変拍子の作り方

前回「ポリリズム」を学んだことで、より複雑なリズムの世界への扉が開けた感じがしますね。今回は、リズムで変わったことをするなら何と言ってもコレだという、「変拍子」の紹介です。

§1 変拍子とは

ポピュラー音楽のリズムは、たいていが「4」か「3」を基本にしています。

サンバに代表される「2/2拍子」もまあ4拍子と似たものですし、「6/8」も3と4の複合拍子でした。

一般的な音楽で使われるこういった拍子以外の拍子を、「変拍子」と呼びます。1

リズムは音楽の根幹であり、これを複雑化するということは、大衆性を大幅に失うことを意味します。ですから大衆向けの音楽で変拍子が用いられることは珍しく、もっぱらプログレッシブ・ロックやジャズのような技巧的な音楽で使われます。

§2 変拍子を聴く

「変拍子」の曲を作るには、既存の拍子を組み合わせたり、拍を足したり引いたりするのが基本です。

7拍子

4拍子と3拍子をくっつけたり、4拍子×2から1拍引いてリズムを構成すると、出来上がるのが「7/4拍子」です。変拍子の中でも使いやすいのがコレです。

通常の4拍子×2よりも進みが急速なので、スピード感や焦燥感、緊張感といったものを演出しやすい傾向にあり、表現とも結びつけやすいのがこの7拍子。
歌モノでは、サビのキャッチーさを確保するためにサビだけ拍子を変えるというパターンもあって、上で言うと「scat」はサビがノーマルな4拍子です。

歌詞を活かした7拍子

こちらは7つの曜日がテーマだから7拍子というウィットに富んだ一曲。1:12からの曜日を連呼するところは、月火水木金土日とゆっくり言うところは綺麗に「7拍」使いますが、倍速早口の方は当然半分の「3.5拍」で言い終わってしまうため、バックトラックと歌で周期がずれてしまうというポリリズムの技法も併せて使われています。終盤ではさらに、ひとつの曜日に1.5拍使うパターンも織り交ぜて、よりリズムを複雑にしています。

5拍子/10拍子

3拍子に2拍子を加えたり、4拍子に1拍加えたりして作るのが5拍子です。5拍子は、7拍子よりもノリが難しく上級者向け。

ホルストの「火星」や「スパイ大作戦」は、独特な5拍子のリズムなのですが、印象的なフレーズを何度も何度も繰り返すことでリスナーが馴染めるように工夫していることが分かります。こういった聞き手への配慮が、変拍子では重要になりますね。

「Lark’s Tongues in Aspic, Pt.2」は、6/8のリズムがベースでそこに4拍加わっている形なので、「10/8拍子」ということになります。

その他の変拍子

変拍子は、いくらでも考えられます。7拍子や5拍子のような定番パターンを超えて、さらにクリエイティブな拍子に挑戦している曲もあります。

こちらは日本の代表的なプログレバンド「KENSO」の曲。サンプル冒頭のフィルインのあと「11」→「9」→「11」→「9」→以降ソロパートはずっと「9拍子」という恐ろしい構成になっています。

9拍子のところのリズムは、こんな感じ。もしコレが単純に3拍子×3=9拍子ということであれば、「変拍子」と呼ばれることはありませんが、このリズムは、4拍子がベースなのに、ちょっとズレたりしていつの間にか9拍子になっているということで、まぎれもない変拍子です。

4と2の複合

4拍子と2拍子を組み合わせたような拍子は、パッと聴いた感じはそこまで変な感じがしないのですが、コレも広義の変拍子と言えるでしょう。

こちらの曲は4+2の6拍子で構成されています。3+3の6拍子とは違うというのがポイント。「4のリズム」と「2のリズム」が交代交代で登場するので、なんとも不思議な感じに聴こえます。

こちらはメロの部分が、2+4+4の10拍子という、非常にユニークな編成になっています。

この「4と2だけ」というのは、「聴き慣れている」と「聴き慣れない」が同時にやって来るので、なんだか化かされたような不思議な気持ちになれるのが魅力です。

変拍子じゃないけど変なリズム

ようは拍の総数ではなくアクセントの位置どりが重要であるというのが、ここまでで何となく見えてきたと思います。ですからこの世には、「総拍数で言えば普通だけど明らかに異常なリズム」というような曲もあります。

こちら1969年のフランク・ザッパの作品。メロディが不規則で、拍子が無いように思えてしまうのですが、実は全て3拍子のサイクルが基準になってパートが作られています。つまり、アクセントの明示が曖昧なため普通に聞いていると3拍子とは受け取れないのですが、各パートはみな3の倍数の拍数で構成されていて、それを踏まえて聞くとある程度3拍子の曲として聞こえてくるようになっているのです。

こちらも基本はずっと普通の4拍子なのですが、サウンドが途切れ途切れでランダム性が高いため、かなりトリッキーに聴こえます。混沌と秩序の融合という感じですね。曲が進むにつれて全体像が見えるような構成になっている、極めて高度な作品です。

こちらはミニマル・ミュージックというジャンルを築いたスティーヴ・ライヒの代表作。これも確実に拍子はあるのでしょうが、スパンが長すぎて何拍子か分かりません。これは「変拍子」というのとは明らかに別の次元の試みですけど、せっかくなので紹介しちゃいました。