パワーコード

コード編 Ⅱ章:新しい音響
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今回は「新しいコードネームを知る」回です。 基本的にロックのジャンルにおいてのみ多用される技法で、他ジャンルで使われることは稀です。ただ、発想自体は様々なことに応用可能ですし、難しい回でもないので、知識として頭に入れておくとよいと思います。

#1 オミット

I章の「クオリティ・チェンジ」では、音の位置を微妙に変える「変位」について学びました。しかし、音の位置を変えるのではなく「音を抜く」という手法も存在します。今回はそんな技法の紹介。 コードから音を抜くことを「オミットOmit」といいます。“omit”は「除外する」という意味の英単語ですから、まあ専門用語というほどでもないかもしれません。 コードネームとしてもきちんと存在しており、たとえば「C」から第3音を抜いた和音のことを「Comit3」のように表現します。
omit3

ただ、実際に音が鳴っていなくてもコードネームとしては鳴っていると扱われることが往々にしてあるので使用頻度は低いです。 「omit」という表記は、音を抜くことを明言したいときにはじめて使われることとなります。 では、いったい何のためにわざわざ音を抜くのか? それを探っていきましょう。

#2 パワーコード

「omit」が使われることがあるのは、ほぼほぼ3度の音です。第3音は、コードの長短を決める大事な音です。それをあえてオミットしたのが「omit3」。これはパワーコードPower Chordと呼ばれています。 明るさも暗さも失った結果、コードはなぜか力強い響きになります。それが「パワーコード」と呼ばれる所以。 基本的にはエレキギターの演奏で使うコードです。そしてその際は、4・5・6弦を押さえて、以下のような和音を弾きます。
パワーコード

ロック音楽(特にパンクロック、ヘヴィメタルなど)などで、力強さを出すために頻繁に使われます。本当に頻繁に使うので、バンド用に作られた楽譜などでは「omit3」をわざわざ書くことはせず、単純にトライアドのまま表記することがほとんどです(タブ譜でパワーコードであることを示したりします)。

#3 実際に聞いてみる

エレキギターを使った例を紹介します。

メジャーコード・マイナーコードを使った場合

ギターで{C}{G}{Am}{F}というコードを弾いています。 明るい暗いがハッキリしていてキラキラしていて、ポップな感じがします。 また、歪んだエレキギターだと、音がゴチャゴチャしちゃってますね!ピアノストリングスなら「ド・ミ・ソ」全部鳴ってても綺麗ですが、こういうときは「ド・ソ・ド」くらい音を離した方がいいんです。

パワーコードを使った場合
急にパンクバンドみたいになりました!音の輪郭がハッキリするのが1つめのポイント。そして長短がなくなることで力強くロックな響きになるのが2つめのポイントです。 上のを聴いた後では少し音が物足りなく感じますが、実際の曲に仕上げれば、全く違和感はなくなります。長短の変化による情緒的な響きは曲によっては邪魔にさえなりえます! パワーコードはメジャーでもマイナーでもないコードとして重要な役割を果たしているのです。

もう少し曲のかたちにしたパターンも見てみましょう。

パワーコードを使った場合

これぞメタルという感じのハードな響きがしています。

メジャーコード・マイナーコードを使った場合
響きとしては豊かになりましたが、長短が出過ぎている。そして、歪んだギターでは音数が多すぎて、音が濁り気味ですね。ギターのリフフレーズというよりは、コードを弾いている感じになっていて、メタルの流儀には合っていません。 もしどちらの方が悪魔が召喚できそうか?と訊かれたら、やっぱりパワーコードの方です。

パンクやメタル、激しめのロックといったジャンルでは、このパワーコードの方が演奏の基本になっています。ギターの構造上、このパワーコードが押さえやすいというのもあります。 他ジャンルでも、3度を抜くことでこのような効果を得られるということを知識として知っておくと、活きる場面があるかもしれません。

この節のまとめ
  • コードから音を抜くことを「オミットする」といい、「omit」で表します。
  • メジャー/マイナーコードから第3音をオミットしたものを、「パワーコード」といい、ロック音楽でよく使われます。
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