ブルーノート

メロディ編 Ⅲ章:音階の探究
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今回は「メロディラインの技法を知る」回です。

これまではずっと「メジャースケール」での作曲が基本でしたが、そこから少し外れることで新しいサウンドを得ることができます。ここでは非常に基本的な知識である「ブルーノート」を紹介します。理論的にそこまで難しいわけではなく、自然に歌の中に導入することができるので、ポップスやロックでは役に立つ知識です。


さて、III章のはじめは、♯や♭がメロディに登場するパターンを紹介していきます。そういったメロディは、電子音楽やシンプルなロック等で使われることはあまり多くなく、よりメロディアスなジャンルであるほど、そうした知識の重要性が増していきます。ですから、シンプル系のジャンルの方は、II章の後半の方が重要度が高いです。前半は軽く読み飛ばすというのも、アリですよ。

今回は、ブルースやジャズといったジャンルでよく使われる音階について見ていきます。

#1.明るさと暗さの混合

「ノート」は英語で「音符」を意味する言葉。「ブルーノート」は、簡単に言えばブルースやジャズ独特の雰囲気を象徴する、”ブルーな雰囲気”の独特なメロディラインを指す言葉です。

もう少し詳しくいうと、明るい音階の中に突如として暗い音を混ぜ込んでしまうのです。

Cブルーノートスケール

こちらは、Cメジャースケールに「ブルーノート」を加えた例。ミ・ソ・シの3つが、一般にブルーノートと呼ばれます。1 「混ぜ込む」って言われても、どんなものだか想像がつかないですよね、実際どんな風なのかというのを音源でお聴き頂きたいと思います。

楽譜

こんな感じ! 4小節目頭のメロディが、なんだか「ブルージー」とか「ジャジー」とかいった形容詞が合いそうな風になっているのがわかると思います。
ポイントは、コード全体が暗くなるのではなく、普段どおりのコードの中で、メロディだけにちょこっとフラットがつくところです。楽譜で詳しく見ていきましょう。

4小節頭に注目。そこまではただの「ミ」だったところが、「ミ♭」に変わっています。これは本来あるべき高さに上がりきらず、理論的にはCマイナーキーに近くなっているということです。それが、独特の哀愁を生み出しているんですね。この”突然変異的に入ってくるフラット音”が、「ブルーノート」です。

ブルーノートは、あまりやり過ぎてしまうとただの転調になってしまいます。あくまでも本来の調性を保ったまま、メロディラインだけ少し憂いを帯びるというのが大事。

フラットがついたことにより、ブルーノートはみな下方への強い傾性を持ちます。ですから、「ミ♭」は「レ」へ、「シ♭」は「ラ」へ・・・と半音進行することでなめらかなメロディラインを作るのが基本です。

解決法

「ソ♭」は、ポピュラー音楽で見かけることは稀ですね。「ミ♭」が圧倒的に使いやすく、使用例も多いです。

#2.ブルーノートの実例

ブルーノートはよく、西洋の音楽理論では説明のつかない音と称されます。伴奏が普通に「ミ」を弾いているのにも関わらず、歌唱がブルーノートで「ミ♭」を歌ったりするわけですからね。だから、ブルーノートはフィーリングが大事。実際には、クッキリとフラットせず、「ミ」と「ミ♭」の中間くらいになることもある。すごく、「歌心」に直結する部分でもあるのです。実例を聞いてみましょう。

「I’m sure・・・」のところです。ブルーノートは自然に聴こえますし、音高の差もほんの少しですから、ちょっと普通のメジャースケールとの違いは分かりにくいかもしれません。
この曲、Aメロの歌い出しはどこも全てブルーノートになっています。本来の音まで上がりきらないところに哀愁とカッコよさがあるわけです。

サビの「絶えず絶えず絶えず」のところで、珍しいシのブルーノートが発生しています。aikoはジャズっぽさのあるアーティストですが、その理由のひとつにこのブルーノートの使用があります。

曲全体に渡り、かなり多くのブルーノートが使われています。最も分かりやすいのが、1:40からの「Beautiful」を連呼しているところ。ずーっと、「ミ→レ→ド」というラインになっています。この妙に気だるい感じ、明るすぎない感じの背景には、ブルーノートの効果があるわけです。

#3.もっと大胆に使う

そんなわけで、メジャーキーの中にマイナーの香りをもたらすのがブルーノート。逆に考えて、マイナーキーの中にナチュラルの「ミ」や「シ」を突っ込んでも、同じように「ジャズっぽさ」が出ます。
その手法でブルーノートを活用した名曲の例といえば、やっぱりキング・クリムゾンの「21st Century Schizoid Man」でしょう!

クリムゾンキングの宮殿

非常にかっこいい。この混沌とした雰囲気は、もちろんテンポだとか演奏とかも要因としてありますが、なんといってもブルーノートのフレーズが醸し出すものです。
この曲は全体を通してCマイナーキーが中心の曲ですが、このパートではミとシにナチュラルがよく交ざります。それにより、「単なる短調」ではなく「ジャズっぽい短調」へと変貌を遂げているのです。

楽譜

ミ・シがナチュラルになっている点がポイント。暗いと思ったら明るくなり、明るいかと思ったら暗くなる。その長短の曖昧さが、混沌さに直結しているわけです。こういうメジャーかマイナーかハッキリしないという状態は、クラシック的・ポップ的な考えではあまり出てこないものですから、こういったジャンルを作るときにブルーノートは最適なのです。

総括
  • 普段どおりのコードの中で、メロディだけが突如半音下がったものを、「ブルーノート」と言います。
  • 下がる音程はミ・ソ・シで、ミの♭がもっとも導入しやすいです。
  • 本来行くはずの音程に上がりきらないこと、コードと不協和を生むことが、独特な哀愁をもたらします。

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