音階の仕組み ❶全音と半音

音楽理論 準備編

#1 音階のひみつ

前回の話はこうでした。特定の音を羅列したものが「音階」であり、それには「中心」が存在する。
「ドレミファソラシド」は「ド」が中心で、明るい感じ。

音階の例

対して「ラシドレミファソラ」は、同じ「ピアノの白鍵だけを使った音階」であっても、中心が2つ下の「ラ」にずれている。そのことにより、曲想が一転、暗い響きになるのでした。

音階の例

しかし、これはちょっと理解しがたい出来事ではないでしょうか。だって、白鍵だけを使ってるんだったら、どこが中心だろうと同じことでは?
音符は規則正しく並んでループしているのだから。それは螺旋階段のように、どこから見たって同じものではないでしょうか。螺旋階段を2段降りたところで、何も変わらないはず。

why

黒鍵を使ったりしたら変な音になるのは分かります。でも同じ白鍵だけなのに、場所をずらしたら暗くなる。何故なのでしょう。ここからさらに、音を理論的に分析する試みがはじまります。

鍵盤に強くなる

改めて、音楽を分析する基本となる「鍵盤」をきちんと眺めてみます。

音階

ピアノの鍵盤を順番に進んでいくと、音程は均等に上がっていきます。ドからド、ドからレ・・・。これはみな同じ段差の階段、等距離であると思ってください。1

さて、そうすると、私たちが何気なく使ってきた「ドレミファソラシド」は、けっこう変わった段差構成になっていることに気づきます。「ドレミ」の部分は、さりげなく段差を2つ登っているのです。

段差

何の気なしに、1段飛ばしの大ジャンプをしていたということ。また逆に言えば、「ミとファ」「シとド」の間は、他の半分しか進んでいなかったということ。これが、めちゃくちゃ大事なことです。もう一度、改めて横向きのピアノの鍵盤でも見てみますね。

注目!

ミとファ、シとドの間には黒鍵がありません。距離が半分しかない、というわけです。今まで気にもしなかったことですが、コレが音楽理論の全てを握っていると言っても過言ではない。この「半分しかない段差」のことを半音Semitone、そうでない「2鍵ぶんの段差」のことを全音Tone/Whole toneと言います。

  • 半音
    音の段差の基本単位。「ドとド」「ミとファ」のように、すぐ隣り合った音の距離を指す。
  • 全音
    「ドとレ」「ファとソ」、また「ドとレ」のような、2つぶんの段差を指す。半音のちょうど2倍。

この「全」「半」という言葉を使って、もう一度ここまでの話を整理してみましょう。

段差の配列とサウンドイメージ

「ドレミファソラシド」と「ラシドレミファソラ」でなぜ印象が違って感じられたか? それは、「全」「半」の並べ方が違っているからです。つまり、全音と半音の組み合わせによって、音階の響きが決まってしまうのです!

全全半全全全半

「ドレミファソラシド」は、このような全音と半音の並びになっています。「全・全・半・全・全・全・半」です。このまばらな全・半の並びが、結果的に我々に「明るい」という印象を与えています

一方で暗い響きだった「ラシドレミファソラ」の音階は、次のようになっています。

短音階

「全・半・全・全・半・全・全」です。この並びだと、今度は暗くなるわけです。中心音からの段差の配列が、その音階のもつ根源的なサウンドイメージを決めています。2

Check Point

ピアノの白鍵は、「全音」と「半音」がまばらに並んでいる。たとえ白鍵だけの音階でもサウンドイメージが異なって感じられるのは、中心音からの段差の配列が異なっているからである。

そうすると、五線譜というのは音の真の段差が分かりにくい記法であるということですね。ミとファ、シとドの間だけ半音差になっているという事実は、五線譜を眺めても見えてきません。
だから色々な音階について考える時には、「鍵盤」とか「ギターのフレット」とか、「DTMのピアノロール」とかで考えてあげる必要があるわけです。これは今後もずっと同じこと。五線譜は音楽の本質を映し出してはいないのです。

#2 メジャーとマイナー

そんなわけでこの「明るい音階」と「暗い音階」は、ポピュラー音楽の根幹を成す二大音階であり、それぞれ「長音階」「短音階」という名前がつけられています。

また、英語で「長・短」はそれぞれ「major(メジャー)」「minor(マイナー)」といいます。そして音階は英語で「scale」でしたから、「長音階」「短音階」の英語での呼び名は以下のようになります。

  • 長音階 = major scale (メジャースケール)
  • 短音階 = minor scale (マイナースケール)

たとえば「ドが中心の長音階」であれば、英語だと「C major scale」という風に言います。
和名だと「ド」は「ハ」になりますから、「ハ長音階」と言います。うーん、やっぱこの21世紀に「イロハニホヘト」はちょっと馴染めないですね・・・。今後も音階については基本的に英語を中心に使いますので、この言い回しを覚えて頂きたいところ。

明暗と長短

これに限らず、音楽理論では「明るい」「暗い」をそれぞれ「メジャー(長)」「マイナー(短)」と呼ぶのが基本的な原則となっています。ですからこの言葉は、今後何度も登場することになります。メジャーは明るい、マイナーは暗い。これを心にとめておいてください。3

メジャーとマイナー

今回は、「全音」「半音」「メジャースケール」「マイナースケール」という、音楽理論の根本になる重要概念を紹介しました。次回はさらに、この「段差のメカニズム」を応用していくことになります。

この節のまとめ
  • 音階の根本的なサウンドイメージは、「中心音からの全・半の配列」によって確定します。
  • 「メジャースケール」と「マイナースケール」が、最もよく使われる音階です。
  • 「major=長=明るい」「minor=短=暗い」が音楽理論の共通の命名ルールです。

Continue