目次
4. sus4や6thコード
またsus4や6thコードのような臨時記号を伴わないコードであれば、現在の7つのモードで対応できる部分もあります。
こちら、FメジャーキーでV7sus4を使った時に現れる、C7sus4。sus4というのはけっきょく、「3rdを避けて4thを強調することで緊張感を吊り上げる」という技術であって、スケールのメンバーは全く変わっていないんですよね。
それゆえモードの名前は「Mixolydian」のまま、3rdをアヴォイドに、4thをコードトーンにという具合に内部情報だけ書き換えて済ませるという形をとっています1。
こちらはCメジャーキーでC6を使った場合。やはりモード名は「Ionian」のまま、6thをCTに、7thをTensionに書き換えます(コードトーンでもアヴォイドでもないものはテンションに分類されるため、「7thがテンション」という不思議な説明になります)。
「コードスケールとは、テンションやアヴォイドの情報も含めたコードとスケールのパッケージである」というコンセプトからすると、対応コードやアヴォイドが異なるにも関わらず同じモード名で済ませているのは、厳密に考えるとシステム上の“穴”と言えそうですが、まあかなり微細な部分であるため、変にモード名を増やさないでおこうという配慮とも言えます。ちょっとこの辺りは、ゆるく済ませている部分ではありますね。
5. その他のパターン
たとえ臨時記号を伴うコードであっても、たまたま7つのモードのどれかで対応できる場合もあります。たとえば、IIIm9。
9thを乗せるとファがシャープになりますが、いい感じの大人っぽさの演出として、特に転調を感じさせることもなく使えるという話でした。このモードはいったい何になるか、考えてみてください。
マイナーセブンスコードと対応するモード・・・♭6の強烈な不協和・・・そして長9度・・・
そう、これはAeolian Modeですね。
「ファだけにシャープがついているから、Gメジャーキーのモードのどこかに見つかるはず」なんていう風に探すのも、アリといえばアリ。ただし、キーの束縛から解放されるためにコードスケール理論があるのですから、「ファにシャープなんだから・・・」という探し方は、全く本質的ではありません。コードクオリティと、2・4・6度の質感からスッとモード名が出てくることが望ましいです。
たとえばフリジアンは「主音の半音上に寄り添う重苦しい♭2」が特徴、エオリアンは「♭6の強い不協和」が特徴、ドリアンは「♮6の浮き上がった質感」が特徴です。ようは教会旋法の際に学んだキャラクター・ノート(特性音)や、アヴォイドノートを印象付けて覚えていくということですね。
モードと「ディグリー感」の関係性
そうすると、この際のIIIm9は「Gメジャーキーの第VIモード」で演奏するわけですが、だからといってこの演奏中に「Gメジャーに転調したように感じられる」とか、「VIのトニックぽさを感じる」とかいうことはないですよね。
先ほどは「IImを司るDorian」とか、「Vを司るMixolydian」とか言ったものの、そういった「モードのディグリー感」は音の配列が“なんとなくそれを想起させる”に過ぎず、さほど強力なものでもありません。
ドリアンモードの演奏を聴いた際に、確かに我々は第一に聴き慣れた「IImのサブドミナント感」を想起します。しかしそのまま延々とドリアンが続けば、次第にそれは「ドリア旋法一発の曲」という認識に書き換えられ、「サブドミナント感」は消失していきますよね。
モードが圧倒的に結束しているのは「コードクオリティ」と「テンション」までであって、そこから生じる「ディグリー感」については、前後関係や編曲、サウンド等々によって大きく変動すると思っていてください。
augM7のコードスケール
最後におまけ。CΔの5thを半音あげると、augmented major seventhのコードが生まれます。当然手持ちの7つでは対応できませんが、今後の“予告”を兼ねてこのコードの対応スケールを紹介いたします。
それがこちら、「Ionian ♯5」です。「Ionian」が原型にあって、5thがシャープしたから、♯5。
こんな風にモードのネーミングというのは意外とシンプルで、“基本の7つのモードからの変化”に基づいて命名されるものがたくさんあります。だから7つの基本モードがしっかり頭に入っていれば、そこから先はそんなに難しくないのです。逆に言うと、7つの基本モードがあやふやなまま読み進めるとストレスがすごいということも意味します。だからこそここで、「慣れ」の回を用意したわけなんですね。コードをコードで終わらせるのではなく、スケールとセットにして情報を整理していく「コードスケール」の世界に、ちょっとずつ慣れてきたのでは?
特に「二次ドミナント」という名で一括りにしてきたコードも、2・4・6度の取り方は異なるという事実。こういう部分、これまでは感性で済ませてきたわけです。繰り返しになりますが、ポップスをやっている分には別にそれでもよい。教わらなくたって、III7上でドに率先してシャープをつける人なんていないでしょう。
しかし不定調性の即興演奏まで踏み込んだときには、こういうあらゆる“暗黙の了解”で曖昧に済ませていた部分、そのツケが回ってくるわけなのです。
コードスケールであらゆるコードをスケールに紐づけていく! コードスケール理論は、そういう壮大な野望のもと発展してきたのです。今回はまだモードが7つしかなかったので、コードに対してスケールをあてられない場面もありましたね。それを解消するために、メジャースケール以外の“親元”を探しにいくのが、次回以降の内容になります。
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