目次
まずは前節で説明した「コードスケール理論(CST)」の概要をおさらいします。
1. 前回の復習
まず、コードとスケールはセットになったひとつのパッケージであり、根本にあるサウンドイメージを「縦の連なり」で表現したのがコード、「横の連なり」で表現したのがスケール。二者は互いの存在を示唆し合う。
メジャーキーがその中に7つのダイアトニックコードを内包しているように、メジャースケールはその中に7つのモードを内包している。内包しているモードの名前については、「教会旋法」のコンセプトで用いられている名前をそのまま流用した。
それぞれのモードを、対応するコードとセットにして、テンション・アヴォイドといった情報を全て明示的に表現し、「コードスケール」というひとつのパッケージで表す。
こうすることで即興演奏の際の利便性も大きく向上するほか、音響に対する理解もスムーズかつクリアになるし、人間は「キーという思考の制約」から解放される。そういう話でした。
そこで今回行うのは、コードスケール理論を応用させていくうえでの一番の基礎となる、メジャーキーのダイアトニックコードたちの「コードスケール」を整理することです。ちょっと前の回では、「ジャズ理論ではセブンスコードが基本です」とかなんとか言ってコードを並べましたが・・・
CSTのコンセプトを知った今ならば分かると思いますが、これでは全然情報が足りていないわけです。この7つ全てを、上にあった「アイオニアン」のように整然と情報化しないことには、スタートラインにすら立てないのです。というわけで、メジャースケールから作るコードやモードの話なんていまさら分かりきった内容の確認になっちゃいますが、まあ「コードスケール」の考えに身体をなじませていく“準備運動”としてちょうどいいでしょう。
2. メジャーキーのコードスケール
念のため確認すると、これから登場する「アイオニアン」「ドリアン」といった言葉は、CSTにおいてはコードスケールというパッケージを表現しています。メロディ編でやった「教会旋法」とはずいぶん話が異なりますので、そこはキッパリと思考を切り離したうえで読んでいってください。
インターバルの表記
ここから先は、各スケールが持つインターバルを次々に確認していくわけですが、その際にはなるだけ視認性が高く、シンプルなディグリーの表現を用いたいと思います。
- 長音程・完全音程 → 数字のみ
- 短音程 → ♭をつける
- 増音程・減音程 → +/○をつける
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第Iモード:アイオニアン
アイオニアンはメジャーセブンスと対応するモードのひとつで、P4が3rdとぶつかるため、Harmonic Avoidとなります。サウンド的にはまさにメジャースケールの世界観そのものです。メジャーの“トニック感”を象徴するモードとも言えます。
第IIモード:ドリアン
ドリアンはマイナーセブンスと対応するモードのひとつ。6thがHarmonic Avoidとなる理由はちょっと特別で、この音が「3rdとトライトーン関係を作り、V7の転回形とサウンドが近くなり、(特にii-Vの進行で)サブドミナントとしての機能に混乱を与える」という観点からです1。
他のHarmonic Avoidは強烈な「短2度の不協和」が由来ですから、それとは違うという意味を込めて、黄色にしました。
マイナー系のモードの中では、明るめ。ジャズでは鉄板である「Two-Five」の「Two」を象徴するモードになります。
第IIIモード:フリジアン
フリジアンはマイナーセブンスと対応するモードのひとつ。短音程が多く、重く暗いサウンドを有しています。Avoidは、どちらもコードトーンに半音上で乗るため。
第IVモード:リディアン
リディアンはメジャーセブンスと対応するモードのひとつ。コードトーンに半音上で重なる箇所がひとつもなく、Avoidが存在しません。そのため、アドリブの演奏がしやすいモードでもあります。「トニックでないメジャーセブンスを弾く際の基本候補スケール」であるとよく説明されます。
第Vモード:ミクソリディアン
ミクソリディアンはドミナントセブンスと対応するモードのひとつ。メジャースケールのモードの中では、ドミナントセブンスと対応しているのはコレだけ。V7の質感を象徴するモードと言えます。
第VIモード:エオリアン
エオリアンはマイナーセブンスと対応するモードのひとつ。ドリアンよりは暗く、フリジアンよりは明るいトーン。標準的な暗さです。ドリアンとの違いは、6度が長か短か。したがってminor 6thの持つ薄暗さが、エオリアンの特徴と言えます。
第VIIモード:ロクリアン
ロクリアンは、ハーフディミニッシュと対応するモードのひとつ。5thがo5になっているので、P5が構成できている他のモードと比べると、格段に不安定です。
いずれもこのコード編VI章に辿り着くまでに既に理解した内容だったと思いますが、何度も言うとおりこれはスタート地点です。まずこうやって情報を整理することで、スケールごとのインターバルなどを再確認したわけです。