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接続系理論 ❷ 系統分類

By 2023.08.02接続系理論

3. 各接続の特徴

2度の接続

2aの接続
2bの接続

22はすぐ隣のコードへの移動ということで、非常に穏やかでスムーズな印象をリスナーに与えます。一応2の方には2つ『かつての禁則』があるものの、そのスムーズさによる助けがあるため、現代ではほとんど気にされることなく使用されています。ですからココに関しては一律で「スムーズに繋がり、穏やかな曲想を作る」と覚えてしまうとよいです。

5度の接続

5aの接続
5bの接続

3度を飛ばして先に5度の説明。2度とはうって変わってルートの変化量が大きいため、ダイナミックに聴こえるというのは前回やったとおり。上行/下行を比べると、5には『かつての禁則』がひとつあるのに対し5にはひとつもありません。ここは2度接続とは異なって、大きな差が現れるところです。

伝統的なのは5

例えばジャズ5より5を偏愛していることで知られており、ジャズの大部分がこの種の進行でできているとまで述べる本もあります1

2-5-1-4-2-5-3-6

こちらは実際に、大部分を5で構成したコード進行。いかにもジャズにマッチした流れになりました。また古典クラシックでも5を基本的な進行とする見解がしばしば見られ、特にリーダーのIに至る経路として、IVIよりもVIの方が圧倒的に重視されます。

このように、クラシック/ジャズという西洋音楽理論の二大ジャンルが共に、5より5の存在を優位に置いています。

反骨精神で逆を行くロック

だから逆の発想でいくと、5を使わないことで脱クラシック/ジャズ的な雰囲気を作り出すことができるという話でもあって、実際にロックやEDMでは5を利用した定番コード進行がいくつも存在します。例えば6-4-1-5のループなんかはロックに非常に適したコード進行となります。

こちらは実際に6-4-1-5のループで作られたメタル曲です。この曲の激しさの背景には、もちろんサウンドや歌い方もありますが、非クラシック/ジャズ的なコード接続による効果もあるわけなのです。

ロック系のジャンルでクラシック/ジャズに比べて5の頻度が多いという指摘は、理論書においてもなされています255の表現を使い分けることは、そういったジャンル感の演出にも関わってくることになるのです。

イメージで覚える

55は似ていながら性格が正反対。進行の向きが正反対なのだから、当然といえば当然ですね。どっちがどっちか覚える際には「下がる方が自然で楽。上がる方はパワーが必要で反骨心が要る」などとイメージするとよいです。

5度上行はたいへん
5度下行はらくらく

単なるイメージではありますが、クラシック理論書では実際に5を連鎖するコード進行を「5度の滝」と呼ぶような本もあり、「上から下へ流れるように落ちていくので自然なのだ」という観念が強固に根付いています3

3度の接続

3度の接続は、これまでの2つと比べるとやや補佐的な存在となります。というのも、IIVVのメジャーコードどうし、VImIImIIImのマイナーコードどうしを繋ぐ際には3度の接続が発生しないからです。

2度と5度で作るネットワーク

「1-4-5-1」や「6-2-3-6」といった、長調・短調の枠組みを作る基礎的なコード進行に、3度接続は関与してこないわけです。だから必然的に3度の接続が担う主要な役割というのは、IVImIVIImVIIImといったメジャーとマイナーの橋渡しになります。

3aの接続
3bの接続

ご覧のとおり、六つの基調和音の範囲においては、3度の接続をすると必ずメジャー/マイナーが反転します。

禁則だらけの3度上行

なんと3の方は、半数以上が「かつての禁則」です。クラシックやジャズでは他の接続系と比べると使われる頻度は少なめです。一方でロック、テクノ、EDM、ヒップホップといった近年のポピュラー音楽でジワジワ使用が増えてきている、新興勢力なのです。


上は4-6-1という3の連鎖によるコード進行をループするテクノソング、下は2-4-6-5というこれまた3を基本にした世界的大ヒット曲です。「滑らかに隣へ動く2度」とも「ダイナミックに飛躍する5度」とも違う、フワッと浮き上がるような感覚があるかと思います。それがクラシック/ジャズでは好まれなかったようですが、ポピュラー音楽においてはこれも表現のひとつとしてパレットに乗せておくべき存在です。

一方3の方はおおむね使いやすくてジャンルを問わず使用されますが、こちらもひとつだけは要注意の接続が含まれています。

イメージで覚える

この33についてもやはり、「落下する方が自然に行ける、上がる方が大変」という風にイメージすると、55と同じ要領で覚えることができます。

ザックリとまとめると、「2度はスムーズなので基本なんとでもなる、3度・5度は下行の方が大概スンナリ自然に進めて、上行の方は何かとクセがある」という話になります。そしてクラシックやジャズは自然な進行を愛用し、逆に近年のポピュラー音楽ではそれ以外を活用することで耳に新しいサウンドを生み出している……。

これでまた、TDSとは別の判断基準ができあがりました。幾つかあった『かつての禁則』をどう使いこなすかについては、以降の個別記事で詳細に扱います。

4. 共通音とサウンドの変化

コードを接続した際、前のコードと後のコードで構成音が共通していることは多くあり、これを共通音Common Tone/コモン・トーンといいます。

基調和音の接続においては、何度で接続したかによって共通音の数が決まります。

2度:共通音なし

2度の接続は隣への移動になりますから、メンバーは必ず全とっかえになります。

V-VImの動き

だから22はルート移動の変化こそ小さいものの、サウンドの質感に関しては多大な変化があるという二面性を持っているわけです。抽象的な表現にはなりますが、ハーモニーの“色彩”に大きな変化をもたらすことができるという風に言えます4

5度:共通音1つ

5度の接続の場合、必ず1音は共通する音があります。

5度の接続例

逆に言えば3音中2音が変化し、またルートの変化も最大ということで、55はやはりパワーや推進力に長けた接続です。

3度:共通音2つ

3度の接続の場合が最も共通音を多く含んでいて、3音中2音はそのままです。

3度の接続例

ですので3度進行は、ルートの移動量だけを見れば当然2度に勝りますが、総体的に見れば“メンバー全とっかえ”の2度進行よりもやや平坦で進展の少ない印象を与えます。

そう考えると、コード進行の中でハッキリクッキリと展開を推進させられるのは55しかないとも言えます。


ルートの変化という観点から分析することで、コード接続が持つ性質がより詳細に見えるようになりました。ルート・モーションに関してジャンルごとの好みがあるなんていうのは、なかなか意外だったのではないかと思います。

次回以降はそれぞれの接続についてより詳細な例とともに解説をしていきます。

まとめ

  • 2コードの接続を、ルートの変化量を基準にして分類していきます。
  • ルートを元に分類すると、曲想についてはもちろんのこと、流派(ジャンル)ごとの好みの違いも見えてきます。
  • ルート・モーションは結果として共通音の数とも繋がっており、共通音の多寡もまた分析のうえで重要になります。
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