Skip to main content

4. ミクソリディア旋法の理論

では、また前回同様4つの分類でコードの用法をまとめますね。

共通コード

特性音で♭がついても影響されず、メジャーキーから変わらぬままのコードが、「共通コード」です。

共通コード

ミクソリディア旋法が、メジャーキーと共有しているコードは、この4つです。圧倒的に多用するのがもちろんI、ついでIVです。

一方、IImVImは実際のところあまり使われない印象です。理由はいくつかあって、まず「大胆で明るい」というミクソリディア旋法のキャラクターに、このマイナーコードがイマイチ合わない。それからVImについては、ルートのラと特性音のシとが強い濁りを生み、絡みがあまりよくないという事情もあります。

特性コード

ミクソリディア旋法の特性音は、フラットしたvii度。それを含み、実践利用できるものが「特性コード」でしたね。ミクソリディア旋法の特性コードは、2つあります。

特性コード

どちらもよく使いますが、勝手がいいのは♭VIIの方ですね。もうミクソリディア旋法の曲は、I♭VIIをリピートするだけで全然成立します。
変にシャレたコードを使っても、ミクソリディア旋法の持ち味である「大胆不敵さ」が無くなっていくので、あまり余計なことはしない方がいいのです。

変性コード

特性音によって使いづらくなってしまったコードを、「変性コード」と呼ぶのでした。ミクソリディア旋法には、変性コードがひとつあります。

変性コード

こちらですね。この不安定な和音は、せっかくの「大胆で明朗」なミクソリディアの雰囲気を大きく損ねることになりますから、まあ使われているのは見たことがありません。

補助コード

さらに臨時記号を用いて、彩りをプラスする存在が「補助コード」。ミクソリディア旋法には、補助コードと呼べそうなものがふたつあります。

補助コード

Cマイナーキーの方から持ってくる、♭III♭VIのコードですね。ミクソリディア自体がシにフラットというパラレルマイナー系のサウンドをもたらす音階なので、こうした同様のパラレルマイナーコードを合わせることで自然に表現の幅を広げられます。

そんなわけで、I♭VIIが基本、お好みでIVVmを使う。これで十分すぎるというのが、ミクソリディア旋法の世界です。

ポップ/ロックのコントロール

先述のとおり、よっぽどFキーっぽい作りをしない限りは、Cミクソリディア旋法の楽曲がF音にトーナルセンターを奪われることはまあありません。「CメジャーとCマイナーの中間くらいなんだなぁ」という認識を持ってメロディメイクをすれば、大丈夫でしょう。
ただ、ミクソリディアの構成音のうちどこを多く使い、どんなラインを使うかによって、「奇妙な明るさ」なのか「ロック風の力強さ」なのかの印象が結構変わります。

メロディ構成

すでにお分かりのとおり、マイナースケールとの共通音である「ファ・ソ・シ・ド」などを使うと、より短調らしくなり、それが力強さへと繋がっていきます。

こちらディープパープルという有名なロックバンドの代表曲ですが、全体的にミクソリディア旋法が使用されています。Aメロでは「ソ・シ・ド」を中心に動き、「ミ」が全く登場しないので、事実上メジャーとマイナーの中間のような、まさにパワーコード的かっこよさを生み出しています。

一方で上譜右側の「シ・ド・レ・ミ」というラインはかなり特徴的で、すべて全音差になっていますが、これが「異常な明るさ」を生み出す要因になるのです。メジャースケールの場合、全音差が3連続するのは、ファ〜シの区間ですが、両端のファとシが強傾性音で外に引っ張られていくため、この4音を中心にしてラインを構成するのはまあ珍しい出来事です。

メジャースケールの場合

特にIの和音上では困難。それゆえメジャースケールの音楽ではこの「3連続全音」が目立った立ち回りをすることはほとんどありませんでした。

しかしミクソリディア旋法の場合、「シ・ド・レ・ミ」は実にバランスの良いメンバーとして機能します。両端のふたりも、シ♭は中心音であるドへの上行は自然な「終止」として感じられるし、ミは弱傾性音(そのうえ明るさを象徴する音でもある)ですから、この4人を使ったIのコード上でのメロディメイクは、ミクソリディア旋法ではスタンダードな構成です。

ミクソリディア旋法の場合

この「連続全音」が前面に現れてくると、「聞き慣れない奇妙なポップ感」へと繋がってきます。たとえば「シ→ド→ミ」なんていうフレーズは、「シ→ドの明朗な全音差」「シ-ミの奇妙な増4度」「ミの明るさ」など、ミクソリディア旋法のキャラクターが詰まったラインですね。

こちらはテクノ界の帝王クラフトワークの楽曲。「シ→ド→ミ→ファ→ミ」というフレーズが中心になっています。「ポップな方のミクソリディア旋法」が全開で演出された結果、かなり奇妙なサウンドに仕上がっています。

この「ロック系ミクソリディア」と「ポップ系ミクソリディア」の節回しの違いを注意すれば、「ロック風の大胆なメロディを作ろうとしたはずが、なんか不思議なポップ風になってしまった・・・」などという事態は避けられます。

教会旋法は、曲全体に使ってもよし、特定パートにだけ使うのもよし。民族調のドリア旋法と、明るさ・大胆さのミクソリディア旋法。この2つを選択肢に加えることで、曲作りの幅はさらに広がっていくでしょう。

今回のまとめ

  • ドリア旋法と同様に、ポピュラー音楽との親和性の高いのが「ミクソリディア旋法」です。
  • ミクソリディアは、長音階の第vii音を半音下げたもので、力強さや明朗さをもたらします。
  • ミクソリディアはメジャーとマイナーの狭間にあるような音階で、第iii音の使用頻度が明るさに大きく影響します。
Continue

1 2