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3. 比率とバリエーション

さて、「偶数分割」か「三分割」かの二者択一のような書き方をしましたが、実際にはその中間くらいというパターンも普通にあります。場所によって跳ねたり跳ねなかったりするとか、あるいは曲のうちドラムだけがシャッフルする、など複合的なものもたくさんあって、その多様性がシャッフルの魅力であり奥深さでもあります。

こちらは箇所によってシャッフル度合いを細かく変えたドラムです。“気まぐれ”な演奏になったことで、やや人間味が強く出ています。あまり露骨なシャッフル感を出したくはないがリズミカルにしたいというような場合に、跳ね具合の調節やパート配分をするとよいでしょう。

実際の曲例

ドラムがおおむねシャッフルしているのですが、普通にドコドコ叩く場面があったり、曲全体はまったりしていたりと、跳ねアリと跳ねナシが交ざりあう曲です。

こちらはパートによって跳ねたり跳ねてなかったり、また同じパートでもフレーズの一部分だけ跳ねたりだとか、いろいろと微細な揺れがあって、それが独特のノリを作っています。
上のサンプル内でいうと、「Put it up!」のところはシャッフルしてないですが、ドロップ直前の「メキトゥザメキトゥザ」のところははっきりシャッフルしてますよね。

テンポとの関係

ことジャズのスウィングの跳ね方についてはアメリカで学術的な研究対象にもガッツリなっていて、ある研究では実際のドラマーの演奏においてテンポが遅いほど跳ね具合が強く、ハイテンポになると跳ねが弱まり等分割に近づいていく傾向にあるというデータが示されています1


こちらはその傾向を再現したもので、BPM=120の方は2:1よりもキツく跳ね、ところにより3:1くらいの比率になっています。対してBPM=270の方は2:1よりも緩く、5:3くらいの比率になっています。特に速いテンポの方は聴いても何対何の比率になっているかなんて聴き分けるのは難しいですね。でも実際の演奏の録音データから分析することによって、こうしたスウィングの心地よいリズム感の鍵を握るような情報が明らかになってきています。

さてこのような傾向が現れる理由としては、推測ですが、テンポが早ければ早いほど跳ねた音とその後続の音との間隔の狭さが自然に演奏するには厳しいくらい短くなってくるのでしょう。

間隔の狭まり:2拍目のウラが後ろにズレて3拍目の頭と接近する。そこの距離の近さが、同じ右手で演奏するにはキツイ。この2打の狭さがキツくなってくる

この狭まった2打の時間差は、BPM=120の時なら約167ミリ秒ですが、BPM=270のときには約74ミリ秒まで縮まります。しかし高速でシンバルを打ち続ける右手の体感としてそこの連打があまりに短いのは不自然に感じられて、結果として跳ね具合を弱める。逆にテンポが遅いときには、ピッタリ2:1だとまだ後ろとの間隔が空きすぎている気がして、少しだけ後ろ倒しにする…といった身体感覚があるのではないでしょうか。

打ち込みでスウィング感を再現する際にはこうしたグリッドに収まらないリズムの揺れがたいへん重要になってくるもので、ここにリズムの奥深さがあります。

4. 連符

シャッフルはリズムを「2:1」に分けて「タッカ・タッカ」のリズムを作るわけですが、そうなると当然、「1:1:1」に分けて「タカタ・タカタ」と鳴らすことだって考えられますよね。

こんな風に、拍を3分割して演奏したものを、三連符Tripletといいます。これはシャッフルビートからの派生とも言えますし、3拍子からの派生とも言えます。

こちらは「嘘と煩悩」という繰り返しのフレーズが「タカタ・タッタ」という三連符を活かしたリズムになっています。シャッフルと全く同様の「跳ねた感じ」をこの三連符も有していることがわかるかと思います。

局所的装飾としての連符

この三連符に関しては、全くシャッフルしていないスクエアな楽曲の中で一部だけメロディに使うことで、曲中のアクセントとして用いることもできます。

こちらまず「だけじゃない NO NO NO NO」のところ、それからサビの「幸せが広がる」のところで、拍を3分割する三連符のリズムが使われています。他は4分割がベースで、ここだけ3分割になるのですから、必然的に耳の注意を引きます。そしてそこにちょうど大切なフレーズを持ってくると、すごく説得力のある歌になるわけですね。

連符

拍を3分割するのが三連符ですから、5分割なら五連符、7分割なら七連符と呼ばれる。そうしたものを総称して連符Tupletといいます。三連符以外の連符はリズムをとるのが難しく、ポピュラー音楽よりもジャズやフュージョンといった技巧的ジャンル、もしくは民族音楽といった方面で多く用いられる高度な技法です。ただ現代では打ち込みでいくらでも複雑なリズムが作れますから、それで面白いフレーズにチャレンジする人もいます。

リズムの世界もメロディやコードと同様に、突き詰めると非常に奥の深いものがあります。

まとめ

  • 拍子(または拍)をさらにどのように区切るか、その分割のことを「サブディビジョン」といいます。
  • リズムを1:1(タカタカ)ではなく2:1(タッカタッカ)に分割することを「シャッフル」「スウィング」といいます。シャッフルすることを「跳ねる」ともいいます。
  • シャッフルには、「完全な2:1にしない」「一部の楽器だけ跳ねる」などバリエーションがあります。
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