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NI Massive Xの機能予測! 解剖と分析

By 2019.06.28プラグイン

この記事は、公式にスクリーンショットが公開されるよりも以前に作られた予測記事です。

Native Instrumentsの主力製品である巨大パッケージ、Kompleteがアップグレードされましたね!

KOMPLETE12 発売

アップグレード内容には、KONTAKTのメジャーアップデートや新音源追加などが含まれますが、やはり目玉は何といっても、ソフトシンセ界の王者Massiveのアップグレード版、Massive Xでしょう!

Massive Xとは

Massive XはまだKOMPLETEには含まれておらず、来年2月ごろリリース予定。KOMPLETE購入者はリリースされ次第それを入手できるというわけです。

その全貌は未だ明かされておらず、外観が公式動画で1秒ほどチラッと映っているのみ。

現行バージョンとは全く違うライトなデザイン。とても気になります。来年2月なんて、もう待っていられないじゃん!!😡

Massive Xのプレビュー映像

そこで今回なんと、独自ルートからMassive Xの高画質プレビュー映像を入手しました!それがこちら。

根本の構成は変わっていないですが、どこを見ても大幅に進化していて、もはや別のシンセという感じですね。そしてMassiveらしからぬこの強烈なアナログサウンド! 新境地に突入しています。

・・・・・・

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なんてね。ごめんねウソです。いくらなんだって、発売4ヶ月前に製品をテスト出来る独自ルートなんてあるわけない。これは実は、Massive Xを再現したテーマを着せたU-he Bazilleなのでした。動かせるノブもカットオフとレゾナンスだけ。あとは全てハリボテ。

ちょっと悪ふざけが過ぎましたね。再現画像を作っていたら、どうしても動いて音が鳴っている姿を拝みたくなって・・・。でもここからちゃんと本題に戻ってマジメに分析するのでお赦しください。

Massive XのUIをチェック!

動く実機こそなかれ、公になったスクリーンショットを元に高画質の再現画像を作ったのはほんとうです。まずはそれをご覧いただきましょう。

ドン!

一部、映像の粗さから文字が判読できず、適当な文字列を当てている箇所がありますし、ホンモノはもっと細部のデザインが細かいですが、そういった点を除けば全てそのまま再現されています😎
見ているだけで、想像が膨らむ・・・・・・

ちなみにトレイラー映像では、この下部にさらにフッターバーのようなものが見受けられるのですが、ちょっとよく分からないのでここは割愛しました。

なんかレイヤー1・2・3・4みたいな番号と、12個のタブがあります。4つ設定を保持しておけるのかな?なんだろう。

それで、基本的な特徴を簡単にまとめると、こんな感じだ。

  • 3つのFXスロットや、ENV・LFO・PERFというモジュレーター構成は変わらず
  • アサインしたモジュレータがノブの下に小さく表示されるシステムも同じ(ただし頭文字が付いて分かりやすくなった)
  • フィルターが1基しか見当たらない
  • 現行バージョンの青みがかった配色とは正反対の、黄色よりのデザイン
  • アンダーラインのあるテキストは、押すとメニューが表示されるものと思われる
  • マクロが16個に増加 (現行バージョンでは8個)
  • ゴリラが2頭に増加 (現行バージョンでは0頭)

配色と配置がガラッと変わったために大きく異なって見えますが、実際の中身は、ver1を正統に引き継いでパワーアップしているという所感です。
ちなみにデフォルトのGUIサイズは、「1200×730」がベースになるのではと推測します。ライトな層にもリーチする看板商品なので、ラップトップおなじみの解像度「1280×800」に収まるサイズにするだろうし、それからこのサイズで作業をしているとノブ同士の間隔が40pxや50pxなどキリのいい数字になることが多かったのでね・・・。

それでは各パーツをさらにズームインして覗いてみましょう!

OSCをチェック

シンセサイザーの中核部分、OSC。「Ratio」「Filter」「InvPhs」「Aux」は文字がよく読めなかったので定かではありません。

この2OSC構成は、やっぱりSerumを彷彿させますね・・・

スライダーが音量だと思います。そうなるとRatioの位置にあるノブが音程を表していると考えるのが妥当かな?
ゴリラはまじで謎ですね。しかもゴリラの下にアンダーラインがあるので、動物がえらべるということだ。ウサギとかペンギンが選べるのかもしれない🐰🐧

サウンドの質感を直感的にコントロールするパラメータか、あるいはフィルターに近い機能を果たすのかもしれない。なにせフィルターが1基しか無さそうなので、ここでかなり音をシェイピングするという構造もありえそうです。

ゴリラの下のKingもナゾですが、その下のX2は、ユニゾンのボイス数じゃないかな😈

波形が見える

中央の巨大な円形モニターがWave Formを示していることは間違いない。そこに波形が表示されているのがポイントですね! ここはやっぱり、モジュレーターによって値が変化した際には、それに応じて波形が変化することを期待します。Serumみたいに、ウネウネ動いてもらいたい。

今はモニターの上に「Wavetable1」「Wavetable2」と書かれていますが、きっとこれは試作段階だからで、実際にはここにWaveformの名前が表示されるはずです。そして、その波形名をクリックするとメニューが表示される。

