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スリーコードと代理コード

1. メジャーとマイナーで二分する

六つの基調和音はメジャー・マイナー・マイナー・メジャー・メジャー・マイナーの順に並んでいます。

6つだけ

メジャーとマイナーが入り乱れていて一見分かりにくいのですが、これを「メジャー3人衆」と「マイナー3人衆」に二分すると、実はなかなか綺麗な構図になっていることが見えてきます…。

二分する

ド・ファ・ソをルートにしたのがメジャー3人衆。ラ・レ・ミをルートにしたのがマイナー3人衆なわけですが、このルート音どうしの距離関係に注目してください。鍵盤で見てみると、関係性がよりクッキリ分かります。

5度関係

明るいメジャーファミリーと暗いマイナーファミリーが、中心位置だけがずれた形で、同じフォーメーションを組んでいるのが分かりますか?

  • メジャーキーのリーダーであるドの音。その5度上にソ、5度下にファがいる。
  • マイナーキーのリーダーであるラの音。その5度上にミ、5度下にレがいる。

「リーダーと、お供ふたり」という関係性で集まった3人衆。それが2グループあるという風に捉えると、コード進行の仕組みがまた一歩見えるようになってきます。

リーダー 下の仲間 上の仲間
メジャー群 I IV V
マイナー群 VIm IIm IIIm

こんな風に「3人でワンセット」となるため、それぞれがメジャーキーとマイナーキーのスリーコードと俗に呼ばれます。

レラティヴ間の対応関係

ですから、メジャーのスリーコードで作るコード進行があったらば、それをマイナーのスリーコードでマネすることができるわけです。

IVI

この1-5-1の“お辞儀の進行”を、マイナーグループでマネするならこうです。

VImIIImVIm

6-3-6となる。位置こそ違いますが、「まずリーダー、次に5度上、またリーダー」という“ストーリー”の構成法が同じなので、その点で言えば“同タイプ”の進行と言えるのです。

あるいはメジャー3人衆で作る1-4-5-1という進行は、マイナー3人衆に置き換えれば6-2-3-6となります。

IIVVI
VImIImIIImVIm

コード進行はこんな風に、いつ“お供”を登場させ、いつ“リーダー”を登場させるかでコード進行のおおよそのストーリーが形作られていきます。

調内での意味

IIVVは3人とも同じ「メジャーコード」だし、VImIImIIImはみんな「マイナーコード」ですが、キーの中で鳴らされたときの私たちの感じ方は6つそれぞれ異なります。考えてみればそれも面白い現象ですね。

絶対音感のない人間であっても、音楽理論を知らない人間であっても、この「リーダー」「上の仲間」「下の仲間」という相対的な位置の差を認知し、曲の展開を感受しているのです。これは準備編でやった「中心音の認知」と原理を同じくする話で、我々が後天的に獲得する能力です。

特に重要な意味を持つのはIVImのふたりで、メロディが中心音に到達した時に特別な着地感があるのと全く同じように、コード進行がIやVImに至った時にはある種の終止感があります。そして、どちらに多く着地するかが曲がメジャーキー/マイナーキーの具合に大きく影響します。

モニズム

もちろん“お供”たちの存在もキーの偏りに影響はしますが、やはり「どっちに着地するか」という、リーダーによる“主導権の奪い合い”が重要であると認識してください。

2. コードの代理

改めてメジャーキーのスリーコード3人、マイナーキーのスリーコード3人の関係性を図に表すと、下のようになります。

レラティヴの鏡関係

点線で繋がれたペアは、明暗こそ違えどグループの中での立場が同じです。そのため、調内の性質としてどことなく類似したところがあります。言わば「仲良しペア」なのです。

仲良しペア

そのため、コード進行に何か面白味が足りないという時にアレンジをする一番はじめの候補として、この仲良しペアどうしで交換することが考えられます。実際にやってみましょう。

この1-4-5-1が、ちょっと明るすぎて面白くないなと思ったらば、例えば先頭のIVImに換える。

長調と短調のテイストが混合し、より味わい深いコード進行になりました。このように、コードを別のものに入れ替える行為を音楽理論では代理Substitutionといい、代わりとして投入されたコードを「代理コード」といいます。

