接続系理論 ❾ 王道進行と文化の差

音楽理論 接続系理論

§1 王道進行

さて、前回まででA~Eの各型の説明を終えました。最後は改めて、「王道進行」と呼ばれているコード進行たちを、接続系理論を交えながら紹介していきましょう。王道の進行というのは、複数の型が交じった多彩な進行が多いです。そのため、各系統を個別に説明していたこれまででは、紹介できていませんでした。ここへ来てようやくお出ましといった感じです!

J-Pop界の王道進行

何が「王道」と呼ばれるかは、実はジャンルによって異なります。ただ世間一般に「王道進行」といえば、それはJ-Popで王道を指します。ですからまずはJ-Popの定番から紹介します。

4-5-3-6

J-Popやアイドル音楽、アニメソングで極端に頻用されている、王道中の王道であるコード進行が、「4-5-3-6」です。

もう何度も紹介していますね。B¹・C¹・D¹を1つずつ使ったバランス型という話もしました。タメにタメてからトニックに落ち着く、「起承転結」を体現したコード進行です。

正直、ベタすぎて飽食気味のコードではあるのですが、ポップス界ではまだ現役です。もはやメロディに関係なく、コードだけで”聴かせる”ことができるくらいパワーのあるコード進行ですね。

カノンの進行

やや昔、90年代ごろのJ-Popで人気ナンバーワンだった進行が、「パッヘルベルのカノンのコード進行」です。クラシック作曲家パッヘルベルが「カノン」という曲で用いたことから、この名前がついています。

接続系を確認すると、A¹とC¹を交互に繰り返すような特徴的な動きになっていることが分かります。

これが大元の、パッヘルベルのカノンです。合唱曲なんかでもよく使われていますね。サイクルが8小節と微妙に長いため、コードをアレンジした派生形もたくさん存在します。

せっかくなので2000年代の曲から紹介。サビがカノン進行ですね。前半はカノンと全く同じですが、後半は「4-1-4-5」ではなく「4-3-2-5」とアレンジしています。

8個でワンセットという長さゆえに近年では敬遠されつつありますが、まだまだ現役といった感じです。

6-4-5-1

暗い曲調のJ-Popで王道と言われるのが、「6-4-5-1」の進行です。

B型の時に6-2-5-1のバリエーションとして紹介しました。特にバラードにぴったりで、数多くの名曲にこの進行が使われています。音源を聴いて、久石譲の「Summer」が思い浮かんだ人も少なくないのでは。有名なメインパートがこの進行を使っていますね。

J-Pop界では、以上の3つが一般に王道の進行と呼ばれます。これらを使った曲には、枚挙にいとまがありません。

ジャズの王道進行

一方ジャズで最大の定番といえば、最もクッキリしていて聴きやすい2-5-1の進行、「Two-Five-One」です。

4度上行のB型の動きには、「強進行」という名前がついているんでしたね。ほか、「1-6-2-5」もよく定番として数えられます。

いずれにせよ、変化量が大きく聴きやすいB型がジャズでは最も愛されています。

洋楽の王道進行

これが洋楽のポップスやロックとなると、また好みが変わってきます。洋楽の定番コード進行といえば、「1-5-6-4」です。

こちらもA¹・C¹・D¹をひとつずつでバランスが良い。カラッとした雰囲気が、主にアメリカで好まれているのだと思います。実際の曲だと、こんな感じ。

アメリカではかなり定番であるのに対して、日本ではこの進行はそこまで定番というほどではありませんね。
特に洋楽では、IVIの進行が日本よりも高頻度で使われている印象があります。だから、すごくザックリとした比較をすれば、こんな感じ。

邦楽風 6-4-5-1 1-5-6-3 4-5-1-6
洋楽風 6-4-1-5 1-5-6-4 4-1-5-6

IVIはキリスト教の聖歌の終わりに使われるそうで、それゆえ欧米人はこの進行に親しみを持っているのかもしれません。もちろんすごくザックリの傾向ですし、今後文化のクロスオーバーが進むにつれてこうした差異は減っていくでしょうけどね。