幾つかの重要なコードスケール

スケール集めもこれで最終回。あと4つだけ、コードスケールを紹介します。しかもそのうち3つはすでに紹介済み。なのでサクッと行きましょう。

#1.ドミナント系のスケール2種

まずはドミナントセブンス系のコードスケールが2つ。実はどちらもこの章以前で紹介済みなので、すぐ済みます。ササっといきましょう。

ホールトーン

一つ目は、おなじみ「Wholetone」です。

Wholetone

メロディ編で紹介した際は、あまりコードを考えずに使うとよいという話でしたが、いざコードクオリティを確認すると、「augmented seventh」ということになります。ポピュラー音楽の世界では、なかなか出会うことのないクオリティです。
ただし、調性音楽の文脈が存在せず、音が6音しかない「ヘキサトニックスケール」であるホールトーンは、異名同音の自由度が非常に高いです。「#5」は「♭13」と見ることもできますから、そう考えると、ドミナントセブンスコードに対応させることも可能であることが分かりますね。実際に“飛び道具”としては効果覿面のモードです。

オルタード・ドミナント

二つ目は、V章で紹介済みの、「Altered Dominant」です。

Altered Dominant

最大の特徴は、9th9thの両方をテンションに有している点です。9thを3rdと絡めた場合はいわゆるハーモニックマイナー系の「増2度の段差」を活かしたフレーズになり、9thと3rdを絡めた場合には、滑らかな半音差を活かしたフレーズになります。

13thについては、これを+5thとみなし、「±9,±5」と記す見解もあります。確かに「13th」というとどうしても、半音下のP5と絡んだ動きをイメージしてしまいますが、実際にはP5は使われない。そういう意味では、「±5」とした方が、このスケールの実体が“つかみやすい”ような気もしますね。

スーパーロクリアンとの関係

ちなみにオルタード・ドミナントは、鍵盤上の構成音だけを見ればスーパーロクリアンと同じです。

E Altered
E Super Locrian

ただし、これまでも複数の名称が用意されているモードがありましたが、この二者はそういうのとは全然別次元の話で、「同じスケールの別称」では決してありません
Alteredは「長3度」を有し、ドミナントセブンスと結束しているコードです。一見「短3度」に見えるものは9thであり、これはテンションである。
対するSuper Locrianは「短3度」を有し、ハーフディミニッシュと結束するコード。一見「長3度」に見えるものはo4thであり、これはコードトーンに半音上でかぶさるアヴォイドなのです。

どれをコードトーンと認識し、どれをアヴォイドと認識するかは、当然演奏内容に関わってきます。鍵盤上の見た目が同じというだけの理由でこの2つをまとめてしまうと、本来のコードトーンが押し出されず、アヴォイドを弾きまくってコード感がグチャグチャになる危険もあります。

D–7G–7Eø(-9,-13)A7

こちらは、Eøの場面で正しく「Eスーパーロクリアン」を演奏した場合。ハーフディミニッシュだときちんと認識したうえで、短3度をしっかり強調して演奏した結果、美しい音響が得られています。「減4度」はあくまでもフレーズの通り道程度にして、強調していません。

D–7G–7Eø(-9,-13)A7

こちらは「Eスーパーロクリアン=Eオルタード・ドミナント」と表面的な丸暗記をした人がやりかねない演奏。Eオルタードと同じように、減4度を長3度とみなしてコードトーンであるかのような演奏をした結果、音楽が壊れてしまいました。

そもそもCSTのスタート地点が、「同じ白鍵だけの音階でも、コードごとのサウンドの違いを意識するために7つのモードに分割しよう」なのだから、見かけの構成音を理由に異なるコードスケールを同一視することなど決して無いのです。まあ見かけの位置が同じだということは、暗記の手助けにはなりますけどね。

#2.メジャーセブンス系のスケール2種

ここまでメジャーセブンス系のコードスケールと言えば、平均的な明るさの「アイオニアン」系か、11thが特徴の「リディアン」系のどちらかしかありませんね。違うタイプのものもあるンだぞということで、2つ追加で紹介させてもらいます。

ハーモニック・メジャー

一つ目は、「モーダル・インターチェンジ」の回に初出したばっかりの、「Harmonic Major」です。

Harmonic Major

メジャーとハーモニックマイナーの中間で、メジャーセブンスに対応している貴重なコードスケールです。クラシック音楽でも関わりが深く、もし次にペアレントスケールを選ぶならコレだという重要な存在なので、ここで主要メンバーのひとりとして加えさせていただきたい。

ジプシー・メジャー

もう一つは、「Gypsy Major」と呼ばれる音階。

Gypsy Major

「アラビック・スケール」「ビサンティン・スケール」といった別名がありますが、ようは中東の音楽でよく使われる音階ということですね。いちおうコードクオリティだけ見ればメジャーセブンス対応ですが、♭2とM3、♭6とM7の間に2つの「増2度」が生じていてかなりクセが強く、さほど明るい感じはしません。その点で、非常にキャラクターの強い音階です。

民族的な音階というのは本当にたくさんあり「メロディ編」でもインドの「マカーム」の話やインドネシアの「ガムラン」の音階や、「スパニッシュ・エイト」など色々ありました。中にはジャズで取り入れられているものもあり、ジプシー・メジャーはそのひとつ。

こうした民族的な音階は、コード上でちょこっと使う「モード」としての活用だけでなく、ペアレント・スケールとして大々的に使用すればもちろん面白いサウンドを生みます。

こちらはジプシー・メジャーの音階を全面的に使った例。ようは、先の記事で説明した21個のコードスケールはみな「西洋音楽」の基本であって、それより外の世界がまだまだある。そのことを忘れないでほしいのです。そういう意味を込めて、ここで民族音楽由来のスケールをメンバーに加えることにしました。


さてようやくついに!27個のコードスケールを紹介しきりました。本当に、ここで一旦スケールの“収集”は終わりです。まだ他に民族的なスケールやブルース系から来るスケール、六音や五音構成のスケール、人工的なスケールを親にしたモードたち、既存のモードをさらに微妙に変化させたもの、あるいは新しいペアレント・スケールの候補など色々あります。

  • Bebop Scale
  • Hungarian Minor
  • Symmetric Augmented
  • ・・・

やっていくとキリがないので、このサイトではここまでです。“ジャズ理論への招待”であるこの章の目的は、知識を増やしまくることではなく、ジャズ系理論の哲学や実践におけるその魅力を知ってもらうことですからね。
次節では、ここまでに紹介した27個のコードスケールをまとめ直し、コードスケール理論の全体像を掴みにいきます。

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