詳細度数 ❷

コード編 Ⅱ章:新しい音響
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今回は「言葉を知る」回です。

「度数」について、準備編から少しずつ扱ってきました。ここでいよいよ、全ての音程差に対する「度数」を紹介します。今後は「度数」を少しずつ覚えながら音楽理論の学習を進めていくことになります。

ココを無視してⅡ章以降の内容を理解することは不可能ですから、ジャンルを問わず重要な知識となります。


さて、I章はそこまで度数の知識がなくっても進める世界でしたが、ここからII章へ進むとなると話が変わってきます。

ここから先は度数だらけ

いよいよちょっとずつ、こういう感じの世界に入っていくわけです。ですからその状況に耐えられるよう、そろそろ少し「度数」と向き合っていく必要があります。ですからII章を迎える前に、改めて度数に強くなろうという、寄り道のページ、特訓のページがここになります。

#1.度数の一覧

まずは少し言葉を本格化しますね。これまで「簡易度数」と呼んでいた、度数の数字の部分のことを「Quantity(量)」、そして「詳細度数」のときに加わった「長・短・完全・増・減」の部分を「Quality(質)」と呼びます。

QとQ

Qualityについては、コードの「クオリティ・チェンジ」のときに説明しましたね。音の質感を示すから、クオリティ。Quantityは「量」という意味の英単語。いわば日本語で言うところの「量と質」で、よく「Quality and Quantity」なんて風にセットになる単語です。

まあこの言葉を使う機会は少ないですが、一応参考までにという感じ。

それではまず、ドを基準にして主要な度数を並べた一覧を見てもらいましょう。

インターバル

詳細度数のパターンは、「長・短」と「完全」、それから「減と増」の5種類だけです。いずれも、Ⅰ章の段階で紹介はされていますね。一応楽譜でも示しておきますね。

ウッ・・・・なかなか辛いものがあります。ただやっぱり、実際に覚えていくのは、その度数を使ったコードが登場してからでよいです。今はこれらの存在を「意識し始める」という段階。

一応「9度」まで並べましたが、実質的には「7度」まで把握すれば十分です。そこから先は、「オクターブ上=7度を足す」という、簡易度数の時の公式がこちらでも通用するからです。

では、3度・5度以外の度数でクオリティがどうなっているかを改めて確認し、各度数を覚えていくのにはどうしていけばいいかを解説していきます。

#2.クオリティの整理

まずは、クオリティがどんな風につけられているかを確認してみましょう。
ちょっと状況を整理すると、2・3・6・7については長短による命名となっています。

レミラシ

「長・短」はその名のとおり、響きが明るいか暗いかによって決まりました。正直2度や6度だと、まだあんまり明るい・暗いが判別できないかもしれないですが、一応長短があるのです。

一方で1・4・5には「完全」という名がつきます

ドファソ

「完全」は、明るくも暗くもない、無色透明なサウンドという話でした。

そして「増」「減」は、完全・長・短で表せる世界からはみ出た時に初めて登場します。

度数の法則

ですから大抵は臨時記号を使った時に生じる特殊な度数です。

増と減※ドを基準とした場合の例

Cメジャーキーで言うと、臨時記号なしのナチュラル状態で「増/減」の音程が現れるのは、以前紹介した「ファとシ」を組み合わせた時だけです。

ファシ
シファ

ですからまずは「長・短・完全」をマスターすることを目標にするとよいでしょう。

#3.各度数の習得

では、ここからは各度数をどのように習得していくことが効率的かを説明していきます。簡易度数、つまり数字の部分は鍵盤の数を数えればいいという話だったので、クオリティの部分をいかに判断するかがカギになってきます。

長二度と短二度

長二度と短二度は、鍵盤と結びつけて考えるのが一番楽です。すなわち、半音なら短二度、全音なら長二度。

短2
長2

それだけです。これはすぐに覚えられそうですね!

長三度と短三度

長三度と短三度は、メジャーコード・マイナーコードを元に判別するのが一番簡単でしょう。ようするに、「レとファ」だったら、そのまま第五音を積み上げるとDmになるから短三度だ。これまでの作曲経験と結びつけて思い出すのです。

というか、もしパッと分からなくても、楽器で弾いてしまえば明るいか暗いかはすぐに分かるので、それで確かめるのが最良です。ズルをしているような気がしますが、そんなことはない。何度も述べているように、度数は音の響きと結びつけて考えることが重要ですからね。

