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前回の要点はこうでした。「ド⇔シ」「ミ⇔ファ」だけは音階の中で半音の段差になっていて、他よりも繋がりがなめらかである。

半音

その特別性を生かしたメロディ作りを前回は確認しました。

1. 四七抜き音階

では逆に、この2つの「傾性音」を曲から排除するとどうなるのか? 「ファ・シ」が全く使われず半音関係の消え去った音階がこの世には存在します。それが「四七抜き(よなぬき)音階」です。

47抜き

ドレミで四番目のファと、七番目のシを抜いたから、「四七抜き」です。中国や日本では古来から使われていた音階のひとつであり、そのためか日本人からすると特有の親しみやすさ、懐かしさを感じるところがあります。近代になっても、明治~昭和初期に作られた童謡にはこのファ・シのない四七抜き音階でメロディが作られた楽曲が散見されます1

聴き慣れた童謡だと思いますが、よくよく確認するとファ・シが作る半音のラインがどこにも存在していないことが分かります。日本人はこのファ・シ不在の節回しに子供の頃から慣れ親しんでいるということですから、他ジャンルにおいてもこの音階を聴けばどことなく親しみを感じる可能性が高いわけです。

ポップスでの使用

四七抜き音階は、J-Popで和風や中華風を演出する意図で用いられるほか、傾性音が存在しないことによるカラッとした雰囲気自体が魅力的であるので、国内外を問わずポップスで愛用されています。

サビだけ四七抜きの曲もあれば、全編を通してというものもあります。「チャイナアドバイス」や「夏祭り」はやや民族的表現としての意図が垣間見える一方、「春を告げる」や「香水」にはおそらくそういった意図は全くなく、キャッチーで親しみやすいメロディを意識した結果として自ずと四七抜きになったのではないかと推測します。

ロックでの使用

また四七抜きはロックギターのフレーズ作り、そしてロックらしいメロディ作りの定番でもあります。

ギタリストにとって「四七抜き」は、アドリブ(ソロ)を弾きやすい音階としておなじみなのですが、愛用される要因はいくつか考えられます。
まず傾性音の不在によりメロディの動き方が自由になること。「ファの次はミに進む方が滑らかであって…」みたいなことを一切気にしなくていいわけです。
それから傾性音の解決はクラシックやジャズの基本であるため、それが消失することでそういった上品な印象を持つジャンルから離反することになり、それが「ロックらしい」という印象に繋がっている可能性があります。最後に、ギター演奏で指を押さえる場所の候補が7音から5音に減るため、指さばきを覚えやすいという実践的事情もあるでしょう。

フォーク/カントリーでの使用

さらに四七抜き音階はスコットランドやイングランドの古い民謡・童謡に見られる音階でもあります。そしてそういったエリアの音楽にルーツの一端を持つフォークやカントリー音楽では、四七抜きのメロディを比較的多く見つけることができます。

「Auld Lang Syne」は、「蛍の光」の原曲となるスコットランド民謡です。「カントリーロード」はもともとアメリカの曲で、ジブリ映画「耳をすませば」で日本語詞がつけられたものが有名になりました。どちらもまるで日本の曲かのように親しまれていますが、その要因として「四七抜き音階」が我々に懐かしさを感じさせるという点がありそうです。

aikoの「ボーイフレンド」はバンジョーをフィーチャーしたユニークな曲ですが、イントロなどでのバンジョーのフレーズは、全てではないにせよかなり四七抜き音階を利用していて、カントリーらしい調子をしっかりと演出しています。もし普通のメジャースケールにしてしまっていたら、通常のJ-Popに寄りすぎてあまりバンジョーを入れた意味が薄れてしまっていたかもしれません。あるジャンルを取り入れる際に、そのジャンルの音階の嗜好を知っておくことはエッセンスのひとつとして重要になるわけです。

世界の民族と四七抜き

なお、四七抜き音階を使用する民族音楽は決して日本・中国・ブリテン島周辺に固有のものではなく、アジアやアフリカをはじめ本当に世界各地の広い地域で使われています。

ですから逆にアフリカの人たちが日本の民謡を聞いて親しみを感じるなんていう可能性もありますね。ただ、使っている音だけで言えば同一の四七抜き音階でも、実際にどの音を多く使って、どんなリズムでどうラインを繋いでいくかといった細かな節回しまで注目するとやはりそれぞれの個性はあって、音階を深く研究する場合には単にメロディの構成音を集めるだけではない深い観察が必要になります。

2. 音数と名称

四七抜き音階は、「ドレミソラ」の5音で成り立っています。「ドレミファソラシ」は7音。この「音数」は、スケールを大きな分類基準のひとつとなりますので、音数に基づく分類名というのがあって、日本語・英語それぞれ次のように呼びます。

日本語 英語
五音音階 ペンタトニック・スケール
六音音階 ヘキサトニック・スケール
七音音階 ヘプタトニック・スケール
八音音階 オクタトニック・スケール

四七抜き音階は、五音音階の一種」というような言い方になります。日本語は非常に分かりやすいですね。英語の方も、「ペンタ・ヘキサ・ヘプタ・オクタ」はそれぞれ「5・6・7・8」を表す接頭語で、「ペンタゴン」「オクトパス」といった単語と繋がっています。

レラティヴ関係

この四七抜き音階は、ペンタトニック・スケールのうち最も代表的な存在で、正式名称をズバリメジャー・ペンタトニック・スケールといいます。

また、メジャースケールとマイナースケールが「レラティヴ」な関係にあるように、この音階のラの音がリーダーとなった場合には、マイナー・ペンタトニック・スケールと呼ばれることになります。

ペンタ

「音階の構成メンバーは一緒、違うのは中心の位置のみ。それは認知の問題なので、境界線は曖昧であり、曲によってはどちらだか判然としないこともある」という話はここでも同じです。

そのため、とりわけロックギタリストなどが即興演奏をする際などにしばしば「ここはペンタ一発で行くぜ」というような言い方をします。その時の「ペンタ」というのは、メジャー・ペンタトニックか、マイナー・ペンタトニックか、その区別は分からんけども、とにかくドレミソラの5音で行くぜということを含意します。


・・・とまあこんな具合に、半音・全音というちょっとした差が、曲想には大きな影響を与えます。そうすると「長音階」にも「四七抜き音階」にも登場する「ドレミ」の三人が固まっているところは、中立的存在と言えますね。そこから上に上がる時に「ミファソ」と行けば西洋音楽的な情緒が生まれ、「ミソラ」と行けば力強い感じになる。こういった細かなことを、メロディ作りの時に活かしてもらえば、メリハリのある曲が作れるはずです。

まとめ

  • 半音進行をなくした「四七抜き」はクラシック・ジャズ等の伝統的な西洋音楽の様式からやや離反するものであり、結果として東洋性やロック感を演出する能力に長けています。
  • 四七抜き音階は、キャッチーなメロディを作るのに向いています。
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