こういった感じの何かを予想

この統一されたアンダーライン・システムのUIからすると、ウェイブテーブルファイルを自由に読み込めるタイプでは無いような気がします。
Massiveは“Less is More”を体現したシンセですから、新バージョンでも勇気ある選択としてファイル読み込み無しというコースも、十分あり得そうですよね。

モードが選べる

最大のポイントは、「Dual Wavetable」のラベル自体にアンダーラインがあるので、OSCの編成自体が数種類用意されているであろうことです。U-heのDivaみたいに。そうであればなかなかレアケースです。

とはいえ、そんなにたくさんのモードは積めないでしょうから、3-4個じゃないかなと思います。

一番有力なのが、「2基じゃ足りない」という要望にお答えして現行バージョンと同じく3OSCというパターン。あと淡い期待としては、Razorの加算合成システムが組み込まれたらいいな〜〜〜〜😇

フェイズ・モジュレーション

下部のTriangle、Sawtoothのところは、PMとあるのでフェイズ・モジュレーションをかけるところだ。

ただ、Sub OSCパートが他に見当たらないので、ここの波形をSub OSCとして使うことも可能なのではないでしょうか。真ん中のAuxノブが怪しい。

Noise・Filterをチェック

ノイズ部分はシンプルですね。でも2基に増えている!これは強い。そして、元から「Paper」や「Murmur」のような特徴的なノイズを保有しているMassiveですが、Massive Xでは「Water」のようなさらに新しい波形が加わるというわけですね。

フィルターの方は、まず「FX」と呼ばれているのが気になります。フィルター以外のものが選べるのかも。
それから、「Ladder」というモードの存在。Ladderというのはフィルター回路の方式のひとつで、Moog系サウンドの代名詞としておなじみです。Massiveといえばバリバリのデジタル系担当というポジションでしたが、アナログ方面にも足を突っ込んできたということだ!
トレイラー動画でも、いかにもアナログ風でFATなベースを鳴らしている場面がありました。より広いサウンドをカバーしようと目論んでいるのでしょう。

右上のやつらをチェック

オレンジで「4」の数字がModにアサインされていますが、この「頭文字無し」のModは、マクロですね。

一番左、タイトルなしのABCのモジュールは、現行で言うところの「Modulation OSC」でしょうか? オシレーター同士でモジュレーションをする場所に見えますが、回路図で示されているところはなんともマニアックな感じ。

Cの「Dist」は、文字が粗く判然としなかった箇所なのですが、ここが現行の「Insert」に当たる部分じゃないでしょうか。

エフェクター部はずいぶん豪華なUIになりましたね! 挿せるのが3つまでというのは変わらないけど、現行では3つ目がEQで固定だったのが、Massive Xでは変えられそうですね。
ディレイのSyncテンポは、元映像を見ると「5/32」とか「3/64」にしか見えなかったのでこうなりましたが、本当にそんなヘンテコなリズムでSync出来るのかはナゾ。これも試作段階でとりあえずなのかもしれない。

真ん中バーをチェック

中央には、主にモジュレーター群が列挙されたバーがあります。
E4・L1・L2のところが白い四角で囲われており、そして下部にはENV・LFO・LFOが表示されているのですから、ここは下部に表示するものを選ぶタブバーと見て間違いない。
Massiveの使いづらい点のひとつとして、「モジュレーターがどれか1基しか表示できず、何度もクリックする必要がある」というのがありましたから、3基表示されるようになったのは大きな改善です。

また、その白四角が「L1」「L2」のラベルまでは覆っていない点にも注目。アイコン部分をクリックすればそのタブへ移動、対してラベル部分はドラッグしてMODのアサインに使われるのでしょう。

ENV4をチェック

「Slope」「Peak」「DAHO」は正しいラベルかどうか微妙です。

ENV4には「Standard Envelope」と書かれていて、アンダーラインがありません
きっとENV4が音量と直結する基本ENVのためStandard以外が選べず、裏を返せばENV1〜3は別のモードが選べるものと推測されます。そうじゃないとわざわざ「Standard」とは書かないですからね。

MSEGに期待

そうするとやっぱり期待するのは、自由にカーブが描けるMSEG(MultiStage Envelope Generator)ですね!

こんな感じ。U-he Zebra²や、Sonic AcademyのANA、Serumにはコレがあります

MSEGなら、「最初だけゆっくりヴォーと入ってその後はNOTE ONの間ずっとヴォイヴォイを繰り返す」なんていう動きも、簡単に作れます。コレが搭載されれば、より複雑に動くサウンドも作り放題🐳🐳

LFOをチェック

「Rise/Fall」「MIX」は、たぶん読み間違いです。解読できませんでした。

現行ではLFO・STEP・PERFを選択する形でしたが、XではStepperがLFOの子分となり、PERFは独立という形に。
Stepperはアルペジオフレーズを作るのによく使いますが、現行では数値が表示されず不便でした。それを踏まえてか、Xでは値が表示されています。

また、縦軸のライン1つが1オクターブぶんと思われるので、±24まで値を取ることが出来そうです(現行の2倍)。また、+/-のボタンでBipolar/Unipolarを選べるようす。StepperをUniにすることはないと思いますが、ノーマルなLFOをUniに出来るのは便利ですね。

「Mixed Ring」の方は、通常波形を1つしか選べないLFOにおいて、Modによって波形をmorphできるということでしょう。例えばこのRingをCutoffにアサインし、ShapeにMod Wheelをアサインすれば、通常は三角波型でCutoffを揺らすところを、Mod Wheelを上げた時だけはノイズ型で揺らすようになる。みたいなことが実装可能ですね。

さて、各モジュールの解説はこんなところ。今のMassiveが持っている抜群の操作性はキープしたまま、足りなかった部分がよく補われている印象です。

Massiveとの互換性は?

