目次
2. 構成音と名前
さて、ここからはコードの構成度数やコードネームといった部分の説明をしていきます。数字と暗記の世界なので、ちょっと大変なところです。
三和音でおさらい
まずは復習もかねて、三和音を使ってコードネームの決まり方というのを思い出します。六つの基調和音はメジャーコードとマイナーコードの2種類に分かれましたが…
違いは3rdの音程でした。[4半音]なのか、[3半音]なのかと言う距離の差です。そしてこれはほんの軽くしか触れませんでしたが、この音程を正式な「詳細度数」で言うと、距離の“長短”が違うということで、それぞれ「長3度」「短3度」と言うのでした。
そして、「長3度ならメジャーコード」「短3度ならマイナーコード」というふうに、度数の違いがコードネームに直結しています。
セブンスコードの度数構成
セブンスコードも同じく、7thの音が果たして半音いくつぶんの距離になっているかというのがコードネームとリンクしています。また縦積みの形でコードを見比べてみましょう。
てっぺんにいる7thの音が[11半音]なのか[10半音]なのかで分かれました。距離が長いか短いかという違いがあるので、これもやはりそれぞれ長7度major 7th、短7度minor 7thと呼び分けます。
ここがメジャーコード/マイナーコードで綺麗に3vs3で分かれてくれれば話はシンプルだったのですが、そうではなく2vs4に分かれて、Vのコードがちょっと仲間はずれのような立ち位置になります。
3度・7度ともに「長」であるIIV、7度が「短」で仲間はずれとなったV、そして3度・7度ともに「短」で仲良しなマイナー三人衆という図式です。
セブンスコードの命名規則
さて、セブンスコードの命名ルール自体はシンプルで、三和音の時の名前の後ろに、さらなる名前を付け加える形になります。
「メジャーセブンス」は上記のように対応するシンボルがいくつか存在しますが、このサイトでは最もパッと見で判別のつけやすい「Δ7」を採用します。
この規則に基づくと、基調和音のセブンスコード版は以下のようなコードシンボルで表されます。
特別な子であるVは単に「7」がつく最もシンプルなシンボルとなり、IIVは「Δ7」となり、マイナー三人衆は元々の「m」のあとに「7」がくっつくから、合体して「m7」となる。
ちょっとずつ難しくなってきましたが、II章以降はこうやって正式なコードネーム・コードシンボルを頭に入れていきます。六つの基調和音のコードクオリティについては、「Vだけ特別でただの“セブンス”、残りはメジャー系が“メジャーセブンス”、マイナー系は“マイナーセブンス”と綺麗に分かれる」という順序で暗記するのがよいでしょう。
組み合わせ論
ところで数学的な人ならば、ここまでの説明の中でちょっと気になる部分があるのではないでしょうか? それは、「3度の長短」と「7度の長短」の組み合わせがあるのだから、2×2で4種類のタイプができるはずなのに、まだ3種類しか紹介されていないことです。
そう、実は基調和音の誰も該当しない「短3度×長7度」という組み合わせもあり得るのです。そしてこの場合のコードネームがどうなるかは、ここまでの命名ルールに従うとわかります。「短3度」の時点で「マイナー」の名前が与えられ、それから「長7度」は「メジャーセブンス」の名を付加する決まりだから、合わせてマイナーメジャーセブンスとなります。
ずいぶん長ったらしい名前ですが、ようは基調和音に該当者がいないために、「まあ長くてもいいやろ、そんなに使わんし。理論はシステマティックに命名することが大事や」という方針になったわけです。
マイナーメジャーセブンスの登場例
「マイナーメジャーセブンス」がポップスで登場するとすれば、筆頭候補はIVΔ7の3rdをマイナーにクオリティ・チェンジした場合です。
3度も7度も「長」だったIVΔ7の3rdだけが「短」になるので、ここに「短3度×長7度」というコンビネーションが誕生するわけです。マイナーメジャーセブンスは、独特の毒気をもった妖艶なコードクオリティです。
表で再確認
そんなわけで、度数とコードネームの対応関係を改めてまとめるとこうです。
まず命名法則を理解すること、それから基調和音をセブンス化したときにどれになるのかを暗記すること。この2ステップが課題となります。
