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パラレル・マイナー ❶

1. 同主調からの借用

二次ドミナントに続き、今回はさらにコードの幅を広げていきます。

今回やるのは、一時的に同主調の音階を借りてきてバリエーションを増やすというテクニック。「同主調」というのは、つい前回やりましたね。同主調(パラレル・キー)は、主音(中心音)が同じで、長短だけが異なるキーのことでした。

Cメジャー
Cマイナー

今回はまず長調をベースにして、同主の短調からコードを借用することを考えます。だからCメジャーキーで言うなら、Cマイナーキーから借りるってことですね。別の言い方をすれば、ミ・ラ・シに♭がつくコードたちということです。

パラレル・マイナーキーのコードたち

同主短調(パラレル・マイナーキー)から持ってくる新しいコードは、ディグリーネームでいうと以下のようになります。

同主調からの借用

ルートに臨時記号がつくと、ディグリーネームにも臨時記号がつきます。目新しい感じがしますね!

III,VI,VIIにおいては、ルートの位置そのものがフラットすることになるので、ディグリーネームにも♭が付きます

II番目のコードはまた先延ばし

ただII番目の和音については、(♭5)という記号がついて、これはメジャーともマイナーとも違う特殊なコードになるので、現段階では扱いません。

除外

こういった特殊コードは、Ⅲ章でまとめて紹介していきます。使用頻度や重要性の面でも他と比べると一段階劣るので、後回しで問題ありません。

フラットがつくディグリー

Cメジャーキー以外で同主短調からの借用をする場合には、白鍵黒鍵の関係でこれらのコードネームにフラットが付かないこともありますが、それでもディグリーネームに関してはIII、VI、VIIと呼びます。

EメジャーでのパラレルマイナーEメジャーキーの場合。Eマイナーキーから借用する

こんな風に、シャープ系のキーではフラットじゃなくナチュラルを用いることもしばしば。G,C,Dの3つのコードにおいて、「コードネームはシンプルなんだけど、ディグリーネームにはフラットがつく」という現象が起こっていますね。ここがややこしいところなので注意です。

クオリティ・チェンジのメンバー再び

さて、ImIVmVmは、「クオリティ・チェンジ」の時にもう紹介しましたね。 だから残りの3つが今回フィーチャーする新顔です。

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2. マイナー系の復習と補足

まずは、すでに紹介済みの3つをもう一度おさらいをしつつ、知識をプラスしていきます。

IVm : あからさまに切ない

IIVmIIVmI

IVmは、サブドミナントマイナーSubdominant Minorと呼ばれます。独特の哀愁があり、バラードなどで重宝される存在。上の音源はIへ進みますが、なめらかにお隣のVIIImへ進むのも定番です。

IImIIImIVmV

こちらはBメロで定番の流れ。Vの良い引き立て役として機能していますね。当然ただのIVVよりも切なさが加わっています。

IVIVmIIImVIm

王道の4-5-3-6の変化形ですね。ドミナントのVの代わりにこのサブドミナントマイナーですから、「高揚」を捨てて「哀愁」を選んでいるという形です。

IVmがIIIImV以外に進むことはあまり多くないかなという印象です。やはりこういった和音というのはいずれも強力なキャラクターを持っていますから、どうしてもそれを活かせるパターンというのが限定されてきます。基調和音同士のように、どう繋いでもそれぞれの魅力が溢れ出てくるというわけにはいかないのです。

Vm : 意外な明暗反転

もっとクセの強いVmは、ドミナント・マイナーDominant Minorと呼ばれます。こちらはさらに使い方が限定的。以前紹介したのは、IVへと流れていくパターンでした。

VImVmIVIVm

他にも色々と用法は考えられます。

VIm7IIIm7Vm7IIm7

こちらはマイナーコードだけを4連発してみた例です。基調外の和音が一つ交じっただけでずいぶんと雰囲気が複雑になりました。Vm7というのは、CメジャーキーでいうとGmのコードになるわけですが、これはFメジャーキーやBメジャーキーといった調に所属するコードでもあります。
特に今回はマイナーコード4連発というのもあって、今どんなキーになっているのかというのが聴いていてちょっと曖昧になりますね。でもそれは悪いことではなくて、コレはコレで面白味があります1

Im : 明暗の大転換

Imは、トニックマイナーTonic Minorと呼ばれます。曲のリーダーである和音の明暗がひっくり返るため、非常に強烈な表現であり、使いどきが限られるという話でした。そのためI章の「クオリティ・チェンジ」の回では、音源での紹介は差し控えていました。今回は本格的に解説しましょう!

使い方のひとつとしてあるのは、先にIのコードで示したフレーズを次にImに替えることで、明から暗への転換を表現するというものです。

IV7ImV7

こちらはショパンの「別れの曲」です。はじめはAE7と提示したフレーズを、AmE7と変化させて繰り返す。同時にテンポや弾く強さも抑揚をつけているので、この瞬間に「オッ…何かが起きているぞ…?」というドッキリ感が明確に演出されていますね。トニックマイナーの完璧な活かし方と言えそうです。

ほか、マイナー調の曲の中で飛び道具として用いることも考えられます。

VImVVImI

こちらはまだ未適用。最後のIがちょっと明るすぎて、なんだか違う気がする。そこで思い切って、ラストをマイナーにしてみます。

VImVVImIm

ちょっとダークでワルい感じになりました。先ほどのVmでもそうでしたが、ループ系の電子音楽だと「ひたすらマイナーコードを連続する」といったハチャメチャなコード進行作りもあるので、そういう文脈の中でImを使うことは幾分容易です。

そうは言っても、IVmなんかと比べるとImが使い方に発想力の問われるコードであることは間違いないでしょう。

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