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前回、コードスケール理論の基盤となる、メジャースケール由来の7つのモード(≒コードスケール)を学びました。
モードはまだまだたくさんありますが、数ばかり増やしても、知識が浮ついてしまいます。まずはこの7つで、やれることをやりましょう!
7つのモードでどうにかなる範囲、ならない範囲。そういうところの確認も兼ねつつ、今日はコードスケールの仕組みに慣れる回です。
1. 二次ドミナント
例えば最も初期に登場したコード群である「二次ドミナント」たちに対応するコードスケールを考えます。まずはおなじみ、「ダブルドミナント」から。
モードを考えることは、そのコードの音楽的意味を考えることに直結します。ダブルドミナントはそもそも、Vのコードに対する強進行元として、属調から連れて来られたドミナント・コードでした。そうした点を踏まえると、D7に対応するモードは、ドミナントセブンスを象徴する第Vモード、「Mixolydian」だと分かります。
同じようにして、FΔへと流れる二次ドミナント、C7についてもMixolydianで対応できます。
C7上で演奏をする時のことを想像してみてくださいね。このスケール、あるいはテンションで演奏できますよね。
E7の場合
しかしE7→A-7の場合は話が違います。試しに「E Mixolydian」をチェックしてみると…
見てのとおり、Cにシャープが付いちゃったりしてて、まああまりこの音階で演奏はしない……少なくとも第一・第二候補に挙がるような音階ではないですね。なぜE7の場合はうまくハマらなかったのでしょうか?
考えてみれば、この「Mixolydian」は、あくまでもメジャースケールのVを象徴するモードです。でもE7の進行先はAマイナー。つまりE7はマイナーキー系列の二次ドミナントなのです。これは「ドミナント・コード上のテンション」にて述べた話と大きく関わりがありますね。
- 解決先がメジャー系 = 9th・13thの方が解決先に忠実
- 解決先がマイナー系 = ♭9th・♭13thの方が解決先に忠実
Mixoはノーマルな9th・13thなので、マイナー系列の二次ドミナントとは相性イマイチなのです(決して演奏不可能ではありませんが、例外的です)。手持ちのモードでは、このIII7に対応できるものを持ってくることができません。マイナースケールを親に持つモードを学ばないといけないのです。
Check Point
コードクオリティが同じで由来が似たようなコードであっても、ルートの位置や進行先のコードクオリティにより、2・4・6度の音の取り方は異なる可能性がある。したがって、「ドミナントセブンスならなんでもミクソリディアンで対応」というわけにはいかない。
Mixolydianに対応しているコードは、厳密にいえば「7(9,13)」なのである。同じドミナントセブンス系でも、♭9thや♭13thを取るコードに対しては、Mixolydianは適用できない。
こういう失敗から人は学んでいくものです・・・。ですから、けっきょくはディグリーごとに異なる「第一候補コードスケール」が基本的にはあるということですね。別の場面を考えてみましょう。
2. パラレルマイナーコード
次に題材に取るのは、同主短調から借りてくるパラレルマイナーのコードたち。たとえば、ミがナチュラルのままで使うことの多い、IVのマイナーメジャーセブンス。
これもCSTで論じれば…と言いたいところですが、このコードも明らかに、手持ちのモードでは処理できません。「マイナーメジャーセブンス」というコードクオリティに対応するモードが、メジャースケールのダイアトニック・モードの中にひとつもありませんから。やっぱりこれも、もう少しモードの所持数を増やさないと対応できないのです。残念。
では、♭VIIΔはどうでしょうか? こちらもミにはフラットをつけずに使うことがよくあるんでしたよね。
これは実は、手持ちのモードで対応させられます。考えてみましょう。メジャーセブンスと対応するコードで、シ♭のルートに対するミという特徴的なインターバルが乗るといえば…
…
そう、Lydianですね。
以前紹介した「モーダル・インターチェンジ」でこのコードを解釈するなら、このコードは「Cミクソリディアンスケールからの借用」と説明します。しかしCSTの枠組み内では、そのようにペアレントスケールを基準には考えません。「何キーだか判らない状態でも正確な演奏ができるようにする」のが目的なのだから、当然です。
CSTにとっての“基準点”はキーの主音ではなく、コードルートです。シンプルにルートからみて、「このコード上ではリディアンを弾けばよい」としか考えません。「キーからの離脱」というのが、常にCSTの根本理念になります。
3. Related IIm
では、ついこないだやった「Related IIm」はどうでしょうか? これは、あらゆるドミナントセブンスコードを「V」と見立て、それに対する「ii」を手前に挿して、「Two-Five」を完成させる技法でした。
これについてはシンプルで、Two-Fiveを形成しているわけですから、IImを司るDorianが常に対応しています。CSTのフレームワークを習得することで、「たとえ何調だろうと、ii-VといえばDori-Mixo」なんていう風に、転調にたじろがずアドリブ出来る頭脳を作り上げることが出来るのです。
ですからTwo-Fiveをひたすら数珠つなぎにしていく「Two-Five Chain」でもやっぱり、「Dori-Mixo」で対応していけます。
ポピュラー向けの理論系でこういうものに対応する場合には、「今は○○キーに転調したということだから、ココとココにフラットが付くから・・・」なんていう処理法になるわけですが、それでは「ここはTwo-FiveだからDori-Mixoで」という処理法にはスピードで絶対に敵わないわけです。まさに即興演奏のために生まれ特化したシステム、それがコードスケール理論なのです。