音楽理論とは何か

音楽理論 序論
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#1 音楽理論は必要か?

そもそも多くの人は、疑念を持ちながらここへ来ているはずです。

作曲するのに、音楽理論って必要なのでしょうか?

でも、これは答えの出ない質問です。なぜか? 音楽理論と言っても、その内容は実にさまざまであるからです。「音楽理論」という言葉が指す領域には、「ドレミファソラシド」という言葉も含まれるし、オーケストラの編曲法だって含まれる。それらを全部ひとまとめにして、「音楽理論は必要か否か?」なんていうのは、質問として成立していないのです。

だから、この序論ですることは、無理やり答えを出すことではありません。私たちが何気なく使っている「音楽理論」という言葉、その中身がいったいどんなモノなのかを貴方に知ってもらいます。音楽理論が、“今の貴方にとって”必要なのかどうかを、自分自身で判断できるように。

むしろ、これをせずに本編へサッサと進んでしまうなんてあり得ない。だって、音楽理論が何なのかを知らずに音楽理論を学び始めるなんて、意味が分からないじゃないですか。当然、音楽理論を知らない人でも中身が分かるように、噛み砕いて話を進めていきます。

良いところも悪いところも

しかし先ほどの質問に対し、ほとんど全ての音楽理論コンテンツでは、なんだかんだで音楽理論は「必要」という方向に持っていく話しか聞きませんよね。それは言うまでもなく、セールストークに過ぎません。つまり、悪いところは一切話さず、良いところだけを話して巧みに誘い込もうとしているのだ。

強気の発言

これを聞いて、「そっかぁぜんぶ誤解なのかあ。安心した」と、納得する人がいるわけありませんよね。これでは学ぶ側モヤモヤを抱えたまま勉強を始めることになってしまいます。それではダメだ。
だからこの序論の記事群では、音楽理論に対する賛成意見と反対意見の両方を述べます。良くない点については、きちんと良くないと言います。中立的立場から音楽理論を問い詰めることで、きちんと学ぶ側の疑念と向き合うのです。

ですので、なんと序論だけで6つも記事があります。音楽理論とは何なのか、その成り立ち、悪いところ、良いところ。全部を述べますので、長くなるのは仕方ない。短めの本を読むようなつもりで、少しずつ読み進めてください。

#2 全貌を把握する

まず、世にある様々な音楽理論のコンテンツを手に取ると、そこには本来の音楽理論の領域からちょっと外れた内容も一緒にパッケージされていることもあります。最初にそのあたりを明確にしておきましょう。

音楽理論とその周辺分野は、基本的なところで4つ存在します。

記譜法
音楽史

音響学
音楽理論

こんな感じ。言われてみれば確かに、って感じですよね。まずは頭の中でこの4つを明確に切り分けてください。

例えばあなたがDTMでピアノロール主体の作曲をするなら、楽譜関連の知識はあまり重要ではない。あるいは科学的部分にさして興味がないのであれば、「音響学」なんて全く学ぶ必要はありません。だって、その難しい音響学を分かりやすく使いやすい形にしたのが「音楽理論」なんですからね。

じっさい、音楽理論書とひとくちに言っても、記譜法や音響学に比重の置かれたものもあり、何だか実践に使えない知識ばっかりたくさん並んでるな、なんてこともあります。4つの中で、作曲能力に直結するのは「音楽理論」のみ。それをまず覚えておいて頂きたいです。

音楽理論の中の分類

そして「音楽理論」にしても、またその中でレベルが様々あります。
たとえば「数学って必要?」と訊かれても、それが「中高で習う数学の知識」なのか「円や三角形という概念そのもの、%や時間の計算なども含めた、数学が扱う領域全て」なのかでは、まるで返答が変わりますよね。

数学の場合

音楽理論も同じです。さっきも言いましたが、簡単なものから難しいものまで、音楽理論の世界は広い。

ではまず、「音楽理論」という言葉が含む内容にはどんなものがあるのか? その中身をチラっと覗いてみましょう。もちろん、知識がほとんどない現段階では大雑把な話しかできませんけど、出来る範囲でうまく説明していきます。

3つのレイヤー

音楽理論の知識は、3つのレイヤーに大別してあげるのが現段階では最も分かりやすいかと思います。それが、以下のとおり。

三段階

音の名前、音の用法、音楽の様式。ひとつずつ、詳しく見てみましょう。

音の名前

「ドレミファソラシド」もそうですし、あるいは「Cマイナー」や「G7」のような“コード”というモノの名前も、きっとあなたは既にどこかで見かけて、それでこのサイトへ赴いたのではないでしょうか。それはみんな「音の名前」です。まず名前をつけないことには、理論が組み立てられませんからね。「3拍子」「4拍子」や「メロ・サビ」「転調」といった言葉も、みんなこの「名前レイヤー」の知識になります。

