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音楽理論とは何か

By 2021.12.02序論

1 音楽理論は必要か?

序論の始まりとなるこの記事では、まず音楽理論がどんなものであるかの全体像を掴もうと思います。

そもそも、まだ音楽理論というものに対し疑問や疑念を抱いたままここに来たという人もいるはずです。

作曲するのに、音楽理論って必要なのでしょうか?

でも、これは答えの出ない質問です。なぜなら、音楽理論といってもその内容は実にさまざまであるからです。そこには「ドレミファソラシド」という言葉も含まれるし、オーケストラの編曲法だって含まれる。それらを全部ひとまとめにして「音楽理論は必要か否か?」なんていうのは、そもそもマトモな議題になっていないわけです。

たとえば「数学って必要ですか?」と訊かれても、それが「中高で習う数学の知識」なのか「パーセントや時間の計算なども含めた全ての知識」なのかでは、まるで返答が変わりますよね。

数学の場合

だからこの序論ですることは、そのような漠然とした問いに無理やり答えを出すことではありません。「音楽理論」がどんな存在であるかをあなたに知ってもらい、音楽理論が今のあなたに“役立つ”のかどうか、また“どこから”学ぶのか、そして“どれくらい”まで学ぶのがいいのかを判断する材料にしてもらいます。

2 分野を切り分ける

「理論」とは端的に言えば、知恵や知識を綺麗にまとめたもの。だから「音楽理論」は、音楽を作る・弾く・分析するときに役立つ知識の集合体のようなものです。

ただそうなると必然的にその“知識”の中には、「音楽をする」という根幹からはやや離れた文化的知識や理数的知識なども入ってきます。だからまず最初に、そういった知識分野の切り分け・棲み分けを簡単にしておきたいと思います。

世にある音楽理論コンテンツに含まれる周辺的な知識は、大きなところで3つあります。

記譜法
音響学
音楽史

記譜法」は、音楽の授業でも習ったような楽譜の読み方の知識です。特に「楽典」というタイトルを冠するコンテンツには、基本的にこの記譜法の知識が含まれます。記譜法をどこまで学習すべきかは当然ながら個人差があり、特に昨今のDTMでピアノロール作曲しかしないという人にとって、このエリアの優先度は決して高くありません。

音響学」は、周波数だとか音色の仕組みだとかいった、どちらかというと理科の授業で習うような類の知識です。音楽理論書の中にも、そういう知識をいくらか紹介するタイプのものがあります。音響学は音楽のより原理に近い部分を知ることができますが、内容が難解だったり、実践に直結しない部分も多くあります。

音楽史」は、ジャンルや楽器の歴史です。これも音楽の授業で少しやりますね。音楽史を大きく扱う理論書は珍しいと思いますが、ちょこちょこと「この技法はこの時代に生まれた」といった形で歴史の知識がくっついて来たりします。

こうした周辺知識はあくまで必要と興味に応じて学ぶ“サイドメニュー”的な存在として理解すると、コンテンツ選びの際のひとつの指針になるかと思います。

音楽理論の3つのレイヤー

ではそういった周辺分野はさておき、音楽理論のメインパートはどんな知識で成り立っているのでしょうか。ここではざっくりと3つのレイヤーに知識をカテゴライズすることで、イメージを共有したいと思います。それが以下の3つです。

三段階

音の名前、音の用法、音楽の様式。ひとつずつ、詳しく見てみましょう。

音の名前

「ドレミファソラシド」もそうですし、あるいは「Cマイナー」や「G7」のようなコード(=和音、音を同時に複数鳴らしたもの)と呼ばれるモノも、きっとあなたは既にどこかで見かけて、それでこのサイトへ赴いたのではないでしょうか。それはみんな「音の名前」です。まず名前をつけないことには、理論が組み立てられませんからね。「拍子」や「メロ・サビ」「転調」といった用語も、みんなこの「名前レイヤー」の知識になります。

名前レイヤー

音に関する語彙は、とても重要です。これは絵画で言うなら「色の名前」のようなもので、たしかに名前を知らなくても絵は描けますけど、絵の理論を説明するとなったときに、色の名前がないとさすがに大変です。「名前」は、理論を構成する根本のパーツになるわけです。

