目次
1. 五度圏を知る
音階の話をした時に、わざわざ全半を数えなくても、どこに♯・♭をつければいいか瞬時に分かる便利アイテムがある、というような話をしました。
それが五度圏Circle of 5thです。「五度圏」は、調やコードの勉強をするにあたって何かと役に立つアイテム。まずはその姿をご覧になっていただきましょう!
1オクターブに、音は12音あります。7つの白鍵と、5つの黒鍵。「五度圏」は、その12音を時計のように円状に並べた図です。流派によっては、左右が逆さまになっているタイプのものもありますが、まあ本質的には同じです。
そのアルファベットの並びがなんとも不思議な順番ですが、この「五度圏」は、実は作曲の時に使う様々な情報を与えてくれる、いわば「円盤形の音楽事典」とでも言うべきものなのです!
どういうことなのか、具体的に見ていきますね。
2. 五度圏の使い方
五度圏のいちばんよくある使い方は、調号を元に中心の音を調べる、つまり調の名前を調べることです。例えば、時計でいう3時のエリアをご覧ください。
3時のエリアには、「♯が3つ書かれた楽譜」と、「A」「F♯m」という記号が描かれています。それぞれの意味は・・・
- A・・・「Aメジャーキー」の意味
- F♯m・・・「F♯マイナーキー」の意味
つまりコレが意味するところは、「楽譜に♯3つの調号が書いてあったら、それは長調ならAメジャーキーで、短調ならF♯マイナーキーだよ」ということなのです。
そして五線譜のファ・ド・ソの位置についた3つのシャープは、Aメジャースケール/F♯マイナースケールを演奏する時にシャープをつける場所を表しています。
調号を元に、調の判定ができる。それから、ある調を演奏するときにどこを黒鍵にすればよいのかが分かる。これが五度圏の活用法のひとつです。
逆に、何らかの場面で「この曲のキーはA♭メジャーキーだから。あとはよろしく」なんて言われた時に、どんな音を基本に使ったらよいのか? そういう時にも使えます。五度圏でA♭メジャーキーは、8時の方向にあります。それで確認すると、シ・ミ・ラ・レに♭をつけた音階が基本になると言うことが、一目で分かるのです。
コレがあれば、いちいち「全・全・半・・・・・」とかいって段差を数える必要は無くなります!
そんなわけで、調や音階という「概念世界」と、打ち込みや演奏といった「現実世界」を結びつけてくれるのが、この五度圏。これ以外にも、コード編に進んだ時にこの五度圏は大活躍することになります。
3. キーの判定
ついにこの重要アイテムをゲットしたわけなので、ちょっと「キーの判定」を練習してみましょう。今回は、自分で作った曲のキーを判別して、それを元に伴奏をつけるというシチュエーションを想定します。
こんなメロディが出来たとしたら、分析を試みます。まず頼りになるのが、「黒鍵を使っている位置」です。それから、耳で感じる「トーナル・センターの位置」。この2つの情報を総合して、キーを調べていきます。
メロディラインはこんな風になっていて、ファとドにだけシャープが付いていることが分かります。ファ♯とド♯。
ソ♭とレ♭ではありません。まずナチュラルのソとレが鳴っていますし、それに「ソとレに♭」というパターンが存在しないということが、五度圏を見ると分かります。
逆に、「ファとドにシャープ」ならば、時計で2時の方向、Dメジャーキー/Bマイナーキーがあるので、このキーが極めて怪しいです。さらに聴覚で、DかBの音がトーナル・センターだと感じられれば、もう間違いなし!ということになります。
ここまで来れば、「Dメジャーなのか、Bマイナーなのか」については、どちらかに決める必要はほとんどありません。「レラティヴ」な関係にある2つの境目があいまいであることは、すでに何度も述べていますよね。
キーが分かったらば、全パートでファとドに♯をつけて伴奏を作ればよいわけです。
こんな感じだ! この伴奏なら、ちょっとメロウな感じはしますが、明るいコードが中心になっているので、「Dメジャーキー」と判断するのが一般的でしょう。
成功率100%ではない
ただし、曲によっては、ほんの一時的に使う音階が変わったりする場合もあるし、西洋理論の範疇だけでは解釈しきれない音楽だってある。このやり方で100%キーを当てられるわけではないということは理解しておいてください。やはり、キッチリ曲を分析するには、コードの知識が必要になってきます。
NO五線譜バージョン
五線譜が苦手な人のために、念のためピアノの鍵盤でキーを表現したバージョンも用意しました。
五度圏は、他にもコード理論を覚えていく中で様々な手助けをしてくれるアイテムになります。今後もちょこちょこと登場することになります。
たまに配置が左右逆になったバージョンも見かけますが、左右がどちらでも、意味上の違いはありません。また、名前についても「五度圏」ではなく「4度圏」と呼ばれたり、英語でも「Cycle of 5th」「Circle of 4th」「Cycle of 4th」など色々な呼び名がありますが、いずれにせよ意味するところは同じです。
五度圏で“カンニング”をすることで暗記の負担を減らすことが、学習初期において挫折を防ぐカギのひとつとなります。ぜひ活用してください。
まとめ
- 調号の一覧をまとめた「五度圏」という図があります。
- 「五度圏」を見れば、調号から調や主音を割り出したり、逆に調を言われたときどんな音階を使えばいいかがわかります。
- 「五度圏」には、音楽の世界を見渡すヒントがいくつか隠されています。