接続系理論 ❷ 五系統分類

音楽理論 接続系理論

前回の話をまとめると、こうです。

2つのコードの接続がもたらす曲想は、「TDS・長短・ルートの変化」という3つの「コントロール・ファクター」から分析することで、非常にクッキリと見えてくる。それによって曲想をコントロールすることが可能だが、実際にどのコード進行が歴史あるもので、どのコード進行が最近の流行かといった「歴史的・社会的側面」は、各流派の理論書を読んだり、実際の楽曲をたくさん分析しないと分からない・・・。

これまでの音楽理論では、そういった部分はユーザーに丸投げでした。流派による考え方の違い、ロックンロール以降のコード進行の流行の遷移・・・それはすごく大事な情報なのに、全くといっていいほど触れられません。そこにメスを入れるのが接続系理論です。今回は、「接続系統分類」を行うのです。

#1.接続系統

接続系統分類は、「ルートの度数変化」を元にして行います。ルートの変化量がコード進行の「エネルギー」に直結するという話は前回しましたが、実はルート変化は同時に、ジャンル毎・時代毎のコード進行の好みの違いも如実に反映されます

つまり、「3度上行はクラシックやジャズではあんまり使わないけど、ダンスミュージックではよく使う」「4度下行はクラシックでもロックでも愛用されてるけど、ジャズではあんまり使わない」なんていう風に、ハッキリと好まれるスタイルが分かれているのです。
だから、ルートを元にコード進行を分類するというのは、すごく実践的な分類になるわけですね。

さて、ルートの動きというのは、思った以上に限られています。簡易度数の世界で論じるならば、たったの6種類しかないのです。

  • 2度上行
  • 2度下行
  • 3度上行
  • 3度下行
  • 4度上行
  • 4度下行

前回やったように、「6度上行」はけっきょく「3度下行」として扱うという話でした。距離の近い方で見れば、バリエーションはこれだけなのです。

近い方で

ニックネームをつける

しかし、「2度上行」とか「4度下行」ではちょっと堅苦しいし、長ったらしいし、何とも親しみが持てません。そこで、それぞれのパターンにニックネームをつけてあげるとしましょう

度数 名称 略記 名前の由来
4度下行 Active Nexus A型 最も活性的(active)進行なので
4度上行 Basic Nexus B型 最も基本的(basic)な進行なので
2度下行 Close Nexus C型 近接(close)した音へ移動するので
2度上行
3度下行 Drop Nexus D型 3度で落下(drop)するので
3度上行 Elevate Nexus E型 3度で浮上(elevate)するので

ご覧のとおり、A・B・C・D・Eで綺麗に並び、かつ意味もそれなりに含んでいるような名前を用意しました。現段階ではどれがどのアルファベットだったか迷うと思いますけど、説明を聞いているうちに頭に入っていきますし、慣れたらこの「アルファベット1文字」というシンプルさが最高に使いやすいと分かります。

それぞれの系統がもつ特徴については次回以降詳しくやっていきますので、この回ではそれぞれを簡単に確認していきますね。

#2.Active Nexus (A型)

4度で下行する動きはとても活発で、パワフルな印象を曲にもたらします。

A型

この分類においては、「A型」をさらに「A¹(=1族)」と「A²(=2族)」に区分します。ひとつだけ、赤字で肩に2のついたものがありますね。これは従来の音楽理論で「禁則」とされている進行です。そういった要注意の進行を、接続系理論では「2族」と呼んで区別するのです。

この「2族」たちについて、従来の理論では「禁則」の二文字で解説終了ですが、でも接続系理論では、それらがちゃんと現代で活用されていることを提示し、その使い方を学んでいきます。
だから慣習的な作品が作りたければこの2族を封印するといいし、挑戦的な作品にしたいのならこの2族を積極的に使えばいい。これが禁則の一切無い自由派音楽理論のメソッドです。

さて、TDSの変化に着目すると、A型の接続は全て「反時計回り」の進行をします。「反時計」の話は、覚えているでしょうか? TDSの初回に登場しましたね。

反時計

T→S→Dの「時計回り」が自然な盛り上がりを作るのに対し、T→D→Sの「反時計回り」は、それぞれ個性的な曲想を生むのでした。だからA型の接続たちは、いずれも曲を活発で面白いものにします。アクティブなのです。