完全四度と増四度

ドファ
ドファ#

「ドとファ」は完全四度で、「ドとファ♯」は増四度。これもやっぱり、弾いて確かめてしまうのが一番良いと思います。増四度は明らかに不気味で不安定な響きがします

完全四度のサウンド
増四度のサウンド

半音違うだけで全然響きが変わりますね。実は増四度、かつて西洋で「悪魔の音程」と呼ばれ、忌み嫌われていました。それくらい恐ろしいトーンの度数です。
また先ほどの話と重なりますが、臨時記号を伴わない世界で「増四度」が生まれるのは、「ファとシ」のところだけです。それ以外の四度は「完全四度」なので、そのような意識を持って普段から作曲をすると、自然と頭に入っていくはずです。

魅惑の完全四度

ちなみに、完全四度の方は、この四度重ねで弾き続けると、和風というか中国風というか、オリエンタルなムードになることでおなじみです。


こんな風にね。これはギターが四度でハモりながらフレーズを弾いています。これを試しに六度に変えてしまうと・・・

こうです。なんだかちょっと音の彩りが豊かになり、西洋の血が混ざった感じになって、オリエンタルさが薄れましたね。

こちらはストリングスのピッチカートを完全四度で重ねた例。やっぱり和風な雰囲気が出て、私たち日本人にはなんともノスタルジーを感じさせるものになっています。
こういった音を通じて、度数にこだわる大切さを少しずつ学んでいってもらえればと思います。

四度と強進行

ちょっと前に、「ルートが四度上に進む進行のことを強進行という」と述べました。

TDS

ただやっぱりこの言い方も正確ではなくって、狭義には「完全四度上」に進むものだけが強進行と呼ばれます。

完全五度・増五度・減五度

さて、5度はまず、メジャーコード・マイナーコードを通じて、「完全五度」のパターンを覚えていきます。ドミソでメジャーコードが鳴らせるから、両はしの「ド」と「ソ」が完全五度・・・なんて具合にね。
完全五度が頭にはいれば、それより半音上がれば「増五度」、下がれば「減五度」という風に応用させることができます。

トライトーン

ところで「増四度」と「減五度」は、距離としては同一でしたよね。この2つを呼び分けるのって、ちょっとややこしい。そこでこの2つをまとめて表現できる便利な言葉があって、それが三全音Tritone/トライトーン といいます。

トライトーン

トライトーンは、翻訳すると「3つの全音」という意味。確かに鍵盤を見て数えてみると、全音3つ分の距離です。増四度もトライトーンだし、減五度もトライトーン。
ですから、特に「増四度」「減五度」のどちらかに話を限定したくない時などは、この「トライトーン」という言葉を覚えていると便利ですよ。

長六度と短六度

長六度と短六度の区別はちょっと他より難しいですね。正直、6度を見分けるのはもう少し後になってからでよいと思います。もう少し先の方で「シックスコード」という、6度を活用したコードを学びます。それを学んでからで十分でしょう。

より具体的には、まず「完全五度」をマスターして、それより半音広ければ「短六度」、全音広ければ「長六度」と覚えていくのが現実的かと思います。

短六度
長六度

長七度と短七度

長七度と短七度の区別については、大きく離れた2つの音をオクターブずらして寄せてあげるとよいです。

長7
短7

こんな風に、どちらか片方に音を寄せた時、半音差(短二度)になっていれば長七度で、全音差(長二度)になっていれば短七度です。言わば、短と長が鏡写しのような関係になっているんですね。
ただ七度に関しては、もうすぐ先で「セブンスコード」というコードを学び、そこから活用していくことになるので、セブンスコードを常用するようになれば、自ずと長七・短七の区別は付くようになります。


#4.学習にあたっての注意

以前も念押ししたとおり、この「度数」に対する向き合い方は、音楽理論を学ぶうえで非常に重要です。音楽理論の根本をなす重要概念である一方で、必ずしも暗記をすぐにしなければならないものではない。
それは、「メジャーコードとマイナーコードの違い」のような理論的部分を理解するためには必須の知識である一方で、そのような根幹的部分は、「ドミソはCメジャー、ラドミはAマイナー」と暗記していくうちにだんだん必要でなくなってくるからです。

ひとつ確実に言えるのは、ストレスのかからない範囲で習得していくのがいいということ。

「わかる」と「できる」を区別してストレスを減らそう

これまで見てきたように、それぞれの度数によって、習得プロセスが違います。中には楽譜を使ってたくさん度数の練習をさせたがる人もいるようですが、ハッキリ言ってそれは非効率的です。

なぜなら、紙の上で暗記した情報は、単なる視覚情報にしかならないからです。自分が作る曲の中で、あるいは他人の曲を分析する中で、音の「鳴り」や「使いどころ」と共に身につけた方が、「生きた情報」になります。しかもそっちの方が忘れにくいし、楽しい。