Cをルートで比較確認
ルートをCに揃えて4つのセブンスコードを並べると、以下のようになります。
「C7」といういかにも普通っぽいコードが、実は黒鍵を要するコードであるというのはちょっとした罠ですね。
長7/短7の見分け方
もしも長7度と短7度の区別に迷った時には、次のような判別法があります。「長7度は、ルートのすぐ半音下の音と同じ」「短7度は、ルートの全音下の音と同じ」です。
ようは、直接7度の距離を「半音11個分」などと覚えるのは大変なので、オクターブ下ろして考えるということです。これを覚えておくとコードを鍵盤で弾くときなどにも便利です。
ドミナントセブンス
ところで、Vのときに出てくる「セブンス」というたった四文字のコードクオリティは、ちょっとコミュニケーション上の問題を抱えています。それは……
こんな発話をしたとき、それが「総称としてのセブンスコード」のことなのか、それとも「長3×短7の“セブンスコード”」のことだけを指しているのかがハッキリしないという点です。なんだかバンドがバンド名をそのままアルバム名にしてリリースしたときのようなややこしさがありますね。
そこで、「長3×短7の“セブンスコード”」には、これだけを確実に指し示す呼称としてドミナントセブンスDominant Seventhというもう一つの名前が与えられています。
「ドミナント」は元来、「キーの5番目の音」という意味の単語。Vのコードの時だけ現れる特別なセブンスコードだから、ドミナントセブンスコードというわけです。
使い分けのイメージとしては、日常でコード進行を話す際の「C-G7-C」みたいな時には、単に「ジー・セブンス」と言えばよいです。主だっては音楽理論の談義をする際に「ドミナントセブンス」の語を使います。
クラシック系の表記
ちなみにこれは完全に余談ですが、クラシックの伝統的なローマ数字記法では表記が全く違っていて、度数編成とシンボルが一対一で対応していません。「7」と書くと、それが「音階に沿って作ったセブンスコード」という意味になります。
だから上のように、臨時記号なしのセブンスコードは全員一括で「7」です。本格クラシック系の理論コンテンツを読むときには要注意ですね。
この方式にはバックグラウンドの思想が如実に反映されていて、クラシックでは演奏に関しては楽譜がありますから、ローマ数字記法を使うのはもっぱら分析においてであり、そこでは場面ごとのキーを特定するのは大前提です。したがって、「音階に沿ってるだけで、何も特別なことは起きてない。だったらただ7と書けばいい」というような発想になるのです。
対してコードシンボルを発明したジャズ流派の前提は即興演奏で、またキーも頻繁に移り変わります。だからキーがよく分からなくてもとにかくシンボルを見たら鳴らすべき音が分かるように、キーや文脈に一切左右されないシステマティックな命名となっています。
流派によって方式が違うのはややこしいことではありますが、ただ単に統一されていないのではなく、ジャンルごとの音楽の在り方がそこには反映されています。そうした背景を知ると、それぞれの文化の“手触り”のようなものが感じられて、より違いが受け入れられるはずです。
このサイトではクラシック理論を扱うVII章でのみこのクラシック流の表記が登場しますが、それ以外ではポピュラー音楽理論において一般的なジャズ流のコードシンボルを採用します。
そんなわけでコードネームは色々とややこしいですが、運用自体ははそんなに難しくありません。要するに「臨時記号が生じないように重ねれば、それがそのコードにとって一番基本的なセブンスコードになる」ってことですからね。
長7・短7の区別についても、頑張って机の上で暗記学習なんてする必要はなくて、基調和音を通じて色々なルートのセブンスコードに触れていくうちにちょっとずつ覚えていくものです。今後セブンスコードを使うときはそのコードネームを意識しつつ、常に実践と、サウンドと結びつけながら暗記を進めていってください。
まとめ
- セブンスコードは、Rt・3rd・5thの上に第7音、7thを重ねた四和音たちの総称です。
- セブンスコードで加わる音は長7度と短7度の2種類があります。
- トライアドとの組み合わせを考えると、セブンスコードは全部で4種類あります。