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今回は「言葉を知る」回です。
III章を進んでいくにあたって、あらかじめ度数について多少詳しくなっておこうという回です。実践との関わりこそ薄い「名前レイヤー」の知識ですが、理論を頭の中で整理するうえでは大切な知識です。
改めて、III章はさまざまなコードの種類とコードネームに詳しくなっていく章です。そして既にお分かりのとおり、コードネームの命名規則はひとえにコードトーンの度数構成によって定められるものです。
II章までは暗記の負担を最低限に削ぎ落とすため、紹介した詳細度数はこの3度・7度のみでした。だから思い返してみれば、メジャーコードやマイナーコードの5thが詳細度数で言うと何なのかすらまだ紹介していません。
でもIII章では2度も4度も5度も6度も登場します。さすがにそろそろ、度数の概念にもうちょっと親しんでいこうというのがこの回です。実際に暗記を進めていくのはIII章でコードを学んだ以降で何ら問題ありませんが、ひとまず概念紹介だけでも先に固めておきたいのです。
1. 量と質
まずは少し言葉を本格化しますね。詳細度数を構成する要素のうち、数字の部分を「Quantity(量)」、「長/短」といった特性の部分を「Quality(質)」と呼びます。
この「Quality」は、「クオリティ・チェンジ」のときに述べた「コード・クオリティ」のクオリティと同じく、「特質・質感」といった意味合いですね。「Quantity」は「量」という意味の英単語。いわば日本語で言うところの「質と量」で、よく「Quality and Quantity」なんて風にセットになる2単語です。
2. クオリティの種類
まずは「長・短」以外のクオリティを網羅していきたいと思います。
完全音程
先ほども話題に挙がった、メジャーコードやマイナーコードの5thの音なのですが、これは完全5度Perfect 5thと呼ばれます。長いとか短いじゃなく、“完全”です。
半音の数を数えたときに[7半音]となるのが完全5度です。I章序盤で述べたとおり、これは透明で澄んだ響きのサウンドを生むので、コードの厚みを補強するのに使われる音程です。
同じように「完全」の名を冠するのは、4度と8度(=オクターブ)です。
なぜ“完全”と呼ぶのかと言われるとその事情は複雑なのですが、ザックリ言うとこの4・5・8度が格別に響きが澄んでいるからです1。
増減音程
メジャースケールから適当に2音を拾って4度や5度を作ると、ほとんどは「完全4度」「完全5度」になります。唯一の例外が、シとファを組み合わせた場合です。
減5度
「シ-ファ」と音を重ねた場合、これは「5度」の一種となりますが、普通の5度と比べると長さが足りません。
完全な5度と比べると距離が減っていることから、これを減5度diminished 5thと呼びます。
増4度
逆に「ファ-シ」と重ねた場合は「4度」の一種となりますが、今度は普通の4度よりも距離が長くなります。
こちらは距離が増えているということで、これを増4度augmented 4thと呼びます。
そのほか、逆に「ド-ソ♯」のような場合には、「完全5度よりも距離が増えている」から「増5度」となります。
トライトーンと異名同音程
「シ-ファ」も「ファ-シ」も、半音の数で言えば6つですね。これはまたの名をトライトーンという、不気味さのある音程でした。「二次ドミナント」の回でキーワードとなった音程ですね。
「トライトーン」という言葉は、「増4度」と「減5度」の両方をひっくるめて表すことのできる便利な言葉、ということになります2。
「シ-ファ」も「ファ-シ」も半音数で言えば同じのものなのに、度数は「シ-ド-レ-ミ-ファだから5度」「ファ-ソ-ラ-シだから4度」というふうに異なります。このような関係を、異名同音程Enharmonic Intervalといいます。
- 異名同音程 (Enharmonic Interval)
- 「増4度」と「減5度」のように、半音数が同じでありながら異なる呼称となる度数どうしの関係を指す言葉。
- 「異名同音」という概念の親戚みたいなものである。
減7度
完全4度・完全5度に限らず、他の音程でも「増・減」は現れます。例えば“短い方の7度”である「短7度」の距離がさらに縮んだ場合には、やっぱり「減」が登場します。
だからイメージとしては、「長/短・完全」が平常運転の世界で、そこをはみ出たら「増・減」のお出ましということです。
クオリティの種類は、基本的にはこの5つで全てです3。