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セブンスやテンションの活用

3. 濁りすぎには要注意

ただし、濁りの中でも「半音差」の濁りには注意です。ミの半音上にはファが、シの半音上にはドがいます。もし本来のコードトーンに対して「半音上」で乗っかられてしまうと、コードの性質がかなり変容して感じられるので要注意です。

基調和音内でありうるパターンはこの5つだけです。

コード機能の変容

「性質が変容」というのは、例えばIの和音が持つ「ドッシリと安定したリーダー役」とか、Vが持つ「高揚感のある盛り上げ役」とかいった機能性がずいぶん変わってしまうというニュアンスです。

こちらがその例。今回のコード進行、FGと来た流れなら、その後のCAmにはキッチリ安定・着地役を果たして欲しいところですが、ファの音がミの音にかぶさることでその着地感が削がれてしまっています。

「使えない」ではなく「使う時には注意」

ただ逆に言うと、曲のテーマや展開性によっては、このような強烈な濁りが活きる場面というのも当然あります。

こちらは「安定感が落ちる」ことを逆手に取って、Cのコードだけを下地にしながら安定→不安定の微かな揺れを楽しむという上品なコード進行で、これは全然成立していますよね。だから、「使えない」とか「使っちゃダメ」とかでは決してありません。「コードに対する影響力が強いので、足すなら効果を理解したうえで足すべき」という感じですね。

それこそIIImVにドを足す行為はコードに安定をもたらすということで、活かせる場面は色々とありますよ。

下からの攻撃には強い

そんなわけで、コードトーンの「半音上」に位置する音は要注意。その一方でコードトーンの「半音下」に位置する音を足すのは、特に問題がありません。具体的には、ファ・ドに対してシ・ミをぶつけるというパターンですね。

例えば右から3番目の「ド – シ-ド-ミ-ソ」というコードは、多少の濁りはあれど、きちんとリーダーとしての安定感を演出することができます。ただ、音の配置の仕方によってはやっぱり変な濁り方になる危険もありますので、半音関係のふたりがどんな編曲で配置されているかには留意すべきです。

こうした注意事項と基本概念にだけ気をつければ、ややこしい「コードネーム」の知識をすっ飛ばして高度な実戦に取り組むことが可能です。ちなみにこの件については、IV章で詳しく解説することとなります。

4. 二音付加の実験

音に濁りを混ぜるこの「実験」、本当に奥が深く面白いので、もう少し続けます。今度は音を2つ追加してみましょう。

2,7付加

こんな実験結果が得られるんじゃないかと期待するわけです。だんだんワクワクしてきたぞ😇

音の引き算

しかしコードの構成音が3個+2個で5音となると、だんだん音はグチャグチャしてきますし、楽器で演奏するのもしんどくなってきます。そこで、元の構成音のうちどれかを省略してしまおうと思います。

省略候補

このばあい、省略候補は2つです。

  • ルートを省略
    左手が「ルート」のドをもう弾いているんだから、右手も弾く必要は無い。だからこれを省略しよう。
  • 5thを省略
    ソの音は、コードの5th。これは「無色透明のサポート役」だった。サウンドを構築するうえでの重要性は低いので、これを省略しよう。

このようにして、省略の候補はRt5thになります。これは地味にハイレベルな知識ですね。それでは、重要でない音は適度に省略しつつ、「二音の付加」にチャレンジします。

2-5-1-6に二音付加

今回題材に取るのは、ジャズなどオシャレめの音楽でよく使われる2-5-1-6の進行です。

IImVIVIm

現状あまりオシャレとは言えない状態ですが、ここにそれぞれ2つ音を付加します。すると・・・

かなりオシャレになりました!! 今回は、「実はもうこんな難しいコードが弾けるんだぞ」という意味を込めて、実際のコードネームを書いてみました。コードネームを見るとすごく複雑。でも、やっていること自体は現段階でも全然理解できますよね。

今やっていることは、本当に重要なことです。「IVに6度の哀愁が絶妙だな」とか、「Iに2度の開放感はアップテンポの曲に合いそう」とか、自分好みのコンビネーションを見つけてストックしておくと実践に生きるし、今後理論を学び進めたときに、「定番コードだったコイツ、こんな名前だったのか〜」と“復習”の要領で学習できるので、非常に有益です。

Check Point

たとえ明確な知識がなくても、「音の濁り」「各音の性質」「Rt3rd5thそれぞれの役割の違い」といった“根本原理”を理解していれば、効果的に音を足し引きすることが可能である。

付加音が与える影響を考え、確かめながらコードを身につけていくことは、単にコードネームを暗記するよりも本質的な行為であるとさえ言える。実践の経験を持っておくことは、学習の手助けにもなる。

音楽理論の学習は、焦らずに実践を積みながら進むことが、本当に重要です。付加音の中では、7度を付加した「セブンスコード」がまず圧倒的に使いやすく、入り口としてオススメです。次いで2°、6°、最も扱いづらいのが4°という感じ。

こちらは白鍵だけ、基調和音だけを土台にして「音の足し引き」でサウンドを彩った小曲です。白鍵だけ(臨時記号なし)でもこれだけ豊かな音響が生み出せるということはぜひ覚えておいて頂きたいところ。最後にもう一度、「音の付加」の原則をまとめておきますね。

  • コードに音を付加する際は、「コードの質感が掛け合わさる」もしくは「コードに各音のキャラクターが混ざる」とイメージするとよい。
  • コードトーンの「ミ」に「ファ」を乗せるのは要注意。「シ」に「ド」を乗せるのもやや注意。“下からの攻撃”には強いが、“上から”には弱い。
  • 音を足したあとは、音がギュウギュウにならないようコードトーンを引くのも効果的。そのばあい5thを抜くか、低音担当パート以外ならRtを抜いてしまうのが候補となる。

もちろんこういうところを理論的に分類・解説し、名前をつけて管理していくのがII章以降の話ですが、現状でもこれくらいリッチなサウンドが作れる“自由”はあるのだということを忘れないでください。

5. コード譜の演奏に際して

今回の知識は「コード譜を元に演奏する」なんて時にも参考になります。これまでに、自分の好きな曲をコピーしようと思ってコード進行を検索したら、色々難しい記号がついていて圧倒されたなんて経験があるかもしれません。

でもココまでの話で分かったとおり、後ろについている「6」「7」「9」といった記号は、ある意味“おまけ”とも言えます。ですので、そうした部分を省略してもそれなりに演奏として成立します

省略前 省略後
Cm7 Cm
Dm9 Dm
F6 F
Fmaj7 Fmaj ⇒ F
E9 E
BM7 BM ⇒ B

こんな感じです。もちろん100%成功するものではないですし、これからどんどんコード理論を学んでいってきちんと仕組みが分かるのが理想ですけど、でもそれまでの「一時しのぎ」として、こういう風に簡略化をしてトライしてみるのもよいでしょう。

まとめ

  • 基調和音に音を付加すると、複雑なサウンドを得ることができます。原理から考えれば、コードネームを知らなくってもある程度使いこなすことができます。
  • コードトーンの半音上の音を付加する行為は、サウンドが大きく乱されることを理解したうえで行うことが望ましいです。
  • 自分にとって好ましいテンションの用法をストックしておくと、実践/学習の両面において有用です。
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