目次
II章に入って基調和音以外の新しいコードたち、すなわち「基調外和音」が増えてきました。この記事では、基調外のコードに対して接続系理論をどう使用していくのかを解説していきます。
1. 接続系の確認
改めてそれぞれの接続系統の特徴は次のようなものでした。
系統 | 意味 | 特徴 |
---|---|---|
2▲2▼ | 2度上/下 | 穏やかでスムーズ、色彩豊か |
5▲ | 5度上行 | 明快な推進力、個性的 |
5▼ | 5度下行 | 明快な推進力、かつ聴きやすい |
3▲ | 3度上行 | 音色変化が少なく、独特の浮上感 |
3▼ | 3度下行 | 音色変化が少なく、安定している |
こうした分類と分析を、基調外和音に対して当てはめていくのが今回の主旨となります。
2. 基調外和音の接続系
さて基調外和音に関してもモノの見方は同じで、「コントロールファクター」であるクオリティとルートがどう変化しているか、またその結果として共通音はいくつ発生しているかという観点が重要になります。いくつか例を見てみましょう。
II→IVの接続
たとえばII→IVは3▲で、やはりIIm→IVと同種のフワッとした浮上感を持っています。「マイナーからメジャーへの明転」というドラマはなくなり、しかしその一方共通音が1音に減っているため、その意味では質感の変化は若干増します。
IVm→Vの接続
IVm→VはIV→Vと同じく2▲ですが、ただ短→長と動くので、そこに転換の動きが感じられ、よりドラマチックな展開になりますね。
ですからただのIVVではエネルギー量が足りないと感じられる時には、IVmに変えるのが効果的、なんていう風に言えそうです。
フラット系ルートの接続
新しいルートを持つVIやVIIにしても、そこまで違いはありません。
- VI→Vは2▼。長短の変化もなくて半音差なので、かなりスムーズな動きです。
- VII→Vは3▼。聴いてみると確かに、基調和音での3▼と同様の、落ち着いた展開性を持っていることがわかります。ただしシにフラットがつくために共通音が1音しかなくなっており、その点に関してサウンドの変化が若干大きくなっています。
特筆すべき点として、フラット系ルートはいずれも半音下行してスムーズに進行するパターンがありますね。半音のモーションは2度進行の中でもさらに1ランク上のなめらかさを持っていますが、基調和音内だとIIIm⇄IV間にしかありませんでした。それが一気に3つ増えることになります。
クオリティの変化、ルートの変化、それに伴う共通音の多寡。これらはいずれもキーに依存しない情報なので、キーから外れた基調外和音であっても、その接続を変わらず分析することができます。
スラッシュコードと接続系
分子と分母で内容が分かれている「スラッシュコード」をどう判断したらいいのかも、迷うところですね。理想としてはやはり、分子と分母それぞれで見てどんな接続をしているかを観察するため、接続系もスラッシュを使って2つ書くことを推奨します。
この方が、「サウンド総体の印象としては5▼の明快で安定的な推進力がある、ただそのエネルギッシュさはベースラインを2▲にすることで抑えられている」といった風に、起きていることをより精密に把握することができます。