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半音、全音ときてここからは短3度上下への転調です。

1 短3度下転調(R-P)

短3度上下転調のうち、今回は短3度“下がる”方の転調を解説します。短3度下への転調の基本的な理解としては、パラレル関係にあるマイナーキーからメジャーキーへの移動、「パラレルメジャー(同主長調)」への転調です。

短3度下転調のベクトル

ご覧のとおり。AmキーからAキーに行くならそれは紛れもないP転調、CキーからAキーに行くなら、「R転調+P転調」の距離感になります。
今回はレラティヴの二調を同一視して進めていますが、ここに関しては厳密にいうと、くっきりと暗いAmキーからAキーへ転調した場合には、暗から明へのコントラストがクッキリします。逆に明るいCキーからAキーへ転調した場合には、むしろ中心音高が下がったということの方に意識が向くでしょう。

VIを見立て直して転入

最も簡単な方法は、VImをクオリティチェンジしてVIにすること。そのVIこそが短3度下のキーのリーダーですから、それをIと“見立て直す”と転調完了です。

こちらはそれを実施した典型的な転入パターン。メロの終わりがV、サビの頭でクオリティチェンジのVIが登場して、それがそのまま主和音となって転調が完了します。

僕のギターの転調

あまりにも自然すぎて、一般リスナーは転調だと気づかないかもしれません。調号+3によって、全体のトーンは理論上明るくなります。一方で中心音高が落ちるので、どことなく落ち着きもある。全音上転調が中心音高も調号もプラスだったことを考えると、この点に関して短3度下転調は大人しめと言えます。

短3度下転調から戻るには?

サビの後は間奏なしでAメロに戻りますが、予備動作、導きのようなものは一切なし。シンプルに転調前のI→転調後のIと進みます。

僕のギターの転調の復帰

これが違和感なく可能なのがT転調のいいところ。もちろんVsus4→Vのような流れでアシストしてもよいですが、なくても問題なし。

2 短3度下+R転調(R-P-R)

短3度下のメジャーキーに行けるのならば、そのさらにレラティヴへ行くことも同様にして可能です。

RPR転調

座標で見ると遠く感じますが、レラティヴ間の移動が「あってないようなもの」なので、実際にはこの転調は容易に行えます。この場合は主調でいうところの♯IVmをリーダーに据え直す必要がありますから、IVmへと強い推進力で進むコードがあれば、それが転調のカギになりますが…

そこで適役として考えられるのがIII7です。III7♯IVmと繋げば、これがそのまま転入先のV7VImに相当するからです。

こちらの曲では、III7がその「カギ」になっています。

ポニーテールとシュシュの転調

これは「裸足の水しぶき」の部分からサビの入りまでのコード。IIImのクオリティチェンジであり、二次ドミナントであるIII7を2小節続けていて、これをV7と見立て直してV-VImの動きで転調を完了します。聴いて分かるとおり不自然さはなく、これもやはり転調に気づかないリスナーがいてもおかしくないと思います。

シャープの多いキーでイメージが湧きづらいかもしれないので、ここはCメジャーキーに移調した楽譜も置いておきます。

ポニテ転調(Cメジャーキー)

E7といえばAmに行くのが定番なのに、それを外してFmに行くという構図になっていることが分かります。

メロの先導

「ポニーテールとシュシュ」の転調は、3度下転調のお手本とも言うべき楽曲で、メロディも自然な転調を補佐しています

ポニテ転調のメロ

こちらは転調の瞬間のメロディ。コードで言えば2小節ともIII7なのですが、2小節目の方だけはファにシャープをつけています。つまり、コードネームには見えないレベルで変化が起こっているのです!

このファは、転調に大きく貢献しています。3度下転調を完了させるにはド・ファ・ソの3つにシャープをつける必要があるわけですが、Fmのところでいきなりファにシャープだと、唐突さがある。そこでメロが先陣を切ってファを鳴らしているというわけです。

「III7上でソだけじゃなくファにもシャープがつく」というのは、事実上「3つの短音階」で解説したメロディックマイナースケールを使っているということです。

メロディックマイナー

本来はVImへ滑らかに着地するために用いられるはずのメロディックマイナーを、転調に利用するという非常にクレバーな発想です。

短3度下+R転調から戻るには?

この曲は間奏の最後で基調外和音を挟み、メロ頭で復帰するという構図になっていて、「僕のギター」とは違って丁寧なガイドがあります。せっかくなのでこのCメジャーキーに移調した状態のままでその復帰部分も楽譜にします。

ポニテ転調からの復帰

短3度上のキーに復帰する必要があるわけですが、パラレルマイナーの♭VI♭VIIを差してあげると、それがちょうど短3度上のキーのIVVに相当するわけですね! 広義のピボットコードを2つも挟んでいるので、非常に丁寧な導きをしていると言えます。

いずれにせよ短3度の上下転調はどちらもT転調ですから、復帰も簡単です。予備動作なしでも、全然大丈夫ですよ。

まとめ

  • 短3度下転調は、パラレルメジャーキーへの転調だと認識すると分かりやすいです。
  • 調号プラス3なので、III7やVIといったメジャー系クオリティへのクオリティチェンジをピボットにするのが定番です。
  • 復帰する際は、逆にパラレルマイナーキーへ移動するということなので、パラレルマイナーコードを使うとスムーズです。
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