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3. お供を作る – フラット系

続いてIVの場合は、少し話が変わってきます。IVへと進むお供はIΔ7で、これをI7にチェンジするわけなのですが、二者の違いはセブンスの音です。


これまではシャープの臨時記号が現れていましたが、ここではフラットが登場することになります。ただ本質は全く同じで、トライトーンの濁りの発生と、それからシ→ラという全音進行がシ→ラという半音進行になることで、IVへよりスムーズに進める状態になります。

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IVΔ7III7VIm7IΔ7
IVΔ7III7VIm7I7

シがフラットしただけですが、その効果は絶大で、IVのコードへとなだれ込んでいくような動力が生まれました。このコードは今回のようにコード進行の塊のラストに入れてあげると、良い区切りとして機能します。

実際の曲例

先ほどのII7III7VI7はクオリティ・チェンジの回からの流れである程度は聴きなじみがありましたが、このI7は完全な新顔ですね。ちょっと実際の曲でも紹介しておきたいと思います。

東京事変 – 丸の内サディスティック

この曲では、イントロ・Aメロ・サビなどで、ちょうど上で紹介したIVΔ7III7VIm7I7の進行が使われています。III7I7という二つのドミナントセブンスを投入することで、大人びた濁りや高い推進力を持った王道のコード進行です。

旅立ちの日に

卒業式で歌う合唱曲として有名な一曲。こちらは『丸の内サディスティック』とは対照的な“出し惜しみ”のスタイルです。始まって冒頭3分はずっと臨時記号をひとつも使わないシンプルなコードとメロディが続き、サビの直前で初めて臨時記号を伴うコードとしてI7が登場します。

IVVII7

伴奏もシの音を目立つ高い位置で鳴らすため、違いが大きく感じられます。もし臨時記号を使わないと、コードはIΔ7に変わってこうなります。

IVVIIΔ7

比べると、IVへ向かっていく推進力という点では落ちます。IVのお供であるI7を使うことで、「いま 別れのとき」というクライマックスの入りをより感動的なものにしています。

4. 三連鎖をキメる

改めて確認すると、このI7IVという動きは、V7Iという動きをIVの和音がマネっこしたものです。そしてこのIVに関しては、もう少し欲張って2-5-1の三連鎖を丸ごとマネするパターンも非常に有名です。

IIm7V7I

このトゥー・ファイブ・ワン進行の流れを、IVをゴールにしてマネすると、次のようになります。

今はCメジャーキーなのに、Fが自分こそリーダーといわんばかりに仲間を2人も引き連れてFメジャーキーの2-5-1をまるまるブチ込もうともくろむわけです。そうすると、Vm7というコードが現れました。これもクオリティ・チェンジの回に紹介したうちのひとつですね。このVm7I7IVという“3連コンボ”を、実際のコード進行の中に埋め込んでみます。

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IVΔ7III7VIm7I7

こちらは先ほどの、I7を使った音源。このI7が入っているところに、Vm7I7という流れをキュッと詰め込んでみると…

IVΔ7III7VIm7Vm7I7

このように、ルートが大きく移動するモーションが短時間に詰め込まれるので、非常にドラマティックな展開になりました。このVm7I7IVという動きは、クセの強いVmのコードを気持ちよく差し込む王道テクニックです1

実際の曲例

この“3連コンボ”は色んな場所に差し込めますが、定番なのは上で紹介したIVΔ7III7VIm7Vm7I7という一連の流れです。

こちらはサビの始まりがまず王道の4-5-3-6ですが、そのあと「眠い空気〜青い世界」のところで当該のコード進行が登場します。

比べてみると、4-5-3-6が比較的ゆったりと始まり3つ目のIIImのコードで緊張のピークを迎えるのに対し、今回の進行はまず2つ目のIII7、それから終盤のVm7I7という風に2回の“揺さぶりポイント”がある点で、エモーショナルな演出に優れていることが分かります。

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