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音階の仕組み ❷段差にすべてを

By 2021.09.23準備編

前回音階について詳しく調べて分かったことは、「全音」と「半音」という2種類の段差が入り混じっているということ。そして、その「全・半」の配列によって、スケールの基本的なサウンドイメージが決まるということでした。

全全半全全全半

3. 段差に全てを

段差が響きを決める。それはつまり、たとえド以外の音を中心にしたとしても、段差の配列が同一であれば、同じサウンドイメージのスケールが得られるということです。

音楽の時間の発声練習の時に、こんなのありましたよね。これがまさに、違う高さに変えて「メジャースケール」を弾き続けている例です。中心音はズレていきますが、音階の明るいイメージはずっと変わらないまま。

これって実は白鍵と黒鍵を交ぜて弾いていて、きちんと「全全半全全全半の段差」を守りながら弾いているんですよ。ピアニストは、どこからでもメジャースケールが弾けるように練習をしているのです。

メジャースケールを作る

例えば「D(レ)」の音をスタート地点にしてメジャースケールを作りたい場合は、こうなります。

これは、「D音」を中心にしたメジャースケールですから、「Dメジャースケール」と呼ばれることになります。

「全全半全全全半」をきちんと守っていることを確認してください。音階の響きも、まるで白鍵だけの「ドレミファソラシド」を弾いているみたいですよね。でも違います。「レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ」なのです。高さが違っても、段差が同じならソックリに聴こえる。これは音楽を理論的に捉えるにあたって、すごく大切な考え方です。

だから、レを中心にして明るい曲を作る場合、ファとドには常にシャープがつくのが基本ってことになりますね。

常に♯

もしかしたら、♯や♭は音を変化させる時にだけ使うもの、と思っている人がいるかもしれません。でも、違うのです。こうやって音階を作る時に、自然と登場するものです。

ですからたとえばメロディ先行で伴奏をつけるなんていう時には、まずメロディラインがどんなスケールを使っているのかを、頑張って調べる必要があります。そこで♯や♭がついていたら、伴奏もそれに合わせて♯や♭をつけてあげないと、メチャクチャな音楽が出来上がってしまう可能性が高いわけです。

このあたりの仕組みをマスターすると、たとえば「曲を作ったけど音程が低すぎて歌いにくい」という時に、伴奏も含めて全体の音程を上げて調整するなんてこともできるようになります。音楽理論の基礎を学ぶ重要な意義のひとつですね。

黒鍵から作る

ではさらに難しくしてみますね。スタート地点を、「E(ミ)」にしてみます。そうすると・・・

E♭

こうです。今度は、ミ・ラ・シを通るときにフラットが付くことになります。

スケール

こんな風に、中心音しだいで、メジャースケールのとき♯や♭がつく音は自動的に決まることになります。それに基づいて作曲をしていくというわけですね。

ただ、イチイチこんな「全全半・・・」というのをやっていたら大変です。これをやらなくても♯や♭を判別できるアイテムがあるので、ご安心ください。そのアイテムについては、もう少し後で紹介しますね。

4. レラティヴなスケール

ところで「Cメジャースケール」と「Aマイナースケール」は、中心音の位置が違うだけで、音階の構成音は全く同じです。そういう意味でこの2つは、血の繋がった親戚のような存在といえますね。

親戚

音楽理論界では、この対になっている音階の関係性のことを、レラティヴRelativeという単語で表現します。

レラティヴ (Relative)
ある2つの音階の、構成音が同じ(だが中心音が異なる)という関係性を指す言葉。
“Relative”という単語には「関係がある」という意味と「親戚」という意味がある。

レラティヴ・スケールと認知

そして、この2つのレラティヴ・スケールの境目は極めて曖昧です。ポピュラー音楽では、場所によってドが中心に感じられたり、ラが中心に感じられたりの、センター争いが発生することもしばしば。
センターがどのように定まっていくかは、コードなどの編曲も大いに関わってきます。メロディなんかで言えば、フレーズの終わりの音や長く伸ばす音に使われるほど、そちらがセンターとしてのパワーを帯びていきます。

こちらは、歌詞がドレミそのまんまという、今回の話にぴったりの歌です。フレーズの始まり・終わり・伸ばす音にラがたくさん使われていますね。そのためラが中心として感じられ、全体のトーンもやや暗く感じられます1

そうなると必然的に、中心がどちらなのか曖昧になるということもありえます。意図的にそういう曲を作ることも、もちろんできる。だからドとラが常にリーダーを取り合っているようなイメージで、我々の認識・感覚が揺れ動いているのだと理解してください2

レラティヴスケールを調べる

ちょうどさっきやった「Dメジャースケール」にもやっぱり、「親戚」は存在します。中心の位置を2つ下3にずらせば、それが親戚のレラティヴ・マイナースケールです。

Bマイナースケール

中心は「B」の音になりますから、出来上がるのは「Bマイナースケール」となります。段差を調べると、今度はやっぱり「マイナースケール」を象徴する「全半全全半全全」になっていることが分かります。

Check Point

どんな場所を中心にしても、段差を守ればメジャースケールやマイナースケールが作れる。たとえばDメジャースケールに基づいて作曲をするときは、全パートが全てのファ・ドに♯をつけて演奏するのが基本状態となる。全パートの音階を統一することで、楽曲はきちんと秩序あるものになる。

まだ「準備編」の前半戦ですが、なかなか内容の濃い回でしたね。要点をもう一度おさらいしましょう。

  • 音階のサウンドイメージは、全音/半音の段差の配列によって決定される。
  • 例えば「メジャースケール」を決定づける配列は「全全半全全全半」である。
  • 基本的には、全てのパートで統一した音階を使う必要がある。
  • たとえ中心の位置が違っても、段差の配列が同じであれば、総体的な印象は同じになる。
  • 同じ段差を作るためには、ピアノであれば黒鍵を使う必要があり、楽譜では♯や♭がつく。
  • 「メジャースケール」の中心を2つずらすと、レラティヴな「マイナースケール」になる。
  • 中心をどちらに感じるかは認知の問題なので、この2つのスケールは、事実上は境目のない同一の存在と考えても差し支えない。

中心の音は、ド〜シまで、黒鍵を入れると12種類ありますから、段差の配列が同じ「メジャースケール」が12種類存在するということです。

メジャースケール1
メジャースケール2

こんな風にね。これらはみな、中心の位置は違えど段差は同じ音階であり、根本のサウンドに同一性があります。だからこそ全員に「メジャースケール」という共通の名前が当てられています。ですから音階の名前というのは、「中心の位置」と「音の配列」の2つでワンセットということですね。

Cメジャースケール

中心音とそこからの配列で、そのスケールの大まかなサウンドイメージが決まるということ。同じ配列を持った音階が必ず12個存在すること。メジャースケールには、ペアとなるマイナースケールが必ず存在すること。これを理解できれば、まず音楽理論のスタートダッシュは万全です。

まとめ

  • 音階の根本的なサウンドイメージは、「中心音からの全・半の配列」によって確定します。
  • 「メジャースケール」と「マイナースケール」が、最もよく使われる音階です。
  • 全・半をマネすることで、どの音を中心音にしても「メジャースケール」「マイナースケール」を作ることができます。
  • そうして出来た音階を楽譜に表す際には、シャープ(♯)やフラット(♭)を使います。
  • メジャースケールには、構成音が全く同じで中心が違うだけのマイナースケールが必ず存在し、この関係を「Relative」であると言います。
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