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1. リズム理論について

「リズム」は、一般的な音楽理論ではそこまで重きを置かれていない部分かもしれません。「コード理論」と銘打つ本にリズムの話が書かれていないのはもちろんのこと、「音楽理論」と題するものでもライトな本だとリズム関連の言及がかなり限定的という場合はしばしばあります。

それが何故なのかといえば、リズムというのは音楽の要素の中で最も人間が直感的に理解や再現がしやすく、多くの人が理論的な理解を必要としないからでしょう。それからコードやメロディと比べて、リズムは既存曲とかぶって当たり前です。だから、迷うことなくプロの作品をマネすればいいのであって、その点で理論学習の必要性は、間違いなくメロディ・コードよりも低いと言えます。

定番ビート – 4つ打ち

たとえばテクノやダンスの世界では、一定のタイミングでドシドシと低音が刻まれる4つ打ちFour-on-the-floorのビートが定番です。

心臓の鼓動のように一定で刻まれるビートには安定感があって、テクノやEDMをはじめとする電子音楽における定番中の定番です。

そしてこのリズムを誰かが独占することはなく、これはみんなが使う共有物。リズムとはそういうものですね。

定番ビート – モータウン・ビート

ポップスやロックでも、昔からの定番と言えるリズムがあります。

このノリノリなリズムは、俗に「モータウン・ビート」などと呼ばれます。ウキウキ感があっていいですよね。

こういう優れたリズムパターンは、何度も何度も繰り返し使われていて、我々も飽きることなくこれを楽しむことができます。

非大衆的なリズム

さらに言えば、コードはかなり複雑な技法や高度なワザが存在しますが、リズムでそのようなことをやってしまうと、大衆性がガクッと一気に落ちてしまいますし、またそういった部分の理論化もコードやメロディの理論ほどは進んでいません。

こちらはちょっとノリが分かりづらいリズムの例。やはり大衆的な音楽からはかけ離れてしまいます。だから、特別な理論を勉強しなくとも、ふだん耳にするリズムをマネさえすればそれで十分にコトが済んでしまうわけです。

とはいえ、基本的な概念や技法に名前がきちんと付いていることを知ると、やっぱり情報整理がしやすくなりますし、全てを感覚的にアプローチするよりも効果的なリズムを作り出せる可能性は大いに高まります。リズム理論は、体感できるので、簡単です。知っている知識なら復習するのは悪くないし、知らない知識ならお得です。他の編よりも軽い気持ちで読み進めるとよいでしょう。

2. ドラムの3点

さて、リズム理論を進めて行く前に、準備編同様、基本的なところを確認しておきます。

あらゆるメロディラインや伴奏は、そこに幾らかのリズムを有しています。だから、ピアノやギターの弾き語りであってもそこには「リズム」がきちんとある。
その一方で、多くの音楽ではドラムのパートが存在し、それがリズムを最も司る存在になります。
ドラムの演奏の根幹は、3つの楽器によって成されています。それを確認しましょう。

❶ キック

まず、リズムの最も低音部を支えるのが、「キック」です。

ズシンという重たい響きは、文字通りリズムの「重み」をどこに置くのかを決定づける重要な要素になります。

❷ ハイハット

逆に最も高くてキンキンした音が、「ハイハット」です。しばしば「ハット」と略されます。

ハイハットは重みがなく、細かく鳴らしても不快にならないため、たいていの場合、キックよりも細かい刻みで演奏されます。それによって、さらに細かいリズムを提示することができるのです。

❸ スネア

キックとハットの間を支えるのが、「スネア」です。スネアは非常に目立つ音であるため、スネアをどのタイミングで叩くかによって、感じられるリズムは大きく変わります。

これでようやく「形」が完成したようなサウンドになりましたね。もちろん実際の曲中では、キックを鳴らさないパートがあったり、スネアを叩かないパートがあったりもしますが、この3つが揃うことで、リズムの骨格がくっきりと形作られるのです。

この3つの楽器は俗に「3点セット」などと呼ばれています。この3つの構成は、電子ドラムにおいても同じ。

どのような演奏が好まれるかは、ジャンルによって全く変わります。ですからリズムは、本当に「マネ」が大事。自分がやりたいジャンルの作品をよく聴いてみましょう。その際は、この「3点セット」がどんな演奏をしているのかに注目すると、分かりやすいですよ。

3. リズム隊

ことバンドの世界においては、ドラムとベースを合わせて「リズム隊」と呼ばれます。ベースも、キックと同じズシンとした低音を担う楽器なので、リズムに与える影響が大きいため、そのように言われます。


こんな感じ。ドラムが同じでも、そこにどんなベースが合わさるかによって、印象が大きく変わります。もちろんウワモノの演奏も全体のリズムに影響を与えはしますが、やはり低音部が持つ基盤への影響力はスゴイのです。

やはり、物事の原理が分かっていると、余計なところで迷うことが減り、快適に編曲が進められます。リズム編は内容も本当にシンプルですから、I章だけでもサクッと読んでしまうとよいと思います。

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