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音階の仕組み ❶全音と半音

By 2024.03.11準備編

1. 音階のひみつ

前回の話はこうでした。特定の音を羅列したものが「音階」であり、それには「中心」が存在する。
「ドレミファソラシド」は「ド」が中心で、明るい表現に向いている。

対して「ラシドレミファソラ」は、同じ「ピアノの白鍵だけを使った音階」であっても、中心が2つ下の「ラ」にずれている。こちらは一転して、暗い表現の方が得意なのでした。

しかし、これはちょっと不思議なことではないでしょうか? だって、白鍵だけを使ってるんだったら、どこが中心だろうと同じことでは? 音符は規則正しく並んでループしているのだから。それは螺旋階段のように、どこから見たって同じはずなのです。

why

黒鍵を使ったりしたら雰囲気が変わるのは分かります。でも同じ白鍵の7音を使っているのに、場所をずらしたら印象が変わる。何故なのでしょう。ここからさらに、音を理論的に分析する試みがはじまります。

鍵盤をじっくり見る

改めて、音楽を分析する基本となる「鍵盤」をきちんと眺めてみます。

ピアノの鍵盤を順番に進んでいくと、音の高さは均等に上がっていきます。ドからド、ドからレ・・・。これはみな同じ段差の階段、等距離であると思ってください1

さて、そうすると私たちが何気なく使ってきた「ドレミファソラシド」は、けっこう変わった段差構成になっていることに気づきます。「ドレミ」の部分は、さりげなく段差を2つ登っているのです。

何の気なしに、1段飛ばしのジャンプをしていたということ。また逆に言えば、「ミとファ」「シとド」の間は、他の半分しか進んでいなかったということ。これが、めちゃくちゃ大事なことです。もう一度、改めて横向きのピアノの鍵盤でも見てみますね。

注目!

ミとファ、シとドの間には黒鍵がありません。距離が半分しかない、というわけです。だからピアノの白鍵の並びというのは全くもって均一な螺旋階段などではなく、すごくデコボコした形をしているのです。

この「黒鍵を挟まない、半分しかない段差」のことを半音Semitone、そうでない「2鍵ぶんの段差」のことを全音Tone/Whole toneと言います。

半音(Semitone)
音の距離を測る尺度となる基本単位。「ドとド」「ミとファ」のように、すぐ隣り合った鍵盤ひとつぶん、またはギターの1フレットぶんの、音の高さの隔たり。
全音(Tone/Whole tone)
「ドとレ」「ミとファ」「ドとレ」のような、鍵盤2つぶんの距離を指す。半音のちょうど2倍の、音の高さの隔たり。

この「全」「半」という言葉を使って、もう一度ここまでの話を整理してみましょう。

段差の配列とサウンドイメージ

「ドレミファソラシド」と「ラシドレミファソラ」でなぜ印象が違って感じられたか? それは、「全」「半」の並べ方が違っているからです。つまり、全音と半音の組み合わせによって、音階のキャラクターが決まるのです。

全全半全全全半

「ドレミファソラシド」は、このような全音と半音の並びになっています。「全・全・半・全・全・全・半」です。この不均等でまばらな全・半の並びが、音階に固有のサウンドをもたらしているのです。

一方で暗い響きだった「ラシドレミファソラ」の音階は、次のようになっています。

短音階

「全・半・全・全・半・全・全」です。並びが変われば、そこから生み出される音楽のサウンドイメージも変わります。中心音からの段差の配列が、その音階のもつ根源的なサウンドイメージを決めるのです。

Check Point

ピアノの白鍵は、「全音」と「半音」が不均一に並んでいる。だから「白鍵だけの音階」といっても、どこを中心に据えるかによってデコボコの配列が変わり、結果としてサウンドイメージも変わる。

そうすると、五線譜というのは音の真の段差が分かりにくい、全/半の段差の真実をあえて隠すようなデザインになっているということですね。ミとファ、シとドの間だけ半音差になっているという事実は、五線譜を眺めても見えてきません。
これは前回軽くお話ししたとおり五線譜自体がドレミファソラシの音階に最適化していった結果であって、これはこれで合理的なデザインではあります。でも音階の構造をキッチリ観察したい時には、鍵盤とかギターのフレットとかDTMのピアノロールとかで考えてあげた方が、起きていることがよく見えますね。

2. メジャーとマイナー

そんなわけでこの「ドレミファソラシド」と「ラシドレミファソラ」は、ポピュラー音楽の根幹を成す二大音階であり、それぞれ長音階短音階という名前がつけられています。

また、音楽理論における長・短は英語だとそれぞれmajor(メジャー)・minor(マイナー)といいます。したがって「長音階」「短音階」の英語での呼び名は以下のようになります。

  • 長音階 = major scale (メジャースケール)
  • 短音階 = minor scale (マイナースケール)

たとえば「ドが中心の長音階」であれば、英語だと「C major scale」という風にいいます。ちなみに和名だと「ド」は「ハ」ですから、「ハ長音階」といいます。うーん、やっぱり我々現代人からするとイロハニホヘトはちょっと馴染めないですね・・・。今後も音階については基本的に英語を中心に使いますので、この言い回しを覚えて頂きたいところ。

今回は、「全音」「半音」「メジャースケール」「マイナースケール」という、音楽理論の根本になる重要概念を紹介しました。次回はさらに、この「段差のメカニズム」を応用していくことになります。

まとめ

  • 音階の根本的なサウンドイメージは、「中心音からの全・半の配列」によって確定します。
  • 「メジャースケール」と「マイナースケール」が、ポピュラーミュージックの代表的な音階です。
  • 「major=長=明るい」「minor=短=暗い」が音楽理論の共通の命名ルールです。
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