Skip to main content

接続系理論 ❶ コントロール・ファクター

By 2017.4.12022.03.09接続系理論

1. 6から30へ

さて、TDSの機能論によって、基調和音の繋ぎ方のポイントはいくらか見えてきたと思います。

機能環

TDSの繋ぎ方は全部で6パターン。それぞれの違いを理解することで、曲の展開作りはずいぶんしやすくなったはずです。

しかし、例えば同じSDの動きでも、IVVIImVでは当然ながら聴いた印象は異なります。そしてポピュラー音楽においては、そういう微妙な表現の違いを理解し、使い分けることがたいへんに重要です。

では異なる2つの基調和音を繋ぐパターンが全部でいくつあるかというと、これは6×5で30とおりになります。

30個の接続

実に5倍のボリューム。でも基調和音は曲を作る基礎ですから、この30とおりそれぞれの個性を理解することなしに、先へは進めません。応用的な難しいコードを知ることより、この30パターンをマスターすることの方が遥かに重要です。

従来理論の場合

日本の一般的なポピュラー音楽理論書では、30個全部解説というのはあまり見かけないかもしれません。でも、本格的なクラシックの理論書だったらそれぞれの進行パターンを個別に説明するのが普通です。またジャズ系であっても、30パターンを(簡素ながら)全て解説してくれているものもあります。

しかしながら、そうしたクラシック/ジャズ系理論では、彼らが「禁則」「非推奨」とするコード進行に関してはかなり扱いがぞんざいなまま終わってしまいます。

IVVImIVIIm

こちらは序論で出てきた音源ですが、こういう新しいコード進行に関してはノータッチか、「弱い」「イレギュラー」といった説明で終わってしまって、事実上無視されているような状態です1

見解の相違

でも現実ではこういうコード進行はたくさん存在していて、むしろかつて禁則と言われたものこそ21世紀の音楽ではカギとなります。この現状に対し理論サイドは「理論は破るためにあるんだ」などそれらしいことを言いますが、でも何千曲何万曲と用例があるのだったら、それも理論の内側に取り込んだ方が体系としてはるかに有益で健全でしょう。

そこで、改めて全てのコード進行を平等な目線でまとめ直そうというのが、自由派音楽理論の目指すところなのです。

流派を合併

30人の自己紹介

全30パターンの解説というとなかなか大変に聞こえますが、もちろんこの記事群を読み終わった段階で30個を暗記しろという話ではありません。今日は始業式です。初めて30人のクラスメイトがあなたにちゃんと自己紹介をします。あなたはこれから時間をかけて、一人ずつ顔と名前を覚えていくのです。

だからまず最初は、自分の気に入ったものから覚えていけばよいわけです。あなたの気に入ったコード進行が、あなたの表現にとって重要なコード進行なのですから。

好き嫌い

ここからの内容は、30個をゆっくり覚えていくにあたっての手助けとなる情報だと考えてください。

2. 接続系理論

さて、接続系理論Nexus Systemは、2コードの接続パターンを網羅的に解説する、自由派独自のコンテンツです。

パターンの分類をして、クラシック/ジャズ理論の見解も紹介しつつ、プラスで「かつて禁則だったものたちが今どう活躍しているか」の情報を乗せることで、現代のポップスにもきちんと対応できる知識体系を作ろうという試みです。

分類+伝統+現状

つまり新しい概念を提唱する理論というよりは、過去から現在までの歴史と趨勢をまとめた「まとめ集」的な存在になります。これならクラシック/ジャズの型だけでなくロックやダンスミュージックの型についても理論的にきっちり押さえることができるというわけです!

「接続」とは

接続Nexusという言葉も、やや独自の言い回しです。これはコードの「進行」とほぼ類義語ですが、「進行」がどちらかというと並べたコードそのものに着目する概念なのに対し、「接続」という言葉には2コード間の相対的な変化に着目するようなニュアンスがあります。

接続と進行

とはいえ、概ね同じ意味の言葉として読み進めてもらって差し支えません。

3. コントロール・ファクター

接続系理論はコードが進行した瞬間に起こることを分析します。あるコードから別のコードへと接続した時、そこに生じる変化には何があるでしょうか? 大きなところで2つの要素がポイントになってきます。

コードの長短
ルートの変化

コードクオリティ(長・短)の変化と、ルートの変化です。クオリティがコードにとって重要なことはもう既知だと思いますが、ルートの変化も実はすごく大事です。すぐ隣のコードへ進むのか、大きく離れたコードへと移動するのか、それは曲想に大きく関わります。

それにこのルート変化というのは「コードそのもの」にはなく、「コードとコードが接続する瞬間」にだけに存在するという点で、見落としやすい情報でもありますよね。

ルートの変化の存在

しかしこの見落としやすい場所にこそ、コード進行を理解する大きなヒントが潜んでいるのです。この2つの要素ことを、接続系理論では「コントロール・ファクターControl Factor」と呼びます。

コントロール・ファクター (Control Factor)
コード接続がもたらす効果を決定づける要素となる「ルートの変化」「コードクオリティの変化」のこと。
I章では「クオリティ」はメジャー/マイナーの2択、「ルート」は“簡易度数”で論じるが、後々知識が増えると共に接続系理論もアップグレードすることになる(III章,VIII章にて)。

この2要素を軸にして、コード接続にまつわる様々な情報を取りまとめていくのが、接続系理論のやることです。

実際に、いくつか例にとって観察してみましょう。

コード進行 クオリティ変化 ルート変化
IVV (長→長) 2度上行
IImV 短→長 5度下行(4度上行)

似ていることでお馴染みの2種類のコード進行並べてみました。機能論で言えばどちらも同じSDですが、コントロールファクターを見るとどちらも全く違います。

IVVは同じクオリティが続くし、ルートの移動量も最も少ない2度ですので、コードが移り変わった瞬間の印象というのは、かなり平坦で穏やかなものになります。比べるとIImVの方は、「マイナーからメジャーへ」という質感の変化に加え、ルートの移動量は5度と非常に大きいため、音楽が大きく展開したような、ダイナミックな印象をもたらします。

そうすると、曲想を柔らかく落ち着いた感じにしたい場合はIVV、元気に力強くしたい場合にはIImVの方が良いだろうといった使い分けが自ずと見えてきます。

4-5-1の進行
2-5-1の進行

こちらは実際のサンプル。聴き分けるのが難しい微妙な差ですが、そうだからこそ理論によるサポートが重要だとも言えます。TDSの機能論に加えて「コントロール・ファクター」に基づいてコードの変化を分析することで、より詳細にその特徴が見えてくるのです。

次回はここからさらに話を進めて、ルート変化による分類を元にしてコード進行の性質をどんどん明らかにしていきます。

Continue