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今回は「新しいコードネームを知る」回です。

これまでのメジャーコード・マイナーコードにさらに音を加えて、サウンドをより複雑にしていきます。音響の世界を一段階拡張する、とても重要な回です。

シンプルな響きで勝負するロック・ダンスではほんの僅かに重要性が落ちますが、それでもよっぽどストレートな曲でなければ普通によく使う基本のコード群です。

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1. セブンスコード

六つの基調和音」の回では、音の積み方について解説しました。そこでは、ジャズ理論は4段がさねのコードを基準として理論展開をすることも軽く触れましたね。

これまでのRt3rd5thの上に積まれた4つ目の音は「7度」の音程になるので、第7音7thと呼ばれ、7度を有するコード全般を総称してセブンスコードSeventh Chordsといいます。

セブンスやテンションの活用」の記事ではこの7th付加が最も扱いやすいと紹介したので、もしかしたらとっくに実戦投入しているかもしれませんね。今回はこれを改めて正式に、コードネームやコードシンボルといったところまで含めて解説します。

聴き比べ

まずは通常の三和音とセブンスコードでの純粋な聴き比べをしてみましょう。

三和音

コード進行はIVVIIImVImIImVIです。典型的なポップスの進行ですね。三和音は澄み切っていてストレートなサウンドが魅力です。コレを全部セブンスコードに変えてみます。

セブンスコード

たった1音足しただけでも、かなり響きが複雑になったと思います! 深みが出て、よりおしゃれな感じに仕上がっています。ジャズはこちらが標準状態なわけなので、ジャズの影響があるジャンルにおいてはこのセブンスコードを常用して普通ということになりますね。

セブンスコードは、「ドに対してシ」「ソに対してファ」という風に、オクターブの高低を抜きにすれば音階で隣り合う音どうしを同時に鳴らしているわけなので、それなりの濁りを有します。しかし、綺麗に3度間隔で積んでいるためか、音響的にある程度の安定感はあります。“攻守のバランスに優れたプレイヤー”というようなイメージですね。

セブンスコードは、この7thの音をてっぺんに持って来れば「露骨にオシャレ」な感じになりますし、和音の下の方で使うと「さりげない深み」が出ます。

配置

セブンスを足しても、大元のメジャーコード/マイナーコードの音響はそのままあるわけなので、変化は大きくありません。臨時記号がつくわけでもないので、かなり自然に曲中で使えて、曲に深みを付加してくれます。

ピアノ曲とセブンスコード

セブンスコードを効果的に用いれば、それだけで曲を特徴的なものにできます。

三和音

IVIを繰り返すコード進行。なんだか地味なピアノ曲ですが、これをセブンスコードに変え、それに合わせてメロディも少し調整すると……

セブンスコード

セブンスコード

これは……!! エリック・サティの「ジムノペディ第一番」になりました。この曲、実はセブンスコードの魅力を存分に活用した一曲なのです。セブンスコードは、その絶妙な濁りのもつ魅力、それだけで曲を成り立たせるくらいのパワーを秘めているんですね。

ギター曲とセブンスコード

逆にギターロックのようなジャンルであっても、セブンスコードは活用できます。

三和音

こちらはトライアドの状態。ちょっと味がなく、シンプルな状態です。これをセブンスに変えてみて、どれくらいサウンドが変わるかを検証します。

セブンスコード

今回は中央のギターが一律で7thの音をトップに据えてみました。中央ギターが単独で四和音を弾くのではなくて、3本のギターが合わさってセブンスコードのサウンドを形成するという編曲になっています。濁りが増したぶん、より複雑で、大人っぽいような雰囲気が現れました!

すごいのは、ただ機械的にセブンスにしただけなのに何かメッセージ性みたいのを感じることです。サウンドが複雑になったぶん、感情に訴えかけて来るものがあるんですね。平たく言うと、「エモさ」のようなものをセブンスコードは容易に喚起してくれます。

メリハリ

ただもちろん、ずっとひたすらセブンスというのも、それはそれで平坦な味わいになってしまいます。複雑な響きにすべきところと、あえてシンプルにすべきところをきちんと見極めて、メリハリをつけると良いでしょう。

さっきの音源の、最後をあえて単音のフレーズでシンプルな響きにしてみました。ちょっとドキッとする展開になったと思います。今後も複雑な和音をドンドン知っていきますが、そうであればこそ、「引き算」の美学も忘れないようにしたいものです。

ですから下図のようなイメージを思い描いて、出したい曲想に応じて使い分けるといいかもしれません。

比較

どれくらいの複雑性がマッチするかはジャンルによって大きく異なり、ロックやEDMではややシンプルに寄ったバランスが好まれるでしょう。古典的なクラシックでも、Vの和音以外でのセブンスコードの使用には制限があり、スッキリした三和音の方が基本となっています。

一方ジャズにおいてはこのセブンスコードの方が基本となって理論が組み立てられていて、逆に三和音の方が「セブンスコードの7thをわざわざ抜いている」というような見方をされます。

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