#3.Basic Nexus (B型)

4度上がる動きは、クッキリと明快、非常に聴き心地がよいことで知られています。

B型

ご覧のとおり、B型には「2族」がいません。どの進行についても、クラシック時代から使われ続けている愛用品ばかりです。特にジャズは、このB型を根幹にして理論を展開していくんですよ。

B型はA型とは対照的な存在。A型は「反時計回り」なんですから、その逆を行くB型は必然的に全て「時計回り」の進行になります

時計回り

B型の聴きやすさの主たる理由は、この順当な時計回りにあります。まさに曲のベースを作る接続であり、最もベーシックな接続です。

#4.Close Nexus (C型)

「2度」で移動する動きは、上下どちらも曲想が似ているので、ここではひとまとめにしてしまいます。

C型

もちろん「下がる」と「上がる」で印象に違いはありますけどね。C型は上行も下行も、基本的に穏やかな曲想を生みます。当たり前ですよね。移動の度合いが小さいですから。
C型にも「2族」が2つ存在しますが、2つとも現代では破られまくっている「弱い禁則」です。王道のコード進行内にもこの「C²」の動きはよく含まれますし、いまの一般的な聴覚でも、この進行に引っかかりを感じる人はほとんどいないと思います。

#5.Drop Nexus (D型)

3度下の移動は、B型と同じく聴きやすい進行としておなじみです。

D型

こちらにも「2族」がひとりいますから、これについては注意して使わないといけないわけですね。

#6.Elevate Nexus (E型)

最後に残ったのが、3度上行する「Elevate」の型です。

E型

実はこの「3度上行」がいちばん上級者向けとされていて、古典派クラシック理論ではほとんど全てが原則非使用です。フワフワして落ち着かないような、独特な情感を有しています。要注意の“2族”が3つもいますので、いわばコード進行の魔境。なんですけどもやっぱり、このE型にしかない魅力というのがあって、21世紀の音楽では普通に活用されています。


さて、こうやってニックネームをつけて特徴を紹介することで、「2度」「3度」といった機械的な世界に、少し親しみが湧いてきたのではないでしょうか。もう少しだけ、五系統の比較をしましょう。

#7.共通音とテクスチャ

多くの進行では、コード進行前と進行後で共通音があります。例えばIVの移動の場合は、共通音が1つ。

I-Vの移動

考えると分かることですが、共通音がいくつあるかは、接続系の型によって決まっています。A型やB型であれば、どれであっても共通音は1つ

II-VImの移動

他の系統での共通音を見てみると、次のようになります。

C型:共通音なし
V-VImの動き

C型は、「2度の移動」という意味ではエネルギー量こそ少ないですが、メンバー全取っ替えということで、サウンドは大きく変化します。接続系理論ではこれを、「テクスチャの変化が大きい」と考えます。テクスチャが大きく変わるときには、彩りが豊かな印象を曲にもたらします。

D型・E型:共通音2つ
IV-VImの動き

逆にD型やE型は、エネルギー量はそこそこありますが、コードトーンの入れ替えが最も少なく、テクスチャの変化が抑えられます。だからすごく平穏・平坦な印象をもたらします。
こんな風に接続系理論では、コードの長短変化に加えて構成音の変化も加味して、最終的にどれくらいテクスチャが変化するのかを認識します。

長短の変化 構成音の変化 最終的なテクスチャ変化
IV-V なし 3音 明るさは変わらないが、彩りが大きく変わる
V-VIm あり 3音 最も劇的にサウンドが変わる
I-VIm あり 1音 明暗の変化はあるが、彩りは似ている

こうやって色々な視点で、分析すればするほど音のことがよく分かってきますね。それではここから先は、それぞれの接続系がどんな魅力を持っていて、どんな活用がされているかを詳しく見ていきましょう!

総括
  • 2コードの接続を、特にルートの変化に着目して五系統に分類します。
  • 従来の理論で禁則に指定されているものには「2」のマークをつけて区別し、個別に詳しい使い方を見ていきます。
  • ルートを元に分類すると、曲想についてはもちろんのこと、流派(ジャンル)ごとの好みの違いも判明していきます。

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