目次
4. オンビート/オフビート
さて、これまで○○ビートと名のつく用語はたくさんありました。8ビートに16ビート、バックビートに、ダウンビート/アップビート。しかし最後にまだもう1セットだけ紹介しなくてはいけないのがあって、それがオンビート/オフビートという言葉です。こちらは解釈に幅のある用語で……
なんだか意見が割れています。これはどちらかが正しいと考えるより、話の文脈によって指すものが変わると考えるのが妥当でしょう。
ONは“くっつく”、OFFは“離れる”が、英単語としてのそれぞれのイメージです。だからオンビート/オフビートが本質的に意味するのは、あるグリッドに対して音がぴったり乗ってるか、離れてるかということ。そしてのその「あるグリッド」が何かというのは、話題によって変わってきます。
強拍/弱拍に対応するオン/オフ
たとえば強拍/弱拍について論じてる際は、1・3拍めにぶっといグリッドラインが引いてあるような状態ですよね。その目線で言えば、強拍がオンビート、弱拍がオフビートと言えます。
バックビートは、この強拍/弱拍というスケール(=1/4グリッド)で見たときのオフビート表現となります。
表拍/裏拍に対応するオン/オフ
一方で表拍/裏拍を論じているときは、1拍ごとの線が太いグリッドラインとみなせます。この時には、そこに沿ってる表拍が「オン」、沿わない裏拍が「オフ」となります。
裏拍でハイハットをオープンするこのパターンは、表拍/裏拍のスケール(=1/8グリッド)で見たときのオフビート表現となる。
このように、いま論じているグリッド線に乗ってるか乗ってないかを指す言葉として捉えるのが最も実情に合っているでしょう。
- オンビート/オフビート
- 任意のリズムのグリッドラインに対して、ぴったり乗っている音と、そこから離れている音。狭義には、あるグリッド幅を分割した際の、最初の1区画とそれ以外1。
というか、単に強拍/弱拍か表拍/裏拍のどっちかを指す言葉だとしたら、わざわざ重複してこの言葉が存在する意味がないですからね。
より細かい目線でのオン/オフ
こうしたグリッドに乗ってる/乗ってないの認識から派生して、もっと細かな1/64や1/128など本当にわずかなレベルでリズムグリッドからズレた音のこともオフビートと呼ぶ場合があります。
こちらの音源はドラムやベースの打点の多くがグリッドから微妙に後ろにずれていて、それは1/64やそれに満たないくらいの小さなずれなのですが、あえてリズムの枠組みにキッチリはめないことでリズム感に揺らぎを作っています。
特にヒップホップのトラックメイクでよく行われている技法ですね。「裏拍」や「弱拍」を指すときのオフビートとは全然違う言葉の使い方に思えますが、結局「グリッドに乗ってるか、乗ってないか」という意味だと捉えれば、同じことです2。
というわけで、これまで紹介してきたビート(拍)に関する用語をまとめると、以下のようになります。
ことば | 定義 |
---|---|
強拍/弱拍 | 拍子の1・3拍目と2・4拍目(4拍子の場合)。 |
ダウンビート/アップビート | 1拍を分割した前部と後部。表拍と裏拍。 |
オンビート/オフビート | 任意のグリッドを分割した前部と後部、または単なるグリッドからのずれの有無。 |
バックビート | 2・4拍目にアクセントを持つリズムのこと。 |
これは割と現場での言葉の使われ方を重視した見解で、カジュアルな部類の言葉使いになると思います。なんだかややこしいですが、理論的なリズム談義をするのでもなければ、「オモテ・ウラ」という言葉さえ覚えていれば日常で困ることはそうそうないでしょう。
まとめ
- 1つの拍を二分割した時の、前の方を「表拍」、後ろの方を「裏拍」といいます。
- 「ダウンビート・アップビート」は本来「表拍・裏拍」を指す言葉ですが、そこから派生し「表拍にアクセントを置いた演奏・裏拍にアクセントを置いた演奏」のことを指す場合もあります。
- ダウンビートとアップビートは、重力的な重さ・軽さと連想して考えると実践的です。