長短がはっきりしない曲での音階の調性引力

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  • dreaber
      dreaber

      いつも大変お世話になっています。
      メロディ編第Ⅱ章まで読み終え、疑問に感じた点がいくつかありましたので質問させてください。
      「ドレミファソラシ」の音階を使って長短がはっきりしないようなメロディを作りたい場合、「ド」と「ラ」が中心を取り合うと思うのですが、このとき調性引力はどのようになるのでしょうか?
      個人的には、長音階では「ド」が中心となって、短音階では「ラ」が中心になるのだから、長短がはっきりしないメロディでは「ド」と「ラ」の両方が引力中心になり、「1つの音階に2つの引力中心が存在している」ようなイメージを持っているのですが、これは中心を取り合うという自由派音楽理論の考え方とは異なるイメージになってしまうのでしょうか?もし、「1つの音階に2つの引力中心が存在している」というイメージが間違っていなければ、疑問に感じることがあります。
      調性引力論の中で収束と発散について述べられていましたが、1つの音階に2つ引力中心が存在する場合、「中心から離れる高揚感と、中心に近づく終止感が混在してしまうのかな?」と思いました。例えば、「ミ→ファ」へ音が移動する場合、「ド」を引力中心として考えるならばこれは発散になり、メロディに高揚感を与えることになると思うのですが、「ラ」を中心に考えるとこれは収束になるため、メロディは終止感を持つことになります。また、音の持つ傾性も「1つの音階に引力中心が2つ存在する」ことで変化するのかな?とも思っております。
      このことについてどのように考えればいいのか、教えていただけると幸いです。

      yuta
        yuta

        鋭い質問をありがとうございます。
        まず正直なところ、この「キーの長短の流動性」というものが、文字どおり流動的で(しかも感覚的)なものなので、ピシッと区切りをつけて論じるのは難しいところがあります。(それがこれまでメロディの理論が発展してこなかった理由のひとつでもあると思います。)

        中心については、確かに「取り合う」という言い方をしていますが、「両方が中心として働こうとする」といったニュアンスで、「どちらか片方が中心の地位を勝ち取る」という意味ではないです。ちょっと、紛らわしい言い方でしたね。

        重力

        こうやって、メジャーキー状態では「ドの一党独裁」だったところに、「ラという対抗馬」が現れてくるイメージです。

        しかし、ラが持つ中心としての力は、弱いです。メロディ編III章の三つの短音階で紹介していますが、この「中心としての弱さ」を克服するために、ファとソにシャープをつけてラの方へ近づけるという工夫もクラシックでは為されていました。逆に言えば、そういった“加工”が無い状態では、ラはセンターとしては弱いということです。
        『せいぜい、「ソ→ラ」「シ→ラ」くらいの、“隣からの移動”に終止感を感じられるようになるくらい』と考えておくと、実践上わかりやすいと思います。(ですから傾性の変化は多少感じられます。)

        それで、こうやって眺めるとファってやっぱりかなり微妙な位置にいますよね。特にミへ半音差で引きつけられている部分があるので、そこも加味すると、暗めの曲調でミ→ファと動いたとしても、「中心へと帰っていってる感」はほとんど得られないかなというところ。実際の聴覚上の印象も、むしろ「安定のミ」から「不安定のファ」へ移ったという不安定さの方に耳がいきます。

        ちなみに「傾性」は、突き詰めると周波数の比率の話になってくるのですが(これは本編では述べていません)、「ファ」に関してはドから見てもラからみても不安定な音なので、ファの音が落ち着きを得ることはありません。

        ぎんきょ
        dreaber
          dreaber

          わかりやすく教えていただき、ありがとうございます。
          メロディを論じることはやはりなかなか難しいものなのですね。
          ファという音が持つ強烈な特性についても再認識できました。ありがとうございました!

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