MassiveとMassive Xが別々のプラグインとして並行インストールが可能らしく、後継製品ではないとのこと。ただ肝心なのは、現行のプリセットをXで読み込めるかどうかですよね。これについては、肯定と否定の両方の材料があり、五分五分とでもいったところです。

肯定要素

実際にMassiveは、過去に.ksdという形式から今の.nmsvという形式へ移行していて、MassiveにはKSDをNMSVにコンバートする機能が備わっています。ゆえにMassive Xでも同様に、「.msvx」のような新しい拡張子と、.nmsvからのコンバータが用意されることは十分に期待されます。

また商業的に見ても、いま流通しているサードパーティーのプリセットが全く使えないとなると「アップグレードしたって、これまで買ったプリセットが使えないんだったら微妙だなあ。買うのやめるか」となってしまうわけですから、現行バージョンとの互換性というのは、既存ユーザーにアップグレードを促すためには無視できない要素です。

否定要素

ただ、OSCとフィルターが1基ずつ減っている点が、互換性においては大問題になります。Massiveのパラメータを再現するには、まずOSCモードのひとつに”Legacy Triple OSC”が搭載されること。何らかの形でデュアル・フィルターが搭載されること。この2つが必要条件です。

例えばこんな風に、OSCモジュール内にも3OSC+2Filterを格納するだけのGUIスペースは一応あります。ただ他にもFilter Mixなどのパラメータがあるし、現行バージョンの設定を全て引き継ぐのはなかなか大変そう。せっかく全面的な刷新をしたのに、果たしてそこまでして互換性をキープしてくれるのだろうかというと疑問です。

むしろMassiveほどの地位になると、商業的にも逆に「お前ら過去にしがみついてないでMassive X用のプリセット集を作れ!最新のサウンドなんだから、売れるぞ!」という強気のパワープレイに出るかもしれない・・・😑

今後大きな変更の可能性も

もちろん、これは現段階でのプレビューにすぎません。そもそも、公式動画内のMassive Xもただの一枚絵である可能性だってあります

トレイラー映像では、Logicの画面にMassive Xが鎮座していますよね。でも本当にLogic上で起動しているなら、Logic既製のウィンドウ枠に囲まれるはずです。


偽Massive XをLogicで起動した場合

しかし映像のMassiveXには枠もないし、インサートの名前も「Massive」です。また映像中でMassiveXは微動だにせず、Logicも再生ボタンが押されていません。それに、たかだか15インチのMacBookに対してMassiveXの画面が小さすぎるし、Dockにアイコンが表示されすぎている。

KOMPLETE発売にどうにか間に合わせるために、27inchのiMacかなんかで一枚絵のGUIだけ作って、Logicのスクショをとって、MassiveXを重ねた画像をMacBookに送って、その画像をフルスクリーン表示。それっぽく見せただけかもしれません。世の中はフェイクであふれているのだ・・・。

まとめ

「これからの10年を担う新世代ソフト・シンセ」なんて紹介されていましたが、それほどの期待を背負うNIの代表シンセにしては、外観が攻めまくっているなというのが率直な感想です。オーガニックな配色、ポップなデザイン、そして2頭のゴリラ・・・。

ただ今のKOMPLETEの立ち位置というのは、「これ一個でぜんぶ揃う」という、ある意味ビギナー向けの製品ですから、よりライトな層にアプローチしていく狙いがあるのかもしれません。明確に上下に分けられたGeneratorとModulator、大きくなった波形ディスプレイ、ひとつに絞られたフィルターといった変更点も、「Massiveって構成が複雑で分かりづらい。初心者にはKOMPLETEはお勧めしない」といった意見を受けての返答のようにも思えます。

ここ数年でSerum、Spire、Avengerといったライバル製品がドンドン現れてくる中で、単にこれまでMassiveが築いてきた電子音楽界の名声を保守するのではなく、「KOMPLETEの看板シンセ」としてMassiveがどうあるべきかを考え、ソフトシンセ界に新しい価値観を提示しようとしている感じがします。

Ladderフィルターのようなアナログ方面への展開も、Guitar RigやStudio Drummerを使うようなバンド系音楽に合うサウンドまでもMassiveでカバーしようという気持ちが伺えます。Massiveを、「どんな人間でも、どんな音楽にも使える」存在にしようというNIの気概を私は感じました。

発売まで、待ちきれませんね!☺️