3rdシェルの用法

メロディ編 Ⅱ章:旋律と和音

今回は、概論で「エース的存在」と説明した3rdシェルの紹介です。

#1.3rdシェルの特質

3rdは和音の長短を決定づける音であり、和音の響き、カラー、テクスチャを司る存在です。したがってこの音をメロディとして用いた場合には、コードの明るい・暗いといったサウンドを強く増幅させることになります

3rdのサウンドは本当に優秀で、延々と続けても全く単調に感じることはなく、ずっと心地よく聴いていられます。

おなじみカノンの進行
6-5-4-3-2-1と降りていく定番の進行
4-5-3-6の王道進行

メロディはずっと3rdシェルを中心に構成しています。どれにしても、どこかで聴いたことのあるようなメロディじゃないでしょうか? それくらい、3rdシェル中心のメロディラインは定番、鉄板なのです。一応念のため、Rootシェルにしてみた場合もチェックしておきますね。

おなじみカノンの進行+Rootシェル

やっぱりストレート・素朴すぎて、この場合はずいぶん子供っぽく感じられてしまいます。童謡ならいいけれど、ポップスのメロとしてはダサい。聴き比べると、3rdが持っている情緒とポピュラー音楽との親和性の高さが伺えます。

#2.3rdシェルの実例

そんな使い勝手の良い3rdシェルですから、その実例には枚挙にいとまがない。分かりやすいものをいくつかピックアップしてみます・・・。

サラバ、愛しき悲しみたちよ / ももいろクローバーZ

サビのメロディがほとんどずっと3度を中心に作られています。

楽譜「サラバ、愛しき悲しみたちよ」 サビのメロディ

上楽譜はサビ部分のメロディとベースを抜き出したものですが、赤マルでつないだセットが3度の関係です。ここまで統一感のある構成になっていると、もはやクラシック古典派の領域ですね。速いテンポでピアノ弾きすると、モーツァルトみたいです。

こんな風にね。ちなみに、サビ終わりの「始まったばかりだ」のところは、四抜きの旋律でかなり「モーダル」な雰囲気になっていますから、そのコントラストも非常に印象的です。

Coldplay – Magic

イントロに注目。シンプルに単音のフレーズを奏でるギターですが、実はベースとぴったり3度の関係を保っています。静けさを演出したい意図があるのでしょう、そういうときに余計な動きは逆に邪魔なのです。印象的なシンコペーションのリズムがあるので、音楽的にも退屈しません。

旅立ちの日に(合唱曲)

間奏の中でおよそ15個のコードが進行しますが、なんとそのうちの13個は頭が3rdシェルです。この思わず涙を誘うような豊かな情感は、3rdシェルがもたらしているものなのです。この曲は、サビにおいても非常に高い割合で3rdシェルが使われています。感動するメロディには、絶対に理論的な理由がある。調性引力論は、それを明らかにするのです。

EDMと3rdシェル

昨今のダンスミュージックでは、この3rdの持つ豊かな響きをフルに活かして、ベースとリードを3度差で動かし続けるような曲もあります。先ほどの「Magic」のようなパターンもその一例。

I Want You To Know – Zedd

フルバージョンはこちら。0:08~のメインパートで、シンセリードとベースがほとんど3度で平行に移動し、3rdシェルがキープされています。コードのカラーが強く出されると魅力的に聞こえるというのは、EDMでも同じなのです。

Where Are Ü Now

Skrillex and Diploにフィーチャリング・ジャスティン・ビーバーという豪華な一曲。1:09からドロップが始まり、しばらくベースライン単体のみのパートが続きます。その後1:37で倍テン4つ打ちになるところから、リードベースとサブベースが別動しだすのですが、そこでは大部分が3rdシェルで動きます。手前が単調なRootシェルだからこそ、ここでの3rdのカラーはよく活きています。

もっと極端にずっと3度だけで作ると下のような感じ。


こんな感じの作りの曲、ダンス系を聞く人であれば耳にしたことがあると思います。こうやってベースとリードを重ねて平行に動かすときには、ルートや5thではなく3rdを使うのが定番なんですよ。
考えてみれば、歌のハモリだって3度差が定番なんですから、ベースとリードが3度で重なるのは当然と言えば当然ですね。

3rdの音程は、とにかく美しいラインが作りやすいです。Zeddの例のように、メロディに限らずバックの伴奏でこっそり重ねても響きが豊かになって良いです。

ジブリ音楽と3rdシェル

ところで、先ほど2個目のVImから降りていくやつ、なんとなくジブリの音楽っぽいと思いませんでしたか?

6-5-4-3-2-1と降りていく定番の進行

実は久石譲さんの音楽も御多分にもれず、3rdシェルがエースとして大活躍しています。

こちら、3rdのパワーで押し通した典型例です。「あの地平線輝くのはどこかに君を」までの一連の流れで、ずっとコードの変わり目はかならず3rdでメロディを乗せています。この強烈な哀愁は、3rdの力なのである。

ジブリシリーズではこの3rdと暗いコード進行は定番で、「コクリコ坂から」の「さよならの夏」や、「魔女の宅急便」の「海の見える街」、それから「千と千尋の神隠し」の「あの夏へ」でも似たような構成が見られます。


こちら、「君を乗せて」と似ているなあと感じる人も多いはず。それは、コード進行が似ているだけでなく、シェルの構成が似ているのも要因のひとつなのです。
また2018年の映画「羊と鋼の森」のメインテーマも全く同じようなコード進行に同じようなシェル編成で作られていて、ちょっとココまで来ると、ワンパターンでやりすぎじゃないかという気もしますね😥

しかしまさにエース級の活躍。これが3rdシェルの力です。

3rdシェルの弱点

そんなわけで、幾らでも使えて曲想がドンドン豊かになっていく3rdシェル、これといった欠点は無いのですが、強いて言えば情緒が強くなりすぎる危険があるくらいでしょう。カラッと明るい曲や元気な曲では、適度に5thシェルなどを交えた方が良い。それからIの和音上では、3rdだと安定感がなく、パート終わりのシメには使いづらいです。ただまあそれらを差し引いても、最も使いやすいシェルであることは間違いありません。

総括
  • コードの長短を決定する3rdは、その明るい/暗いのカラーを強化し、情感を強める機能があります。
  • Rootシェルと違い、どれほど連続で繰り返しても退屈になることがなく、極めて使いやすいシェルです。
  • ただしストレートさには欠けるので、曲調によっては使いすぎが好まれない可能性もあります。

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