接続系理論 ❶ コントロール・ファクター

音楽理論 接続系理論

§1 情報の圧縮と精密性

ここからコード編I章の後半戦が始まりますが、これまで習得してきたことを簡単に振り返ってみましょう。

  • 詳細度数の存在
  • メジャーコード・マイナーコードの存在
  • 六つの基調和音の存在
  • ディグリーネームへの抽象化
  • コードのTDS機能
  • Tへの解決パターン
  • そのほか、II章以降の先取り
    (付加和音、クオリティチェンジ、音の配置など)

基礎を着実にマスターしてきたという感じです! 日本の一般的な音楽理論書だとここからは♯や♭を使った応用的な和音の紹介をドンドン深めていくところですが…

応用的な和音たち

ポピュラー音楽のための理論である自由派には、こういうムズカシイのよりも前にもっと大事なことがあります。それは、六つの基調和音が織りなす様々な曲想についてもっと深く知ることです。

確かにTDS機能を知ったことである程度コード進行の曲想には詳しくなりましたが…

機能環

TDSの連結パターンは全部で6とおり。でも本当は、たとえ同じDTであってもVIIIImIでは、曲想も使いやすさも全然異なるわけです。TDS論はあくまでも、大まかな「型」の理論にすぎません。

30種類の進行パターン

ちゃんとそれぞれのコードの個性を考えてあげるとしたら、六つの基調和音で作れる2コードの連結パターンは、6×5ですから全部で30とおりあります。30種類の曲想を、TDS論は6パターンにまとめあげている。つまりはコード連結に関するデータ量を1/5にまで圧縮してくれていると言えます。

圧縮

しかしそれは裏返すと、1/5に圧縮してしまっているということでもあります。

やっぱりポピュラー音楽においては、この基本30種がもたらすカラーバリエーションを理解することはとてつもなく重要です。ジャズやクラシックと比べたら概してシンプルな音楽性が求められますから、発展よりも基礎に重点を置いてしかるべきです。

ですから自由派では、応用へとズンズン進んでいく前にこの30種の連結をトコトン解説するという学習順序を選びます。それがこのI章後半戦なのです。もしこの部分はセンスでまかなって、「勉強するなら応用的なものを優先したい」と思うのであれば、このセクションを丸々飛ばすという選択もアリかもしれません。

従来理論の場合

古典派クラシック理論では、TDSに話を任せず基調和音それぞれの進行パターンを個別に説明するのが普通です。TDS機能論が生まれる150年前からある理論なのだから、当然です。そしてジャズ系理論であっても、詳しさ重視のコンテンツなら30種類の進行を全て解説してくれているものもあります。

しかしながら、従来理論の内容だけではちょっと物足りない。というのも、ロックンロール以降に一般的となった進行が過小評価されているからです。

IVVImIVIIm
見解の相違

序論のこの話に繋がります。こうした現代風のコード使いに対し、そもそも進行の紹介をしないとか、「弱い進行である」みたいなヤンワリしたディスり方で説明するため、「弱い」とダメなのか、どう使い分けたらいいのかなど肝心なところが分からないという問題です。1

そこで、多様性の時代である今、改めて全てのコード進行を平等な目線でまとめ直そうというのが、自由派音楽理論の目指すところなのです。

流派を合併

国語辞典はいつだって「新語」を取り入れて進化しています。音楽の辞書である音楽理論も、新しいものをドンドン取り込んでいくべきですよね。自由派が新しく編み上げた”基調和音の進行辞典”が、「接続系理論」です。

§2 接続系理論

接続系理論Nexus Systemは、2コードの接続パターンを、歴史的・文化的側面も含めて解説する、自由派独自の理論です。
既存理論の解説はそのまま継承する一方で、「弱い進行」と呼ばれてしまったものたちにもスポットライトをあてて、その効果的な使い方を紹介します。30パターン全てを「対等」かつ「網羅的」に扱うという理論なのです。

30個の進行

だから学習者は伝統的な進行パターンも習得できるし、21世紀のニュータイプ進行についても、実例を参考にしながら安心して使うことができるというわけです。

「接続」とは

「接続」という言葉も、やや独自の言い回しです。ふつうコードの進みは「コード進行」と呼ばれますが、これは3つ以上のコードのまとまりを指すときにも使われる言葉です。これから理論を展開していくうえで「2つのコードの連結」だけを指す言葉があった方が良いと考え、それを接続Nexusと呼ぶことにしました。

「コード進行」という言葉が、どちらかというと並べるコードそのものに着目するのに対し、「接続」という言葉には2コードの間の相対的な変化を重視して着目するような意味合いを込めています。

30人の自己紹介

30パターンの紹介というとなかなか大変そうですが、ももちろんこの記事を読み終わった瞬間に30個を暗記していろという話ではありません。今日は始業式です。初めて30人のクラスメイトがあなたに自己紹介をします。あなたはこれから時間をかけて、一人ずつ顔と名前を覚えていくのです。

だからまず最初は、自分の気に入ったものから覚えていけばよい。あなたの気に入ったコード進行が、あなたの表現にとって重要なコード進行なのですから。

好き嫌い

そんな主観的な考えでいいのかと心配になるかもしれませんが、大丈夫。むしろそうじゃなきゃダメなんです。クラシックをよく聴いていれば自ずとクラシック的な進行に親しみを感じるし、ロックをよく聴いていれば自ずとロック的な進行に親しみを感じる。そしてそれに従ってこそ、そのジャンルに最適な曲が生まれます

ジャンルごとの様々なスタイルが発展した21世紀において、どれかの「型」が正しいということはありません。教科書が唱える「型」よりも自分の「好き」を大切にしなくてはいけないのです。