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過去数回にわたって、新しいコードを次々と紹介してきました。ココはそのまとめの回になります。それぞれの回では定番のディグリーやサウンドの紹介が中心でしたが、ココでは構成音の比較、別の表記や別名といったものを紹介して、改めて全体像の把握をします。

1 五線譜で確認

まずは五線譜で、紹介してきたコードたちをまとめます。

三和音たち

バリエーション

変わり種コードはV上で使うものがそこそこ多いので、Gをルートにしてみました。

重要度の低いものにはカッコをつけました。sus4、シャープファイブ、マイナーフラットファイブ。重要なのはこの3つということになります。仕組みが分かった今となっては、こうしたコードネームももう怖くないですね。

各コードの要点をまとめると以下のとおりです。

コード 定番ディグリー 概要
sus4 I,V,VI 3rdが不在、吊り上がった感じが緊張をもたらす
(♯5) I,V 独特の度数間隔が奇妙な雰囲気をもたらす
m(♭5) VII,II 強い濁りが不安定な情緒を生む

四和音たち

四和音のバリエーション

こちらは組み合わせが多いので、実践上重要なものだけを抜き出しました。例えば他に、マイナーメジャーセブンスをシャープファイブするとか、メジャーセブンスのsus2とかいったものも、理論上は存在します。そういったものはもう、パーツの組み合わせ論で各自考えてもらえたらと思います。

一見すると「Δ7sus4」と「7sus4」なんかの区別がややこしそうに見えますが、結局は「Δ7」と「7」の違いなのですから、それはII章でもう乗り越えてきた壁のはず。名前についてもサウンドについても、「根本となるコードクオリティ」+「変化」で分解して捉えるとわかりやすいです。

「dim7」だけは名前にヒントがないので、これはもう頑張って構成音を覚えていくしかないですね。「全員[3半音]の等間隔」で「トライトーンのペアが2つ」というのが、dim7の暗記ポイントです。

意外と要素のバリエーションは少ない

まだこの先に「スラッシュコード」の分野と、音を付加する「テンションコード」の分野が残っていますが、音を変化させて作る和音のバリエーションは、実はこれだけです。4種類のセブンスコードと、あとは5度をずらす、3度をずらす。その組み合わせ論だったんですね。

クオリティの分岐

2 別名いろいろ

しかし、コードネームの知識を複雑にさせているのは、実はココからです。それぞれのコードに、別名と別表記パターンがたくさんあるのです。時代の移ろい、流派の違いなどから異なった表記が生まれてしまい、生まれたが最後、統一はできない。その名前のバリエーションこそが、コードネームをややこしくしている原因とも言えます。
このページでは、変化系の和音のコードネームの表記を総まとめします。

プラスとマイナス

まずは簡単なところから。シャープファイブ、フラットファイブについては、それぞれ♯と♭の代わりに+と-を用いた表記が存在します

プラスまいなす

まあシャープやフラットの記号は書くのも大変ですから、簡素化されたというところでしょう。音程を上げるからプラス、下げるからマイナス。直感的で分かりやすいですよね。このサイトでもどちらかというとこのプラスマイナスを、今後は推していきます。

augとdim

次に、三和音に関して、5度変位系の和音では「メジャーのシャープファイブ」と「マイナーのフラットファイブ」が際立って重要でした。これは古典派クラシック時代から変わらないこと。それでこの2人には、特別な名前が当てられています。それがオーグメンテッド・コードAugmented Chordディミニッシュト・コードDiminished Chordです。1

基本的なトライアド

コードシンボルはそれぞれ「aug」「dim」となります。メジャー、マイナー、オーグ、ディム。この4人で「基本のトライアド4種」とするのがクラシック系の伝統的な考え方で、ポピュラー理論書においてもこの考え方を引き継いだものは散見されます。

augmented chord、diminished chordという名前は現代のコードネーム制度が確立されるよりもずっと前から使われていた呼び名で、こちらの方が歴史的に見て先輩であり、シャープファイブ・フラットファイブというのは後に出来たシステマティックな名称なのであります。

