変拍子の作法 ❷

#3 良い変拍子を作るには

さて、前回の記事では音源をたくさん聴いて、変拍子の魅力は伝わったかなと思います。それでは、ここからは実際に変拍子を作曲していく話です。

変拍子の曲に憧れて、拍子を足し引きしてみたとしましょう。

4拍子+1拍で、5拍子だ!! これで私もプログレッシブ・ロッカーの仲間入り・・・と言いたいですが、これでは全然だめですね。本当に拍子を足し算しただけという感じで、音楽としての魅力が全くどこにもありません。

ただのクズです!

そう、変拍子という上級な作曲を行うからには、「変拍子に振り回されてる感」が出てしまっては台無しなのです。「きちんとリズムを乗りこなしている感」を出さないといけません。

ではどうすれば、変拍子が自然に入ってくるのでしょうか?

アクセントをアレンジする

先ほどの音源がつまらなかった理由は、誰が聴いても明らかに「ただの4拍子+1拍」という構造になってしまっているからです。

1拍をさらにオモテウラに分けると、5拍子の場合は10個のセルでリズムが構成されていると言えますよね。

10セル

これを、フツーに4・4・2で分割してしまったのが、先ほどのつまらない音源です。

4-4-2

史上もっともダサい5拍子ですね。

ようは、このアクセント分割がつまらないわけです。変拍子を構成する際には、シンコペーションやアンティシペーションを駆使してアクセントを変化させるのが基本。

例えば先ほど5拍子で紹介した「ミッション・インポッシブルのテーマ」「Take Five」「Larks’ Tongues in Aspic Part II」は、いずれもこの10個のセルを「3-3-2-2」という配分で分割しています。

3322

リズムに合わせフレーズを歌ってみると、アクセントが分かりやすいです。ただし「Take Five」はシャッフルしていますから、正確には以下のようなリズムだ。

ですから変拍子というのは、合計の拍数設定がどうというより、その分割の仕方、どう組み合わせていくかが非常に重要なのです。ホルストの「火星」は、三連符を交えてユニークなリズムパターンを作っていますね。

こんな風に、リズム自体に多少なりとも面白さがあって初めてよく成立するのが変拍子の世界なのです。特にスネアの位置をどうするかによってノリがかなり変わってくるので、これはもう試行錯誤あるのみですね。

フレーズでリードする

また、先ほどの例のもうひとつダメなところが、ただコードを弾いているだけでフレーズがないこと。変拍子を作る場合、その変な拍子に上手く乗ったフレーズがひとつ鳴っていると、それがとても強力なガイドラインになります。それはまた「このメロディだからこの拍子になったんだ」という説得力にも繋がりますよね。

こちらは7拍子で、シンセのフレーズが全体を引っ張っていっている例です。他の楽器はガチャガチャしてますが、高域で常にシンセが同じフレーズを鳴らしていることで、拍子に安定感がもたらされています。

上手な実例

シンコペーションなどを上手く利用してカッコいいフレーズを生み出している実例をいくつか見ておきましょう。

7拍子ですが、左側ギターのフレーズが絶妙ですね。シンコペーションを重ねていくことでフレーズの終わりを早め、「普通の4拍子×2よりも少ない」という違和感をなるだけ少なくしています。

1972年に18分超の大作「Close to the Edge」でその名を世界に轟かせたプログレバンド、イエスの代表作。イントロ部分が8拍+7拍の15拍構成になっています。0:25〜のギターが実に巧みで、同じフレーズをずっと繰り返しているように見えて、その伸ばし具合を少し変えることで拍が少ないことを誤魔化すような形になっています。7:01〜の謎拍子パートもスゴイですよ。

そんなイエスの1994年の楽曲です。有名ではないですが、これも15分を超える大作で、構成や歌詞も素晴らしい名曲です。曲はじめの2分間が5拍子になっていますね。もはやどこがどうというレベルじゃなく、ただ凄い。特に1:29〜1:37のところは圧巻です。

#4 聴きやすい変拍子のために

「変拍子」をやる時点で過激な音楽になることは確実なのですが、その中でも幾らかの聴きやすさ、ポップさを保っておきたいということもあると思います。ここからは、複雑な拍子をリスナーにきちんと認識してもらうための工夫を見ていきます。

頭を強調する

いちばんシンプルな方法は、小節の「」を印象的なフレーズで強調することです。
先ほど紹介した「スパイ大作戦」も、メロディラインがいつも小節頭から始まるので構造が伝わりやすいです。

この方法はとにかく分かりやすくてよいのですが、いかにも頭を提示している感じになってしまうとカッコ悪いですから、そういう意味では難しくもあります。

アウフタクトを活用する

よりオススメできる方法は、メロディラインにアウフタクトを利用することです。「アウフタクト」は、メロディ編Ⅰ章で解説しましたね。メロディが小節の頭よりも先立ってスタートするパターンを指す言葉です。

アウフタクト

例えば上のような5拍子の曲があった場合、アウフタクトで8分音符の2連発があることによって、小節が切り替わるぞという「予告」になります。そうするとリスナーは、小節頭を予期し、確実に認識できるというわけです。

こちらは、時折7拍子が挟まる変拍子なのですが、「Here it comes」という歌詞が常にアウフタクトで展開をリードしているため、リスナーは「Here it」で小節の変わり目を予期することができますね。そのため、変拍子であることがさほど気になりません。

こちらは終盤が7拍子の曲ですが、毎回「ダーダー」という4分音符の2連打が入るので、切れ目が分かりやすい。歌が入ってからも、「I don’t」という部分がアウフタクトになっているので、やはり小節頭を快適に認識することができます。

これもサビが7拍子。ほとんど全ての箇所でメロディが先行しており、そのため変拍子がスンナリ受け入れられます。
ですから歌モノで変拍子をやるのなら、このアウフタクトを使わない手は無いという感じですね。

理論を元に実践

ここまでに述べたポイントを押さえたうえで実践すると、ちゃんとアーティスティックな変拍子が生み出せるはずです。

こちらは7拍子のピアノソロ。さりげなくアウフタクトが行われており、拍子の節目がだんだんと見えてくるようになっています。

こちらは7+6の13拍子で作ったパート。この場合は、アウフタクトというより小節頭をベースなどでハッキリと示してサイクルを保っているようなやり方になっています。
中盤のドラムパターンが始まるところからは、新しいフレーズが13拍を3+5+3+2で分割することで、変拍子の中でさらにポリリズムを構成してみました。

変拍子はもう、とにかく面白い。オリジナルの表現を追求してみてください。

この節のまとめ
  • 3拍子や4拍子のような一般的な拍子以外の拍子を「変拍子」といいます。
  • 7拍子や5拍子は変拍子の中の定番です。面白い拍子はいくらでも作り出すことが出来ます。
  • 変拍子は、アクセントの位置をずらしたりすると面白いものが出来上がりやすいです。
  • 小節の区切れをリスナーに認識させる工夫があると、ポップで聴きやすくなります。
リズム編は現在ここまでです。

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1,2,3,4のかけ声のサンプルは、「あみたろの声素材工房」さんで配布されている素材を使用しました。