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今回は「新しいコードネームを知る」回です。
「セブンスコード」の時に、音を1つ加える四和音というモノを初めて体験しましたが、今回はその続きです。使い勝手の幅広いコードですので、応用次第でどのジャンルでも活躍します。
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1. 6thコード

今回は、「セブンスコードじゃない四和音」を見ていきます。7度があるなら当然、6度もある。それが「6thコード」です。
sixth /sɪksθ/ は日本人には発音しにくい単語ですね。アルファベットを額面通りに受け取って「シックススコード」という表記も見ますが、何だか冗長に見えます。正しい発音を聞くと日本人の耳では“s”と“th”はひとつに繋がって聞こえますから、カタカナで書くなら「シックスコード」の方が近いでしょう。

6thコード

重要な暗記ポイントとしては、一般に「シックスコード」といったら、それは第一義的に「長6度」を加えたコードを意味します。C6は「メジャーコード+長6度」、Cm6は「マイナーコード+長6度」ということになる。

もうひとつの6度である「短6度」を足した場合、それはIV章で扱うもうちょっとハイレベルなコードとなります。

2. サスペンド系としての6th

メロディ編II章のシェル論では、コードの中で奇数度となる音と偶数度となる音とではまず役割が大きく異なるという話でした。2・4・6度の音は濁りを生じます。

濁り

シックスコードは偶数系の度数ということで、そのキャラクターにはsus4やsus2に少しだけ通じるところがあります。その用法のひとつとして、普通のコードに対するサスペンド、展開を引っ張るような技として使うことができるのです。特にIVのコードでそうした使い方が考えられます。

解決
IIIm7IVVsus4V

こちらが以前やったsus4の使い方。ド→シという形で解決を作るんでしたね。

IIIm7IVV6V

そしてこれがシックスコードを使ったパターン! こちらはミ→レで解決を作る。全音での移動なので、sus4ほど明からさまな感じはせず、控えめなタメという感じになります。
このような使い方をする場合、解決先となるレを鳴らしてしまうとある意味“ネタバレ”になってしまうので、これを抜いてソ-シ-ミの3音編成にすることも十分考えられます。これに関しては、どれくらいのタメ感だとか、どれくらいの濁りを欲しているかによって調整します。

3. 濁り系としての6th

一方、特にサスペンド的な目的ではなく、7thのように音を濁らせる意味で使う場面もあります。

I6IΔ7I6IΔ7

こんな具合で、セブンスとはまた違った濁りをシックスコードは演出してくれます。

IV6は定番

シックスコードの中でも特に使いやすいのは、IV6です。妙な哀愁のようなものがあって、特にJ-Popやゆったりめのロックなどで相性がよい。

IV6VIm7IV6VIm7

こんな感じで、濁りが絶妙な陰となって哀愁を生みます。IVにおける6thはレの音になりますから、カーネル的に見ても浮遊感のあるぴったりな配役です。

こちらは実例。イントロでIVときて、そのあとIV6IVIと着地します。メインのエレキギターがクッキリと6thの音を鳴らしているので、その効果が分かりやすいと思います。ロック気の強いディストーションがかかったギターですが、6thが陰りを加えることで、「パワーコード」のようなガンガンパワフル感とは違ったメロウさを演出しています。

4. マイナーシックス

マイナーコードに長6度を加えた「マイナー・シックスコード」は、基調和音内だとIIm6が唯一臨時記号なしで作れて、他は臨時記号が発生します。IIImVImでは臨時記号が必要になるので使い勝手は低めです。

マイナー6th
IIm6VImIIm6VIm

こちらはIIm6の使用例。このコードはシの音が加わるということで、カーネル的にみて不安定な部分があります。ファとシを含んでいるということで、少しV7にキャラクターが似てくるところがある。そのため上例のように、後ろにトニック系のコードを置いてあげると、いい具合に不安定さをキャッチしてくれます(もちろんドミナント系を後続に置くことも可能です)。

枯れた味わいのようなものがあるので、昭和歌謡曲のようなテイストを出すときにはぴったりですし、ちょっと一風変わった味付けをIImに施したいという時に選択肢として上がってくるという感じです。

パラレルマイナーと合わせる

ほか、パラレルマイナーコードのIVmにレを乗っけて作るIVm6は非常に魅力的で、もっと哀愁が欲しい!というときに、トッピングのように6thを乗せてあげるとよいです。

IV6IVm6IIV6IVm6I

おなじみのIVIVmIに、6thの装飾を加えたもの。IVmが持つ哀愁、切なさがさらに引き立った感じがしますよね。

5. 「転回形」との類似性

すでに気づいたかもしれませんが、シックスコードは6度の音を足すわけですから、6度上(=3度下)のコードと構成音の類似性があります。

転回形として考えた場合

より正確には、「短3度下のセブンスコードの第一転回形」として見ることができる。この2種類のコードネームはどちらも指し示す構成音が同じであるため、どちらで表記してもよいということになります。1

I6IV6が陰りや哀愁を表現するのに長けている理由の一端を、この3度下のマイナーコードとの類似性に求めることもできるでしょう。

代理コードとして用いる

そうなれば当然、VIm7をI6で、IIm7をIV6で代理しようといったアイデアも出てきますね。それはコードを「第一転回形」に変換するのと同じことです。

IV6VIm7IV6I6

こちらは先ほどの音源を元にして、ラストのVIm7I6に交換したもの。手前からの文脈もあって、このI6はややVImの和音に近似した意味合いを帯びています。Cを元にしているのか、Amを元にしているのか、ハッキリしないような中間域にいますね。

中間的表現

これは別に、どっちかハッキリさせる必要などありません。“どちらとも言えない”という玄妙な表現が扱えるレベルまできたということなのです。

セブンスコードがサウンドのバリエーションを大きく広げたように、シックスコードもまた使う場面しだいで様々な演出に活用することができます。

まとめ

  • 三和音に長6度を加えた四和音を、「シックスコード」と言います。
  • 基調和音では、IIImIVVであれば臨時記号なしでシックスコードが作れます。
  • 主な用法にはsus4のような緊張感の演出と、セブンスコードのような濁りの付加があります。
  • シックスコードは、セブンスコードの第一転回形と形が共通しており、その類似性を活かした用法もあります。
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