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ディミニッシュ・セブンス

今回は「新しいコードネームを知る」回です。

特殊な名前のついた新しいコードを学びます。独特な構成音とサウンドを持つコードで、使える場所は限られていますが、様々な特徴を持っていて、音楽理論上での重要性が高いです。

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1. ディミニッシュセブンス

II章の二次ドミナントの回では、ドミナントセブンスコードが[6半音]の音程、「トライトーン」を有しているのがポイントという話をしました。

非常に不安定な音響で、後続のコードでこれが解消されるのが、快活な進行パターンとして定番なのでした。
一方、トライトーンでない残りの2音に関しては、もうずっとおなじみ、補強役で“無色透明”の「完全5度」です。

なんというか、攻守のバランスに優れたコードなんですね。適度な安定感と不安定感を併せ持っている。

攻め攻めのコード

ここでもしソの音を半音上げると、“無色透明”だった「完全5度」はこれまた「トライトーン」に変わります。

真っ赤になってしまいました。強烈な濁りがダブルで発生しているわけですから、これはハンバーガーに対するビッグマック状態……いえ、むしろ「肉しかない」ような状態ですね。この攻め攻めのコードクオリティを、ディミニッシュト・セブンスDiminished Seventhといいます1

dim7

コードシンボルは「dim7」となります。これが今回解説するコードです。

2. dim7の特徴

dim7は「トライトーンを2ペア揃えている」以外にも特徴的な構造を有しています。

等間隔性

まずディミニッシュセブンスは、全ての構成音が等間隔で並んでいます

等間隔
[3半音]ずつ離れているんですね。てっぺんのファとルートのソも、オクターブ差を抜きにすれば[3半音]。ようするに、[12半音]で1周となるオクターブの螺旋を、きれいに4分割したものがdim7であるということです。

4分割

こうして半音の階段をループにすると、美しい十字架が描かれました。

対称性

等間隔であるということは、さらに面白い現象を引き起こします。例えばもしGではなくBをルートにしてディミニッシュセブンスを作ろうとすると、結局また同じメンバーが招集されることになります。

Bdim7

誰がリーダーになるかが異なるだけで、顔ぶれ自体は一緒なのです。これは、12音のループを等間隔に分けたからこそ起こる出来事です。つまり、Gdim7、Bdim7、Ddim7、Fdim7は全員コードトーンの編成が同じということになります2

だからディミニッシュセブンスは、「4人で1つのファミリーを形成している」というようなイメージを持つと分かりやすいかと思います。

3つのファミリー

鍵盤は12音あって、そのうち4音で1ファミリーということですから、全部で3つのファミリーを作れるはずですよね。具体的には、以下のようになります。

C-E-G-Aファミリー

C家族

C-E-G-Bファミリー

C#家族

D-F-G-Bファミリー

D家族

この「構成音が同じ」という性質を活用して転調するなんてテクニックもあります3。 とにかく面白い特徴を持ったコードですね。

3. dim7の利用法

dim7は非常にクセの強いコードですので、「この時にこういう形で使える」というパターン暗記で使いこなす側面が強いです。

ホラー的活用

ひとつは、2ペア・トライトーンの濁りを活かして、メジャーキー/マイナーキーの世界から逸脱したホラー世界を作るという活用です。

G♯dim7B♭dim7Adim7Bdim7

こんな風に、ただdim7を繋いでいくだけでいかにもホラーなBGMが出来上がります。こういうゲーム音楽だったり、劇伴音楽だったりとかで利用価値がありますね。

こちらはクラシカルなマイナーキー世界の途中にdim7ゾーンを設けた形。ドミナントセブンスよりも一段上の濁りを持っているわけなので、使いこなせると武器になります。

ポップス的活用

上のピアノ曲でもそうですが、ディミニッシュセブンスの後続のコードには、半音上のメジャー/マイナーコードを置くのが一番の定番で、不協和をスムーズに解消してスッキリと次に進むことができます。ポップスでは特に、VImの手前に♯Vdim7を置く形が定番です。

IVΔ7V7♯Vdim7VIm7

二次ドミナントのIII7に近い役割を果たしていて、メロディも乗せやすいです。こうしたポップス向けのdim7の使い方は他にも何パターンかあって、これはIV章でまた紹介することになります。

オグジュアリー・ディミニッシュ

ほかジャズっぽい文脈で、V7の代わりにVdim7を使うなんていうのが定番。

VIm7IIm7Vdim7IΔ7

不安定なサウンドが、いい具合にオシャレ感へと昇華しました。同様にして、IΔ7のコードをIdim7IΔ7という風にして、sus4みたいに緊張→弛緩のスパイスを盛り込むのもよい。

IIm7V7Idim7IΔ7

トゥー、ファイブと来て解決するかと思いきや、不思議なコードで解決が先延ばしにされる。そこに不思議な面白さがありますね。歌モノだとメロディを乗せづらいところがありますけども、インスト曲ならば難なく差し込めます。
こうしたディミニッシュの使い方を、「補助的である」という意味からオグジュアリー・ディミニッシュAuxiliary Diminished Seventhといいます4


III章では“飛び道具”的なコードを色々と紹介してきましたが、そのひねくれ具合において王様クラスのポジションにいるのがこのディミニッシュセブンスです。

度数構成

最後に度数の構成をきちんと確認すると、ディミニッシュ・セブンスは、マイナーセブンスフラットファイブと1音違いです。

比較

こんな風に、マイナーセブンスを基準にして5th下げ、7th下げ、という風な形で関連づけて覚えてもいいかもしれません。

減7度

「シ-ラ」という2音の距離は、普段の「シ-ラ」が作る短7度よりも短いので、これは減7度となります。「“短”よりさらに短いと、“減”が出てくる」というのは、III章のはじめで紹介しましたね。

度数構成

Rt短3減5減7が、dim7の構成音です。ずいぶんハイレベルなところまでやってきました!

まとめ

  • m7(♭5)の第7音をさらに半音下げた和音を「ディミニッシュセブンス」と言います。
  • ディミニッシュセブンスは、極めて不安定な響きがするコードで、ホラー系BGMなどで大活躍します。
  • I、Vが本来入るところをdim7にクオリティチェンジしたものを、オグジュアリー・ディミニッシュといいます。
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