スリーコードと代理コード

コード編 Ⅰ章:新しい言葉

#1.グルーピング

基調和音は、メジャーコードとマイナーコードそれぞれ3つずつありますが、そのうちメジャーコードの方3つを、「スリーコード」といい、マイナーコードの方を「代理コード」と呼ぶのが日本のポピュラー音楽理論界では一般的です。
ちなみに「スリーコード」というのはちょっとカジュアルな言い方で、クラシック系ではこれを主要三和音Principal/Primary Triadsといいます。

スリーコードと代理コード

クラシック系ではスリーコードのことを「主要三和音」と呼び、それ以外の三和音を全て「副三和音」と呼びます。
「代理」とか「副」とか言うとなんだか脇役な感じがしてしまいますが、そんなことはありません。どちらも主役。これは、長調と短調をクッキリ分ける時代の名前の名残ですね。

「副」はともかく「代理」という名前がどこから来たかというと、実はVIm・IIm・IIImはそれぞれI・IV・Vと性質が似ていて、編曲する中でコードを自然に入れ替えられる確率が他より高いんです。なので「代理」という名を冠しています。

#2.仲良しのペア

それぞれ入れ替えがしやすいということですから、仲の良いペアがあって、3vs3でちょうど3組みのカップルが出来上がっているということです。

ペアー

なぜこのペアが仲良しなのか? それは楽譜を見れば一目瞭然。共通音が多いのです。例えばIVImをみてください。

類似

こんな風に、ドとミが共通しています。共通音が多ければ、音の雰囲気も必然的に似てくる。だからコードを入れ替えても違和感がないということです。

そうなるとIVVImもラとドが共通じゃん! という事実に気づいた方もいるかもしれませんが、そこについて説明しだすと話が長くなるので、いったん目をつぶっていてください。

#3.リハーモナイズ

同じメロディ上に別のコードをあててアレンジすることをリハーモナイズReharmonizeといいます。他人の曲をカバーする時なんかは、よくリハーモナイズをして雰囲気を変えたりします。そこで、「仲良し」の噂を利用して、初歩的なリハーモナイズに挑戦してみましょう。

これが元々の音源です。使ってるコードは基調和音のみ。このコードを、全部その仲良しペアとやらで入れ替えてあげようではありませんか!! 歌詞も「Everything changes」って、言ってますしね。

オオォ・・・? もはや、変えたことすらあまりよく分からないくらい自然な感じがしますね。ちょっと暗いコードが増えたので、メロウな感じになりましたが。
これだけ聴いても、イマイチ効果がというか、何が仲良しなのかと言われるとよく分からない。じゃあちょっと適当にコードを変えたバージョンも用意しました。

オオォ・・・!! 破綻しました。メロディとコードが全然噛み合ってなくって、めちゃくちゃです。気持ち悪いです。こうして比較すると、最初のリハーモナイズがいかに美しく成立しているかが分かります
「仲良しペア」で入れ替えた方は、メロディとコードがぶつかることもなく、まるで初めからそのアレンジであったように聴こえます。そして曲の情感というか、盛り上がりの流れ方が近似しているように感じられませんか?

圧倒的・・・なかよし・・・!!!

なんだかいよいよ音楽理論っぽくなってきました。もちろん、必ず置き換えが成立するわけではなく、今回は上手くやっただけです。ただそれでも、「仲良しペア」が入れ替えやすいコード、つまり性質の似たコードであることには間違いありません。

#4.調の重力

しかしながら、コードの「性質」というのも変な話。それはコードによって音の印象が違うということになりますが・・・でもIIV同じメジャーコードですよね。どっちも同じ「明るい響きの和音」だ。一体なぜ聴覚上の印象が変わってしまうのでしょうか?

・・・これは、音階や調の話と似ていて、カギになってくるのはやっぱり「中心」の存在です。

つまり、同じメジャーコードでもIは「主音」をルートに据えたコードですから、必然的に「調の中心となるコード」としての存在感を持ちます。

リーダー

対してIVは中心から離れた存在なので、聴こえ方も変わるのです。なんだかちょっとフワフワした空気を醸し出しています。

ふわふわ

その、「調の中の相対的な位置づけ」が原因となり、我々に異なった音の印象を与えているのです。たとえ同じ「メジャーコード」であってもね。

重力がある

つまりは、コードの世界にも、音階と同じように「中心への重力」が存在しているということ。「音階の重力」の話を忘れてしまっている人は、いったん準備編の方を読み返してください。「音階」の時に色々実験したように、今回も実際の音源と共に説明したいと思います。

よくお辞儀の時に使われるこれですが、コード進行はIVIです。何も言うことはないですね。

では、こちらはどうでしょう?

ギャッ!これではお辞儀をしたが最後、顔を上げることも出来ないはずです。これは、序論で紹介した音源ですね。
音階のときと全く一緒で、コードもやっぱり中心に帰ってくると落ち着くという特質を持っているってわけです。この音源は、その「着地点」を奪ってしまったがために、音が綺麗に終われていないのです。

ちょっと長くなってきたので、この性質については、次回掘り下げていくことにします。

名前についての補足

今回の3つ以外にも、交換成立度の高いコードというのは今後ドンドン増えていきます。「代理コード」という名称は、元来そうしたコード全てを指す幅広い言葉です。ですから、IIm・IIIm・VImの3つだけを指すつもりで使うと話が噛み合わなくなる可能性があるので注意してください。

「代理」についての補足

一般的な音楽理論では、この「代理」というシステムを使ってコード進行を発展させていったりするのですが、そのような機械的な作曲法を自由派ではあまり推奨していません。もう少し後に学ぶ「接続系理論」を活用した方が、より表現力を磨くことが出来ます。ですから一般音楽理論が言う「交換できる」というような話はあまり鵜呑みにせず、現段階では「似た性質のペアがある」程度の認識に留めておいてほしいと思います。

この回のまとめ

  • 基調和音には「仲良しのペア」というものがあり、3つのグループに分けられます。
  • ある曲のコードを変えて曲想を変えることを、リハーモナイズといいます。
  • 仲良しペアのコード同士の交換は、そうでないコード同士の交換よりも良く成立する確率が高いですが、確実ではありません。

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