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今回は「基調和音以外のコードを知る」回です。

前回「セブンスコード」を学んでバリエーションを増やしましたが、根本が基調和音の6つだけであることは変わりませんでした。
ここでは臨時記号(♯・♭)を使うことで、今までになかったコードを取り入れていきます。曲を展開させるときの重要なスパイス役になるので、どのジャンルでも重宝する知識です。

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1 ドミナントセブンスのパワー

コードネームでただ「7」がついただけのセブンスコードは、「ドミナントセブンス」と呼ばれるコードクオリティでした。基調和音でいうと、Vをセブンスコードにした時にだけ登場する特別な和音です。

セブンスコード

V7が「特別な子」である理由は、単にコードクオリティが他とカブってないというだけではありません。3rd7thの間の間隔が、[6半音]になっているのが実はたいへん重要なポイントです。

二音が生み出す質感」の記事で、[6半音]のサウンドは「濁っていて不気味な感じがする」として紹介しました。

「半音6つ」の質感

非常に個性的なサウンドであるので、[6半音]は三全音Tritone/トライトーンという特別なあだ名でもって親しまれています。1

トライトーンの解決

「トライトーン」は非常に強い濁りを持っていて、音響的に不安定であり、リスナーの心には「より安定したコードに進んで耳を落ち着けたい」という欲求が喚起されると言われます。
だから後続の和音でこれを「解決」させてあげると、非常に明快な「緊張→緩和」の流れが構築できます。V7の場合、その典型的な進行先はIです。

V7-I

この進行は、以下4つの理由から理論上は最強クラスの「結びつきの強さ、進んだ時の明快さ」を持っているとされます。

  • ベースは最もパワフルで推進力のある強進行(4度上行)である。
  • 盛り上げ役のVからリーダーであるIへ着地する。
  • トライトーンの強烈な濁りが解消される。
  • ファ・シという強傾性音が2つともなめらかに半音移動で安定音に着地する

気持ちいいと感じる要素がギュッと詰まっているわけですね。「お辞儀の時のピアノ」でおなじみのコード進行でも、V7Iの進行が使われていて、この進行はクラシックとジャズにおいては最重要の地位を持つ特別な存在です。

お辞儀の進行 : I-V7-I

「トライトーン」は、音楽理論において“緊張と緩和”の“緊張”を司る典型的・象徴的な存在であるわけです。この「トライトーンが解決する結びつきの強さ」を活かして基調外和音を使いこなそうというのが今回の内容になります。

2 お供を作る – シャープ系

繰り返しになりますが、この「ドミナントセブンス」というコード種は、基調和音内だとV7しかありません。Iだけが、自分をよく引き立たせる最高のサポート役、最高のかませ犬を所持している状態です。他のメンバーたちは、さぞかし悔しい思いをしているでしょう。

Vの場合

Vに対して強進行するセブンスコードは、基調和音だとIIm7です。

IIm7にはトライトーンがないため、Vに対する結びつきはそのぶん弱いと言えます。なんとかして結束力を強化できないか? ここで諦めずに、IIm7ドミナントセブンスへと強制的にクオリティ・チェンジさせることを考えます。

すると、2つの効果が生まれました。1つ目は、II7自身がトライトーンの濁りを持つので、これを次のコードで解決したいという欲求を発生させることができます。そして2つ目、ファの音がソへと半音で繋がることになり、接続がよりスムーズになりました!

IImIIにするテクニック自体は、I章のクオリティ・チェンジの回で紹介済みですね。新しいのは、セブンスまで音を積むことで「トライトーンの濁り」を発生させ、より複雑なサウンドとより強力な結束を演出したことです。

聴き比べる

IImII、そしてII7という3つを聴き比べてみましょう。

VImIImVI
VImIIVI
VImII7VI

構成音はそれぞれ似ているので、差はそこまで大きくありません。でも微妙な濁りが加わっていて、IIがただただ明るく元気なのに対し、II7は少しひねくれてファンキーな風合いになっています。今回の曲調では、II7が一番よくマッチしているんじゃないでしょうか。

VImの場合

VImでも同じことが言えます。強進行のお供となるセブンスコードは基調和音だとIIIm7ですが、これをIII7に変えれば、トライトーンが発生し、ソ→ラという半音進行が加わって、より結束が強まります。


聴き比べる
IVΔ7VIIIVIm

こちらは典型的なJ-Popのバラード風コード進行です。IIImをIIIに変化させたことで、情感を強くするんでしたよね。これをさらにIII7に変えてみます。

IVΔ7VIII7VIm

IIIの和音が表現する「感情の高ぶり」のようなものが、セブンスコードになることでより強く表現できている感じがありますね。今回のようなバラード調では、こちらの方が魅力的に聴こえます。

IImの場合

IImでも全く同じです。お供のVImをドミナントセブンスにクオリティ・チェンジすることで、結束が高まる。


聴き比べる
IIm7V7IΔ7VI
IIm7V7IΔ7VI7

上はシンプルな三和音のメジャーコードですから、キッチリ明るく元気な感じがします。対する下は、セブンスにしたもの。濁りの強いドミナントセブンスコードですから、その分オトナな表情がしています。今回の曲調だとどちらも一長一短で、乗せる歌詞やメロディ次第かなというところです。

そんなわけで、ここまではほとんど「クオリティ・チェンジ」の回の延長線上という感じでしたね。クオリティ・チェンジによりメジャー化したIIIIIVIは、セブンスまで音を積んでII7III7VI7とすることで濁りを強め、特に「強進行」した時のスムーズさを高めてくれることが分かりました。

IIImの場合?

この調子でいくとIIImの相棒はVII7となるのですが、「VII番目」というのがやっぱり特殊で、他と比べるとポピュラー音楽での重要性が落ちます。そのためこのコードに関しては、のちのちVIIの和音を取り扱う際にまとめて紹介することにして、ここでは割愛します。

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