六つの基調和音 ❶

コード編 Ⅰ章:新しい言葉

さて、「ひとつ飛ばしでお団子がさね」が一番の基本形になるという話でした。

メジャーコード

そうすると、♯や♭みたいな臨時記号を使わずに作れる基礎的なコードというのは、実はすごく限られています。今回はその「基礎的なコード」を学んでいく回です。

#1 ダイアトニックコード

ここでは分かりやすいよう、Cメジャーキー(ハ長調)で考えていきます。♯♭なしだと、まずルート音になれるのがド〜シの7つですね。

音階の例

この上に、「ひとつ飛ばしでお団子がさね」をしていくと、こうだ。

基本コードたち

もう、この7つしかないわけです。これ以外の和音を作ろうとすれば、♯♭の臨時記号を使って音を一時的に変化させるか、さもなければ「お団子がさね」の法則を破るしかありません。まずココを、じっくり考えて飲み込んでください。他の和音を作るのは、どうやっても無理ですよね。

♯♭をつける。お団子がさねを崩す。どちらも応用的な行為であり、曲に大きな変化を与えるものです。そうすると、ある調の中で、コードというのは大きく二種類に分けることができそうです。すなわち、上に示した7つの「基本的な和音」と、それ以外の「スパイス的存在となる応用的和音」です。

ですから一般的な音楽理論では、この7つのコードが曲の基本的な骨組みになると定義し、これをダイアトニックコードDiatonic Chordと呼びます。それに対し、ダイアトニックコード以外のコードは全て、ノンダイアトニックコードNon Diatonic Chordと呼ばれます。

  • Diatonic Chord
    ある調において、「臨時記号なし」「お団子がさね」で作れる7つの基本コード
  • Non Diatonic Chord
    その7つ以外の全てのコード

では、ダイアトニックコードたちの、コードネームの方も確認していきますね。

ダイアトニックコード

やっぱり楽譜では詳しい段差は見えなくて、みんな同じに見えてもメジャーコードとマイナーコードの両方が散らばっていることが分かります。しかし、右端をご覧ください。(♭5)というマークがついた変なヤツがいますね・・・。

#2 変なマークのヤツ

変なやつ

変なマークが付いているということは、メジャーコードともマイナーコードとも違う、別のコードだということ。詳細度数を確認してみるとわかりますが、「ルート」からてっぺんまでの距離が、いつものコードとは異なっているのです。

Short

メジャーコードやマイナーコードは、7つ上がればてっぺんですが、このコードだけは6つでてっぺんに行き着く。距離が短いのです。この理由は鍵盤を見ると一目瞭然で、黒鍵のない場所を2回も通過しているから、同じくらい進んだつもりでも、距離は少なくなっているのです。

減五度

だからこの「♭5」という記号は、「五度のところがいつもより減少しているよ」ということを教えてくれるシンボルだったのです。コードネームというのは、そういう風にして決まっていきます。

半音6つぶんで、詳細度数でいうと「減五度」。詳細度数のときにこの度数を紹介したことを、覚えているでしょうか? 同じ五度でも、無色透明の「完全五度」とは別モノ。とても不安定で不気味な響きがするのでした。

つまるところ、ダイアトニックコードのうちこの子だけが、強い濁りを持った不協和音なんですね。

#3 6つの基調和音

さてこういった特殊な和音は、当然うまく使える場面が圧倒的に限られますから、「ダイアトニックコード」の7人のうち、7番目のコイツだけ使用頻度が圧倒的に低いです。

それゆえ自由派音楽理論においては、この和音は曲の基本コードから除外、一旦消えてもらうことにします。 さようならありがとう。骨組みのコードは、「7つ」じゃなくて「6つ」で行きます。

基調和音
でも勝手にコード削っちゃって理論進めるのはやばくない?

大丈夫です、やばくありません。だって7つではなく6つが基本になっているというのは、もはや世界的事実なのですから。特にダンス音楽やロック音楽では一生使わなくたって不思議じゃないくらいの特殊コードです。

また、歴史的に見てもこの7番目を除外する方式は当たり前に行われている方法論なので、安心してください。かの有名なチャイコフスキーも、あの人はモスクワで音楽理論の先生もしていたんですけど、やっぱり6つの和音を基本にして教えていたんですよ。

チャイコPyotr Tchaikovsky “Guide to the Practical Study of Harmony” p12

ご覧のとおり。むしろ、こういうところで現実を無視して理論を組み立てていくと、どんどんポピュラー音楽の実態とかけ離れていってしまいますから、無くしても大丈夫というより、無くした方がいいのです。

どのみちこの「♭5」という特殊コードとは、よきスパイスとしてⅢ章で再会することとなります。その時までほんの少しの間、お別れするだけ。また会いましょう。

名前をつける

しかしながら、一般音楽理論には、先ほどの「7つ」を指す「ダイアトニックコード」という言葉しかなく、“変なヤツ”を除いた「6つ」を指し示す言葉がありません。さすがに名前なしでは今後の説明がしづらく、そのため不本意ながら独自の名前をつけてあげる必要があります。

自由派音楽理論では、この6つの和音のことを、基調和音Prime Chordsと呼び、それ以外の全ての和音を基調外和音Non Prime Chordsと呼びます。一般音楽理論の「ダイアトニックコード」とは違うということを覚えておいてください。

  • 基調和音
    ダイアトニックコードから「変な奴」を除いた残り6つのコード。実践において真に「基本のコード群」となるもの。
  • 基調外和音
    その6つ以外の全てのコード。

基調和音の話は、もう一回続きますのでこのまま読み進めてもらいたいのですが、ひとまずこの6つのコードを演奏して、色々試してみるのもいいかもしれません。

基調和音
Check Point

コードネームは、コードの度数関係を表している。何もマークのつかない「メジャーコード」と、小文字の“m”一文字の「マイナーコード」以外のコードは、多かれ少なかれ特殊なコードである。

一般音楽理論ではBm(♭5)を基本のコード群(ダイアトニックコード)に数えているが、実際の使用頻度は低く、使い方も特殊。そこで自由派ではこのコードを除外し、残った6つを「基調和音」と呼んで、この6つのコードを中心に話を進めていく。この進め方は、伝統的に行われているメソッドでもある。

そんなわけで、音楽理論の基礎はとってもシンプル。メジャーが3つ、マイナーが3つ。この6つをきちんと覚えれば、それだけでしっかりした曲が作れるということだ。

曲の基本を作るのは、たった6つのコード!

たった6つですが、メチャクチャ強力な6人です。この6つだけで作られた名曲というのも、山ほどある。グラミー賞受賞曲だってあるし、全米シングル・チャートの1位の曲だってあります。ですからこのI章では、最後までずっとこの6人だけで理論を展開していきますよ。

この節のまとめ
  • ある調の中で、臨時記号を使わないで作れる基本的なコード群を「ダイアトニックコード」といいます。
  • (b5)のようにプラスで記号が付いているコードは、何らかの特殊なサウンドをもったコードです。
  • 自由派音楽理論では、六つの「基調和音」を基本に理論を展開していきます。
  • 基調和音は曲を作るうえでの最も基本的で重要なコードたちです。

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