ディミニッシュセブンス

コード編 Ⅲ章:新しい名前
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今回は「新しいコードネームを知る」回です。 特殊な名前のついた新しいコードを学びます。独特な構成音とサウンドを持つ上級者向けのコードで、使える場所は限られていますが、様々な特徴を持っていて、音楽理論上での重要性が高いです。

#1 ディミニッシュセブンス

前回やった「マイナーセブンスフラットファイブ」の、第7音をさらに半音下げた和音のことを、減七和音Diminished Seventh/ディミニッシュト・セブンスといい、「dim7」と表記します。日本ではやっぱり-edの部分の発音を怠って「ディミニッシュセブンス」と呼ぶのが一般的です。クラシック系では日本語名がよく使われますが、ポピュラー系ではもっぱらカタカナの呼び名を使いますね。
7thの理由

♭がヨコ2つ並んだ記号は見たことがないという方もいると思うので説明すると、これは「ダブルフラット」という、すでにフラットになっているものをさらにフラットさせる時の記号です。

ダブルフラットと簡易な表記法
シ♭をさらに半音下げたら、それはただの「ラ」じゃないかと、そう思うかもしれません。でも「単なるラ」と「シ♭がさらに下がった」とでは、奥にある意味合いのようなものが違うのです。 ただし実際には、普通にラで書いてしまうこともあります。特にポップス系のバンドスコアやピアノ本、あるいはクラシック系の楽譜でも、分かりやすさを重視する場合には「シ♭♭」ではなく「ラ」を、なんならそれこそ「ソ」じゃなく「ファ」で書くことだってある。
ディミニッシュセブンスこう書いたとてさほど問題ではない

理論的な意味というのも重要ですが、現段階ではこうした異名同音の表記に、そこまで過敏になる必要はありません。

#2 dim7の特徴

dim7は、特徴あるコードです。鍵盤で見ると分かりますが、それぞれの音同士の間隔が全て均等に短3度です。
Cdim7
差が均等なので、例えばE♭からdim7を作ると…
Ebdim7
こうなるわけですが、ミ、ソ、ラ、ド…よく見るとこれは、さっきのCdim7と全く同じ構成音です! これは、間隔が均等だからこそ起きうる出来事です。Cdim7とEdim7で、違うのは「ルートがどれになるか」ということだけ。その点を除けば、全く同一のコードと言えます。

同じことは、ソやラをルートにとった場合も同じです。

Cdim7
Cdim7
Ebdim7
Edim7

Gbdim7
Gdim7
Adim7
Adim7

こんな風に、dim7は4人でワンセットみたいなところがあります。音は12音あるので、「4人家族が3世帯」できることになりますね。
C-E-G-Aファミリー
C家族
C-E-G-Bファミリー
C#家族
D-F-G-Bファミリー
D家族

この「構成音が同じ」という性質を活用して、転調する方法なんていうのもあります。とにかく面白い特徴を持ったコードですね。

#3 dim7のサウンド

肝心のサウンドの話。dim7は、構成音をひとつ飛ばしてペアを作ると、それぞれ増4度の関係になっています。
増四度
ひとつの和音の中に増四度のペアが2つできているというのは、極めて珍しいです。当然ディミニッシュセブンスはめちゃくちゃ不安定な響きがします。
このコードを使う際には、この不気味さや不安定さを活かすようなものがいいでしょう。特にホラー系のBGMにはぴったりです。また、クラシックの短調の曲での使用例も多く、クラシカルな雰囲気を出す時に思い切って使ってみるのもアリです。 調性感が崩れやすいので、ホラー系の曲であればもう思い切って調性を気にせずdim7をドンドン使えば、それでもう良い雰囲気が出たりします。
ホラー

こんな感じね。3小節目からディミニッシュを適当に使いまくっただけなのですが、なかなかの雰囲気が出ています。

ささやかな使い方

単体では不気味さの強いdim7ですが、ささやかな差し込み方をすることも出来ます。ジャズっぽい文脈で、{V7}の代わりにVdim7を使うなんていうのが定番。
{VIm7}{IIm7}Vdim7{IM7}

不安定なサウンドが、いい具合にオシャレ感へと昇華しました。他にポップスでの定番の使い方もあるのですが、それはⅣ章で紹介します。

#4 表記や別名について

さて、前回と今回で学んだコードたちにはけっこう別記や別称がありますので、最後にそれを確認します。「そんなにいくつも呼び名を知らなくたって、使えれば大丈夫」という人はサクッと読み飛ばしてください。

①ディミニッシュ

まず先ほどのディミニッシュセブンスを、省略して単に「ディミニッシュ」と呼び、表記も「dim」とすることがあります。これは特に、四和音が基本で三和音をあまり使わないジャズ系統の理論において顕著に見られる傾向です。 でもコレって問題で、「dim」と言えばちょっと前に「マイナー・フラットファイヴ」の別記として紹介しましたよね。
表記一覧
つまり今現在、この「dim」という表記は、2種類のコードを指しうるということ。表記が統一できてないのです。
ディミニッシュの呼称
ややこしくてイヤになってきますね。まあ結局問題になってくるのは「dim」という呼び名の指すところなわけですから、もういっそこの呼び名を使わなきゃいい話です。
良い呼び名誤解の生じ得ない呼称

②マルとファイ

「dim」の略記として「○」があったわけなので、このディミニッシュセブンスのことを「○」で表現する人もいます。また、その流れでさらにマイナーセブンス・フラットファイヴを「Φ」と書くというパターンもあります。マルを縦棒で真っ二つに割った記号なのですが、パソコン上では、「Φ(ファイ)」を代替として使うのが一般的です。
ハーフマル
そしてこれと共に、「マイナーセブンス・フラットファイヴ」に対しては「ハーフディミニッシュ」という別称も生まれました。
ハーフディミニッシュ
さらに、単なる○とØではなく、「○7」「Ø7」と書くべきだと考える人もいます。…きっともう頭がパンク寸前かと思うので、今回もまた表にまとめますね。
表記一覧
そろそろ怒っていいですよ。次から次へとローカルルールを作るなと。ですからむしろ、今後この辺りを混同して間違えることがあったとしても、それはあなたのせいではありません。クッキリした表記のガイドラインを作れてなかったり、ホイホイ別記別称を作ってきた先人たちのせいです。

とはいえ、「m7(-5)」が「Φ」の一文字で済むのであれば、この表記はまんざら悪くありません。このサイトでも、VIIm7(-5)VIIØと書くなど、活用していきたいと思います。

ちなみに当サイトにおいては、「Φ(ファイ)」ではなく、「Ø(スラッシュつきオー)」を使用します。これは純粋に、見ための可愛さの問題です。

この節のまとめ
  • m7(♭5)の第7音をさらに半音下げた和音を「ディミニッシュセブンス」と言います。
  • ディミニッシュセブンスは、極めて不安定な響きがするコードです。
  • m7(♭5)は、「ハーフディミニッシュ」とも呼ばれます。
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