スナップF. A. GORE OUSELEY “Principles of Harmony” p11 (1868)

「augmented」「diminished」という言葉は詳細度数の記事で既に登場しています。それぞれ「増」「減」を意味する言葉でしたね。シャープファイブは5thが増5になったからオーグメント、フラットファイブは5thが減5になったからディミニッシュというわけです。

ピアノロールで見ると明白ですが、この4人は順に半音差で繋がっています。

4人の関係

メジャーをさらに明るくしたのがaug、マイナーをさらに暗くしたのがdimというようなイメージ。こういった観点からも、この4人が「基本のトライアド」とみなされるわけです。

これについてはせっかくですからaugmentが「増加させる」、diminishが「減少させる」を意味する英語の動詞であるというのを知識として覚えてしまうのがよいかと思います。

オーグメントとセブンス

そうすると、シャープファイブのセブンスコード版にも、augの名を冠した別名が与えられることになります。

augのセブンス

「オーグメント・メジャーセブンス」と「オーグメント・セブンス」ということになります。これはもう、これまでの話から十分に納得できる範囲かと思います。

ディミニッシュとセブンス

マイナーフラットファイブの別名が、ディミニッシュ。そういえば前回扱ったコードの名前が「ディミニッシュ・セブンス」でしたね。実はこのコードの名前は、「ディミニッシュをセブンスコード化したもの」という由来から来ていたわけです。

dimからdim7へ

「マイナーフラットファイブ」の和音に、減7をトンと乗せたものがdim7というわけです。

私のこと、忘れてない?

しかし、何かを忘れている気がする……。ディミニッシュは、マイナーフラットファイブの別名…。

そうだ、「マイナーフラットファイブをセブンス化したコード」といったら、まず「マイナーセブンス・フラットファイブ」があったじゃないかという話です。

シレファラの和音がdim7では?「ワシがdim7を名乗るのが筋ちゃうんか?」

確かにセブンスコードの命名ルールは「長7を乗せたらΔ7、短7を乗せたら7を書き加える」でしたから、そのシステムに則るのであれば、この「マイナーセブンス・フラットファイブ」こそが「ディミニッシュ・セブンス」と呼ばれるはず。

dim7はどっち?

なぜここだけネーミングシステムの整合性が崩れているのか? もちろん、ここにはちゃんと理由、聴けばみんなが納得する理由があります。

それは、ずっと大昔からそう呼んでたからです。

ずっと昔から!!
なんですかそれ!ぜんぜん納得できませんが!?

クラシック理論
こちとら「コードネーム」なんて概念すらない時代からずーっとディミニッシュセブンスつったら減7でやってんのよ。100年以上それでやってきてんのよ。

ジャズ理論
さすがに100年の伝統は崩せなかったす・・・

前回述べたとおり、ディミニッシュセブンスは“変わり種コード界のキング”であり、1800年頃の理論書ではすでにその特殊性が注目され、「ディミニッシュセブンス」と命名されていました。それはまだ、全てのコードに規則的なコードネームをつけようという発想自体がなかった時代のことです。2

長7を乗せたらメジャーセブンスと呼ぼう」とか、そういうコードネーム制度を作り出したのはそれよりずっと後だったので、システムの整合性なんて知るものか、今さら変えられんという状況だったのです。

ハーフディミニッシュ

さて、可哀想なのは仲間外れにされたマイナーセブンス・フラットファイブです。

なんかdimみたいな名前くれや・・・

改めて構成音を比較すると、dim7は5th7thも「減」の音程です。対するマイナーセブンスフラットファイブは、5thだけが「減」で7thは「短」です。

5度と7度の減

そこで「減」度合いがディミニッシュセブンスの半分だということで、ハーフディミニッシュト・セブンスHalf-Diminished Seventhという愛称が新たに与えられました。3

ハーフディミニッシュ

なんだか場当たり的な感じが否めないですが、けっきょく音楽理論というのはデベロッパーとユーザー双方の手で少しずつ練り上げられていくもの。慣習というのは人間が時間をかけて作るものだから、システマティックになりきれないものなのです。

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