五度圏で確認

この6人の関係は、「五度圏」にも映し出されています。六つの基調和音は五度圏の中でひとかたまりになっているわけですが、その配置をみると…

五度圏と仲良し

仲良しのペア、同じ立場にいるものどうしが、同じレーンにいることが分かります。五度圏というのは本当に、コードどうしの関係性を示してくれる地図なのです。

Check Point

六つの基調和音は、たとえ同じメジャーコード、同じマイナーコードであっても、全員それぞれが調の中で異なった意味を担っている。その差異は、特別な音感のない人間でも感知しているものであり、そうだからこそ私たちは音楽の“展開”というものを感じ取ることができる。

メジャー群とマイナー群はそのフォーメーションが同一であり、対になっている。どちらの群をどのように織り交ぜるか、どちらのリーダーに着地するかがメジャーキー/マイナーキーのバランスを決定する。対になっているコードを入れ替えることで長短の曲想を調整するというのが、知識の少ない現段階でも成功しやすいアレンジの初歩である。

3. リハーモナイズ

実際の作曲においては、いざメロディが出来終わった後になってからコード進行を変更するという作業も日常的に行われます。特に他人の曲をカバーする時や、サビの1周目と2周目で雰囲気を変えたいなんていう時ですね。

先に固定されたメロディに対してコードをあて直す行為のことを、リハーモナイズReharmonizeといいます。当然この行為には、メロディとコードが不自然にぶつかって気持ち悪くなるリスクが潜んでいるわけですが…。
しかしそんな時にもこの「仲良しペア」で交換をすると、曲の展開性をある程度キープしたまま代替が成功する確率が比較的高いです。

IImVIVIV

例えばこんなフレーズがあったとして、メロを固定したままリハーモナイズをしてみます。今回は思い切って、5つのコードを全て「仲良しペア」で交換してみましょう!

IVIIImVImIIImIIm

こうなります。マイナーコードが増えたぶん、ちょっとメロウな雰囲気になりましたね。でも、もはや替えたことが分からないほど自然に仕上がっています。

では逆に、このペアリングを気にせず適当にコードを替えたらどうなるでしょうか? それも悪い例として、やってみます。

VIVVIVIIIm

こうです! メロディとコードがうまく噛み合っていなくて、全体として調和がありません。こうして比較すると、最初のリハーモナイズがいかに美しく成立しているかが分かります。

圧倒的・・・なかよし・・・!!!

なんだかいよいよ音楽理論っぽくなってきました。もちろん必ず置き換えが成立するわけではなく、不自然さが生まれる場合もあります。ただそれでも、「仲良しペア」が入れ替えやすいコード、つまり性質の似たコードであることには間違いありません。

親密性

ただし、ひとくちに「仲良し」と言っても、現実の我々がそうであるように、その“仲の良さ”、すなわちサウンドの近親性には差があります。

  • IVIImがいちばん仲良し
  • IVImは中くらいの仲良し
  • VIIImはそうでもない

この程度の差を、親密度Intimacyと呼ぶ音楽学者もいます1。 親密度が高いほど「交換の成立可能性」が高く、逆に微妙な仲であるほど、入れ替えた結果違和感を生じる可能性も高い。ですのでVIIImを交換するときは特に、「本当に大丈夫かな…?」と確かめてあげる必要があります。

IIImからIへの進行

特に、IIImVImのモーションが非常に聴き心地が良く汎用性の高いものであるのに対し、これをIIImIにすると、一転して独特な進行になります。この点については頭の隅に置いておくとよいでしょう2

次回はこの「リーダー」と「お供」の関係を、より専門的な用語を使って詳細に説明していきます。進む前に多少実践としていくつかコード進行を組んでみて、この6人の関係性を感覚でもある程度把握しておくと内容を理解しやすいはずです。

まとめ

  • 六つの基調和音は、メジャー群とマイナー群の「3コード×2グループ」の図式で覚えると理解しやすいです。
  • メジャー群のスリーコードとマイナー群のスリーコードは、立場が同じであるものどうしが対の関係になっています。
  • 仲良しペアのコード同士の交換は、そうでないコード同士の交換よりも良く成立する確率が高いですが、確実ではありません。
  • 「仲良しペア」と呼ばれるもの同士においてもその親密度には差があり、IVIImの交換が最も成立しやすいです。
  • ある曲のメロディを変えないままコードを変えて曲想を変えることを、リハーモナイズといいます。
  • IIImIの進行には注意しましょう。
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