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前回の内容をおさらいすると、こうです。メロディは、コード内ディグリー(コードのルートに対してどの位置を取るのか)によって多大な影響を受ける。各度数が、それぞれのキャラクターを持っている。

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そこで、その漠然とした性質に「シェル」と名前をつけ、きちんと分析していこうというお話でした。まずは、コードのルートをメロディが位置取る、Root Shellの用法からです。

1. Rootシェルの特質

こちらはルートを中心にして作ったメロディラインの例です。コードが変わった頭は全てルートで統一しました。前回の比較でもそうでしたが、かなりストレートな響きがしています。

ルートは当然ながら和音の根っこを成す音であり、最も和音の性質を明確に反映します。Rootシェルの性質はパワフル、素朴、ストレート、シンプル。そういった類のものになります。

Rootシェルの注意点

ルート音ということで、いちばんの基本に思えそうなこのRootシェルですが、実は意外と使いどころを選びます。

音響にカラーを与える3rd7thに対し、Rtはひたすらまっすぐ。そのため、どうしても響きが貧弱になりがちなのです。特に楽曲のたいていの場面ではベースがルートを弾くので、Rootシェルのメロディはそれとユニゾンすることになりますから、どうしてもルートだけが目立ってしまってバランスが悪くなりやすい。したがってそのストレートさが生きる状況で使ってあげることが望ましいのです。

2. Rootシェルと洋楽の実例

実際にRootシェルの良さを活かした曲例を見てみましょう。まずは洋楽から…

Hot Chelle Rae – Tonight Tonight

明るさを全面に出したこちらの曲では、何度も登場する「ラーラーラ」の部分が、ほとんどベースラインとメロディがユニゾンするRootシェルになっています。
これは本当にRootシェルの典型的な活かし方で、余計な飾りなくシンプルにベースとメロディが重なることで、最上級にキャッチー、分かりやすい音楽を演出しています。ジャズのような大人っぽさはありませんが、代わりにまたとない元気さがありますよね。

Adele / Rolling in the Deep


熱情的なサビの歌い出し、「We could have had it all」のロングトーンが、VImのコードにメロディも第vi音を伸ばすという、めちゃくちゃストレートなメロディになっています。
特に2周目「You had my heart inside of your hand / And you played it」のところは、VImVIVそれぞれでルートを歌うという、ルート3連発です。

この曲は、失恋ソングなのに一切メソメソせず、むしろ怒っているという変わったテーマの曲。ですからそのパワフルな感情を削がないという点で、ルートを中心にしたメロは最適と言えます。一切の回り道なしに、ストレートパンチでハートを殴りにきている感じですね。

Heartbreaker / Led Zeppelin

このサンプルの方はブリッジ部分なのですが、ギター・ベース・メロディの三者が全員でリフのフレーズをユニゾンしています。「このリフが最高なんだから、全員このラインでいいじゃん!」という潔さがいいですね。このストレートさは、他では出せない、ルート・シェルだけの特質です。

The Robots / Kraftwerk

ロボットがステージに立つというイかれたライヴ演出をしているのは、テクノの帝王クラフトワーク。こちらはその代表曲である「The Robots」です。
1:03から歌が始まりますが、メロディはほとんどベースラインとユニゾンしています。ロボットという感情のない存在、それを音楽的に表現するにあたって、「ルートからほとんど動かないメロディライン」というのはまさに情緒の排除であり、ぴったりの手法ですね。

3. Rootシェルと邦楽の実例

やや複雑な音楽が一般に浸透している邦楽ではRootシェルが打ち出された楽曲はそんなに多くありませんが、いくつか発見したものをピックアップします。

助演男優賞 / Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)

ラッパーとDJによるユニットの曲。「Six Manで上等」から始まるサビ部分が特徴的で、ほとんどルートをなぞるような形でメロディが進んでいきます。ちょっとコミカルな曲で、ましてやHIP-HOPですから、こういう音楽は単調なシェルが痛快に聴こえたりするものです。先ほどのLed Zeppelinの例と同じですね。シンプルで飾りっ気ないのが曲のテーマとマッチしていて、クセになる魅力を生み出しています。MVもとてもシニカルで面白いですよ。

花束 / back number

1:14からのBメロ、「浮気しても言わないでよね」が、IImVIVImのコードのルートにピタっと沿ったメロディになっています。リズムも8分音符の連続が多く、かなり単純。 Aメロは逆に細かく動いて情緒的な作りになっているので、それとのコントラストが際立っていますね。
歌詞のセリフの子供っぽさと、ストレートなルート・シェルの質感が相性ぴったりって感じですね。

200ギガあげちゃう

ソフトバンクのCMソングです。冒頭のパートのメロディが最初から最後までずっとルートという、ポップスでは珍しいシェルの取り方をしています。単に学割を宣伝したいだけの曲ですから、余計な情緒は不要、という感じでしょうか。コードも IVIVV というパンクバンドのようなシンプルさで、完全に”やりきっている”ので、このシンプルさが曲の個性になっています。

楽天ラクマ CMソング

こちらもCMソング。メロディはずっと単調なコードにルート・シェルです。

だんだん見えてきたと思いますが、ルート・シェルは、シンプルだからこそインパクトがありますね。そしてベースやギターと同じフレーズを重ねる結果にもなりやすいので、ロックさ、パンクさを演出するのにも適しています。
3rdシェルや7thシェルは彩り豊かで魅力的なのですが、彼らはここまでストレートにはなりたくてもなれません。コードと同じで、それぞれのシェルに個性と役割があるのです

これから3rd、5th、7thのシェルを理解するとまたさらに面白くなっていきます。先へ進みましょう。

まとめ

  • Rootシェルは、「パワフル・素朴・ストレート」を特徴に持ったシェルです。
  • ベース音とユニゾンすることになるため、音響のパワーバランスが偏りがちであるという弱点があります。その特徴を生かすことが望ましいです。
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