論解釈の比較、現行理論の“抜け穴”の発見など、メタ視点・批判的思考によって音楽理論への理解をさらに深める、自由派ならではの章です。内容は難しく、研究的な要素も強いです。
  • 62メタ音楽理論 ❶フェイズとイズム

    音楽理論を客観的に捉えるために、「音楽」ではなく「音楽理論」そのものを理論化する。理論が構築されるまでのプロセスや立脚する主義を分割・対置する概念や語彙を獲得する。

  • 63中心軸システム

    全てのコードを三機能に分類する理論。その生まれや注意点を含めて解説。

  • 64Lydian Chromatic Concept

    先鋭的なジャズ系メソッド、リディアン・クロマティック・コンセプトについて。12音のトーナル・オーダー7つの主要音階による色づけ。

  • 65ナポリの六の解釈に関する詳論

    その解釈に関して見解の割れる「ナポリの六」について、歴史上どのような見解がなされてきたか、また解釈差がどのように生じるかを「メタ音楽理論」をもとに解説する。

  • 66Blackadder Chord

    Rt・M2・+4・m7から成る「Blackadder Chord」の話、また多重の文脈をもつコードについて。

  • 67機能和声の変遷 ➊リーマンの“原作”

    コードの「機能」という考えはいつ生み出されたのか。リーマンが提唱したオリジナルの機能和声論を知る。

  • 68機能和声の変遷 ❷各流派の機能論

    リーマン以降のクラシック流派、ジャズ流派がいかに機能和声論を利用し、改変や拡大解釈がなされてきたかを辿り、現在の形式に至るまでの変遷を理解する。

  • 69ネオ・リーマン理論 ❶PLR操作とトネッツ

    20世紀アメリカで発展したネオ・リーマン理論。その基礎となるPLR操作とトネッツ、およびハイパーヘキサトニック・システムについて。

  • 70ネオ・リーマン理論 ❷共通音のネットワーク

    ネオ・リーマン理論で活用されるキューブ・ダンス、パワー・タワーズ、そしてGISや音楽幾何学について。

  • 71不定調性と調性スキーマ

    調性がハッキリしない「不定調性」のコード進行を理論的に構築していくために、「調性スキーマ」をより詳細に分析し、また接続系理論をアップグレードさせる。

  • 72リスペルと黙殺された度数たち

    一般的なコードシンボルシステムにおいてその存在が無視されている「減4度」「増6度」などについて。異名同音を区別する実践上の意義について改めて考える。

  • 73ポリセミー論 ❶和音の多義性について

    和音の多義性を厳密に観察し、言語化し、理論的にコントロールする。モノセミーからの脱却と、リアルタイムで変化する認知を論じる。

  • 74ポリセミー論 ❷異名同音の多重状態

    より高度な形での異名同音のすり替えや、単一のターゲットに進む2コードを同時に重ねる「ナポリ式」のポリセミー、そして既存の理論に反する「パラドックス型」の和音について。