名前レイヤー

音に関する語彙は、とても重要です。音楽を作るのにコードの名前を知らないというのは、言ってみれば絵を描くのに色の名前を知らないのと同じこと。たしかに名前を知らなくても絵は描けますけど、でもすごく不便ですよね。何もかもが不便だ。「音の名前」は、理論を構成する根本のパーツになるわけです。

目に見えない音の現象に片っ端から名前をつけていくわけなので、ここのボリュームはなかなか多い。それが、多くの人の挫折を招いている大きな原因のひとつでもあります。

音の用法

名前を知っただけでは、その音が実際どんな効果を秘めているのかは分かりませんね。
たとえばギターを弾く人は「コードの名前と弾き方」までは知っていますが、「それが楽曲の中でどんな役割を持ったコードなのか?」というところまでは、音楽理論がなければボンヤリとしか見えません。
「このコードはサビ前に挿し込むと活きるコードだ」とか、そういう実際の用法に関する知識がこのレイヤーに該当します。

用法
「用法」を知れば、曲にきちんとふさわしい曲想を与えることが出来るようになるでしょう。特に人に曲を提供する、いわゆる「職業作曲家」にとっては武器になるものですね。
音楽の様式

「この音階を基本に使う」とか「このコード進行は使わない」とか、あるジャンルの様式やアーティストの特徴を決定づけている要素がこのレイヤーに該当します。
たとえばとある民族風の曲を作りたいとき、ただ楽器をその民族のものにしても、中身がJ-Popだったらそれはどうにも、中途半端にしかなりえません。楽器だけじゃなく、曲の構成や特徴的な音使いを勉強しなくてはならない。それもやっぱり、音楽理論のひとつですよね。
様式があるのは、クラシックもジャズも、ロック音楽もダンス音楽も同じ。さらに言えば、アーティスト毎の特徴だって、音楽理論を元にかなり解析することが可能です。

様式

広い意味で言えばこれも「音の用法」ですが、「用法レイヤー」が豆知識的な”小さな理論”であるのに対し、こちらは楽曲全体を統制し、構築する”大きな理論”であるという点で異なると考え、段階を分けました。
この「様式」に関しては、興味ないジャンルの様式を知ったところで、ほとんど無駄になると言っていいでしょう。例えばクラシックの様式に基づく理論で「こうしないとダメ!」という決まりごとがあったとしても、他のジャンルではそれが破られているということはザラにあります。

ざっくり「音楽理論」という言葉でまとめられていたものの中には、大まかにいって「4つの分野」と「3つのレイヤー」があって、それぞれ知識の普遍性は異なる。特に「様式レイヤー」はジャンルによって大きく異なる。それをまず知っておいてください。

#3 ルールの存在について

さて、「音楽理論」の内部カテゴリーを3つに分けることで、全体像がさらに見えてきたのではないでしょうか?ひとつ先の話題へ進んでいきましょう。

音楽理論を学ぶか学ばないか決めるうえでとても重要な、「ルール」の話です。一般的な音楽理論といえば、たくさんのルールがあって、それを知らなければならない。そういうイメージがあると思います。でも、ここまでの内容を振り返ってみると、これといって「ルール」という感じではないんですよね。むしろ「コツ」や「データ」に近い。だから、ここにちょっと、何か食い違いがあるのです。

ルールなんてない

ここできちんと断言しなければならないのですが、やっぱり音楽にルールなんてないのです。だって「理論」とは、事実を後から分析してまとめるものだからだ。「理論」は後付けが当たり前で、むしろそうじゃなきゃダメです。

それは経済学が現実の経済を支配しないように、英文法が現実の英語を支配しないように、あまりにも当たり前の話。

バカ

こんな滑稽な話はない。でも音楽理論の世界では、なぜか「ルール」があるのが当たり前です。「この音楽は理論的に間違っている」という表現をよく聞きます。そのルールを知らなければ、正しい音楽を作ることが出来ないのだと人は言う。

じゃあそれは一体いつ、何のために、どんな人たちが作ったルールなのか?

「よく分からないもの」に「正しい音楽」を定義されるなんて、まっぴらだ。そう思いませんか? 音楽理論が自分にとって「本当の正義」であるかどうかを見定めるには、その「生まれ」をある程度知る必要があります。

だからココからはしばらく、音楽理論が生まれたときまで遡って、その歴史をかんたんに辿る、「歴史探訪の旅」に出発したいと思います。

音楽史から始める

歴史の勉強なんてやだなと思うかもしれませんが、これは本当に重要なことです。世間に数多いる、音楽理論の「ルール」に縛られて窮屈な思いをしている人たちは、その成り立ちと歴史を知らずに理論を学ぶから、理論を盲信する結果に陥っているのです

本当は、最初に知っておくべきです。音楽理論は、そんな神のような存在ではないということを。そんなに長話をするつもりはありませんから、ついてきてくださいね。

タイムマシン

歴史探訪に出発する