例えばコードの名前をたくさん習得すれば、「コード譜を元に曲を演奏する」というのができるようになりますね。

音の用法

一方で名前を知っただけでは、その音が音響としてどんな効果を秘めているのかは分かりません。「このワザはサビの後半で使うと効果的だ」とか、「哀愁を出したい時にはこのワザが使える」とか、そういう実際の用法に関する知識が、2つ目の「用法」レイヤーです。

用法
「用法」レイヤーは、音楽の展開や曲想作りに関するベーシックなアイデアの“引き出し”となります。特に人に曲を提供する、いわゆる「職業作曲家」にとっては武器になるものですね。

音楽の様式

たとえばとある民族風の曲を作りたいとき、ただ楽器をその民族のものにしても、中身がJ-Popだったらそれはどうにも、中途半端にしかなりえません。あるジャンルの様式やアーティストの特徴を決定づけている要素が必ずあって、それを説明することも音楽理論の役割のひとつです。

様式があるのは、クラシックもジャズも、ロック音楽もダンス音楽も同じ。さらに言えば、アーティスト毎の特徴だって、音楽理論を元にかなり解析することが可能です。

様式

音の「用法」を、より大きな次元で論じたものが「様式」であると言えます。

この「様式」に関しては、関係ないジャンルの様式を知ったところでさほど役に立たないと言っていいでしょう。例えばクラシック様式に基づく理論で「こうしないとダメ!」という決まりごとがあったとしても、他のジャンルではそれが破られているということはザラにあります。

名前レイヤーの厚み

理論学習の挫折を招く最大の要素は、きっと「名前レイヤー」でしょう。これは、外国語をマスターしようとした時に単語の多さに絶望するのと似ています。

例えばの話ですが、「名前」を抜きにしてしまえば、コード理論の基礎なんかはかなりコンパクトにまとめてしまえます。

コード進行づくりの基本

こちらペラ紙1枚ですが、これでもう「コード編 I章」のおおよその内容はまとまっています(案外、あなたのちょうど知りたかった知識が載っているかもしれません)。

音楽理論が説明する内容自体は決して難しくないものです。でも実際にはドンドン用語が登場して、しかもその用語を駆使して解説していくため、まるで外国語のように難解に聞こえるわけです。もしも上の内容を実際の用語を使って説明すると……

コード理論の初歩

急にカタカナ語や記号が増えて暗号のようになりました。人々が理論に抱く「ウッ・・・難しそう・・・」という印象は、名前レイヤーから来るものだと言えます。

だからこの辺りは気持ちの持ちようも大事で、記憶・記録・コミュニケーションにあたって「名前」は重要ですが、作曲実践においては「用法」が分かれば十分です。「名前・用法・様式」のうちどの部分が自分にとって重要なのかを認識し、ことによっては多少暗記をサボるところがあってもよいでしょう。

このサイトでも語彙は紹介することになりますが、暗記のタイミングをできるだけ分散し、加えてヘルプ機能で補佐することで負担を減らしていきます。

3 ルールの存在について

さて音楽理論は、音に「名前」をつけたり、効果的な「用法」や音楽の「様式」を教えてくれる存在。しかし一般に音楽理論といったら、たくさんのルールがあって、それを知らなければならない。そういうイメージはないでしょうか? 実はここに少し、実情との食い違いがあるんですね。

だからこの段階できちんと断言しますが、やっぱり音楽にルールなんてありません。まず現実世界ありきで、そこから理論が生み出されるのですから、理論が現実を否定することなどありえない話です。それは経済学が現実の経済を支配しないように、英文法が現実の英語を支配しないように、すごく当たり前のことです。

でも実際に一部の音楽理論書の中ではルールめいた記述が登場します。じゃあ一体それはいつ、誰が、何のために作ったルールなのか? よく分からないものに「正しい音楽」を定義されるなんて、まっぴらだ。そう思いませんか?

いつ、どこの誰が、何のために

だからまずは一度、音楽理論の“生まれ・育ち”をかんたんに辿る「歴史探訪の旅」に出発したいと思います。きっと理論に対する見る目が変わると思うので、ついてきてくださいね。

タイムマシン
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