ところで、英語の「不規則変化動詞」って覚えていますか? 「speak-spoke-spoken」とか「fall-fell-fallen」とかいう、動詞の変化形です。暗記するのに苦労しましたよね。

不規則変化動詞は、中学生の範囲で80個くらいあります。アレを一覧表で見せられて、すぐ覚えられた人っているのでしょうか? そんな人はそうそういません。たくさんの文章に触れていくなかで、少しずつ覚えていくものです。それも、たくさん使うものから順番に覚えていくものです。

度数もそれと同じ。鍵盤上での異なる音の組み合わせは、12×11=132とおりあるという話は以前にしました。

全てのインターバル

こんなの、すぐに言えるようになるわけがありませんよね。パッと度数が言えるようになるのは、もっともっと後でよい。2,3年。なんなら4,5年かけたって全く問題ありません。間違えたっていいのです。どこかの段階で、その間違いには必ず気づけますから

「間違えちゃダメだから頑張って覚えなくちゃ」という考えを捨てましょう。間違えながら学んでいけばいいのです

こんな感じで名前がついていて、細かい音程の差が大事なんだということが「分かる」という段階であれば、ここから先読み進めていくことは可能です。まだ「出来る」までいけなくても大丈夫。
暗記ばかりを費やしていたら、理論を学ばずにせっせこ制作している人たちにドンドン水を空けられることになります。それこそが理論学習者の最も避けねばならない悲劇的事態ですよね。

ですから、とにかく大事なことは、響きと一緒にちょっとずつ覚えることです。「度数」というのは、たった2音だけで作られる極小のハーモニーの世界。そこでの音の響きに敏感になることは、最終的に大きな曲を美しく組み上げる聴覚に繋がっていきます。

#5.その他の表記

ちなみに英語では、「Perfect fifth」や「Major seventh」など、数字の部分は序数で呼ばれます。クオリティの英語版や楽譜上での一般的な略記は以下のとおりです。

日本語 英語 略記
major M
minor m
完全 perfect P
diminished o
augmented +

それから、「完全一度」つまり距離ゼロの状態については、これを「Perfect 1st」と呼ぶことはなく、「Unison」ないし「Prime」と呼びます。

まあ音楽理論は一般的に英語名が基本と言えど、ちょっと日本人の感性からすると、どの名前もカッコつけすぎです。長いし。ゆえにこのサイトでは、基本的に日本語の呼び名を使っていきますね。
ただ「略記」については非常にシンプルで短く収まるのが魅力ですね。今後は適宜、「完全四度」を「P4」などと略すことにします。

augmentはたまに「オーギュメント」というカタカナが当てられていますがそれは誤発音です。argument(アーギュメント : 議論,論拠,引数)と混同しているのでしょう。正しくは/ɔːɡmént/という発音、カタカナで言えば「オーグメント」が一番近いです。

また英語の話をもうちょっと補足すると、diminishは「減らす」、augmentは「増やす」という意味の動詞です。ですから-edをつけて過去分詞化することで、「減じられた」「増やされた」という形容詞になっています。

#5.五度圏ふたたび

せっかくなのでここでもう一度、ミステリーアイテム「五度圏」の話をさせてください。

五度圏

この「五度圏」という名前の由来も、「度数」の概念から来ています。
改めてこのアルファベットの配置、時計の12時の位置から見ていくと、まずスタートはC。Cの次はF、Fの次はB♭・・・この並び方には、シンプルな法則性があって、実は完全五度ずつ音が進んでいます

5度下へ

スタート地点の「C」から完全5度下にあるのが「F」。そう、五度圏は五度ずつ音を進めて並べたもので、それが五度圏という名前の由来。
逆に言えば、反時計周りに進む時には完全五度上へ行くことになります。

5こ先

音楽理論の世界の根幹をなす単位、度数。その測り方に、少しずつ慣れていきましょう。

総括

  • 詳細度数は、長・短・増といった「Quality(質感)」と、ドレミの数で測る「Quantity(量)」から成ります。
  • 2・3・6・7度は「長・短」のクオリティを持ちえますが「完全」は持ちえず、逆に1・4・5度は「完全」のクオリティを持ちえますが「長短」は持ちえません。「増・減」のクオリティは、度数に関わらず持ちえます。
  • 詳細度数の見分けは、「半音○個ぶん」で丸暗記していくよりも、サウンドの違いや実際と結びつけて覚えるのが賢いです。
  • 現段階でこれらの度数をマスターする必要は全くなく、今後コード理論を知っていくのと共に段階的に覚えていくと負担が少なくてよいです。

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