拍子詳論

さて、ここまでずっと「四拍子」「三拍子」といった略称を中心に話を進めましたが、きちんと正式な名称を確認するのが今回です。楽譜と関わる内容であり、制作にはあまり関係ないというのが、ここまで先延ばしにしてきた理由です。

#1 表記と意味

楽譜上では、拍子は以下のように、分数のような形で書かれます。

分数

ですから、これまで「四拍子」と説明していたものは、その正式名称を「四分の四拍子」といいます。分子の部分が指す意味はもう大丈夫ですよね。「いくつの拍でひとつのまとまりを成すか」です。
それに対して分母の指す意味は、「基準となる音符の長さ」です。
例えば四分の四拍子であれば、「四分音符を基準として、それが4つで1小節」という意味です。

意味

ですからこの小節というのは、四分音符だとか八分音符だとかいった、楽譜の書き方と密接に関わった概念であるということです。

6/8

なぜ「八分の六拍子」だけ八分音符が基準になっているんでしょうか?
これは前回のお話を思い出してみてください。八分の六だけは、カウントがとても小刻みでしたよね。


「普段の四拍子よりも刻みが細かい」という認識が作曲者側にあるため、八分音符を基準にするのです。また単に、そのようにするのが慣習であるという側面もあります。

こんな風に、拍子の決定には認識的・慣習的な要素がかなり関わっているのです。歴史の中でなんとなく形成されていったようなところがあるので、あまり論理的に突き詰めようとしない方が得です。

#2 二分の二拍子

せっかくなので、ここでもうひとつ、ややこしい拍子を紹介しておきます。それが、「二分の二拍子」。二分音符を基準として、それが2つで1まとまり。

2/2

主にクラシックで使われる拍子なのですが、ひとつ疑問が起きます。「二分音符が2つぶん」というのは、「四分音符が4つぶん」と同じ長さですよね? 一体何が違うのでしょうか? 先ほどの楽譜で比べるなら、こうなります。

比較

何も変わらないような気がします。しかし、ここに関しては「強拍・弱拍」のことを思い出しましょう。アクセントの度合いが変わってくるのです。

強拍

四分の四拍子は、もうおなじみの「強・弱・中・弱」ですけど、二分の二だとそれが「強オモテ・強ウラ・弱オモテ・弱ウラ」という構成に変わるわけです。
こうなると、演奏の際も時間の流れの捉え方、強弱の作り方なんかが変わります。

「二分の二拍子」はクラシックでよく使われる表現であり、ポップスで使われることはまれ。以前にもあったとおり、ポップスはそこまで微細な強弱を気にしないジャンルなのでね。
逆に、「過去の偉大な作曲家が表現したかったことを、我々演奏家はきちんと解釈して演奏しなければならない!」という考えの強いクラシック分野では、この「4/4」と「2/2」の間にはものすごい違いがあるというわけ。

#3 ロック音楽の変わった拍子

それから、特にロック音楽などでは、また一風変わった拍子が用いられることもあります。

こちらはポリスというバンドの、「シンクロニシティー」という名曲です。一見シンプルな四拍子に聴こえますが、数えてみると違います。四拍子よりも二拍多いですね。カウントを取ると、こうなります。

六拍子ということ。しかし楽譜に「6/4」と書くと、読み手が勘違いをしてしまう可能性があります。というのも、その字面からすると、「3/4」が2つくっついたかのように思い込んでしまう危険があるからです。

同じ六拍子でも、これではアクセントが全然違いますよね。こうならないために、このような不思議な拍子の時には、楽譜上ではそれ相応の特殊な表記をすることがあります。それがこちら。

こちら

もう、見たまんまですね。こうしてあげることで、作曲者の意図が明確に伝わります。このような拍子も、広義の「複合拍子」に含まれるのと同時に、広義の「変拍子」にも含まれます。

#4 シャッフルの表記

さて最後は、以前やった「シャッフルビート」を楽譜でどう示すかの話です。
拍を三分割する時には普通「三連符」の記号を使いますが、曲中ぜんぶ三連符なんですから、キリがありません。そこで、楽譜の最初にこんな記号を書いておきます。

シャッフル記号

「普通は二分割するところを、三分割して、2:1で分けてくれ〜」というお願いをそのまま記号化したものですね。この記号が楽譜の頭に書いてあったら、その曲じゅうずっとシャッフルビートでやってくれという意味です。

ハーフタイムシャッフルの場合は、16ビートの世界でシャッフルをしていると捉えます。そのため、記号は下のようになります。

シャッフル記号

覚えておけば、演奏の際に困らないでしょう。

この節のまとめ
  • 拍子は正式には分数の形で表現され、分母が基準となる音符、分子がその音符何個ぶんで一小節を成すかを示します。
  • 拍子の決定には、論理的というより慣習的な側面が大いに関わっています。
  • 合計の長さが同じ拍子であっても、アクセントが違えば拍子の表現の仕方も変わります。
  • シャッフルの曲は、楽譜の冒頭にそのことが記号で示してあります。

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1,2,3,4のかけ声のサンプルは、「あみたろの声素材工房」さんで配布されている素材を使用しました。