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II章で、同主短調からコードを借りてくる「パラレル・マイナー・コード」を紹介しました。主調から少しだけ離脱して、新しいフレイバーを曲の中に持ち込むことができる。
しかもミ・ラ・シの付け方には微妙なバリエーションがあって、ラにだけフラットをつけて作るIVmΔ7なんかは、適度な切なさとメロディの乗せやすさから、貴重な戦力になっている人も多いのではないでしょうか。
メロディ編IV章では、フラットの付け方に応じて異なるスケール名が付いていることも軽く紹介しました。
この微妙な音使いによって、様々なサウンドが生まれてきました。今回やるのは、これとちょうどコントラストをなす作業、つまりフラットではなくシャープ方面を開拓します。
1. 同主長調からの借用
IV章の後半では、転調について詳しく触れました。そこでは、R(レラティヴ)とP(パラレル)の関係にあるキーたちはみんな親戚、ファミリーのようなものと述べましたね。
この図で言えば、「パラレルマイナー」によって開拓したのは、左上の方面。Cメジャーキーにとっての「パラレルマイナーキー」であるCマイナーキーの方角へと入りこんで、フラットを1つなり2つなり付けたコードを拾ってくるという行為でした。
それが可能であるならば、逆にAマイナーキーにとっての「パラレルメジャーキー」であるAメジャーキー方面からコードを持ってくることだって、同様にして可能であるはずなのです。ミ・ラ・シにフラットを付けたのとは対照的に、ド・ファ・ソへシャープをつける。
「パラレルマイナーコード」は、ミ・ラ・シのいずれか(または全て)にフラットをつけたコードたちの総称でした。同様にして、上のようにド・ファ・ソのいずれか(または全て)にシャープをつけることによって得られるコードたちを総称して自由派ではパラレルメジャーコードParallel Major Chordsと呼ぶことにします。
たとえ「ラにフラットがあるだけ」でも「パラレルマイナーコード群」という括りの中に含めたとおり、たとえ「ファにシャープがあるだけ」でも「パラレルメジャーコード群」というグループに含めることにします。
上の音階たちの中には、すでに見覚えがあるものたちもいますね。特に、「3つの短音階」で紹介したメロディックマイナー、ハーモニックマイナーはすでに実践での使用経験があるかと思います。
とはいえド♯方面なんかはかなり手薄にやってきた感じもしますし、どんどん開拓していきましょう。
2. 既知のコードたち
これまで学んできたコードの中で「パラレルメジャーコード」に分類されるものは、そこまで多くありません。クオリティ・チェンジによって生まれたII7・III7・VI7と、それらの「根音省略形態」として登場したIV7Vo7I7。この6つと、あとはせいぜいIaugのように経過音的に発生したものくらいではないでしょうか。
考えてみると、かなり少ないですよね。この記事ではこれ以外のコードでポピュラー音楽の中に持ち込みやすいものを発見していきます。