接続系理論 ❽ E²の諸用法

音楽理論 接続系理論

前回はE¹の解説をしましたが、ここからは、E²の方を見ていきますよ!

break boundaries

E²の接続

E¹に対して、「TDSが変化しない3度上行」が、「E²」です。

E2

そもそもE型の「3度上行」という移動距離自体が中途半端で、しかもE²はTDS機能変化も無いため、展開性を重視するポップスでは愛されていません。クラシックでも禁則、ジャズでも非推奨です。
ですからまず耳馴染みが薄いし、特にJ-Popリスナーは、次々と変化する多彩なコード進行に慣れ親しんでおり、そのような人たちにとってE²はグダグダして感じられる可能性があるわけですね。

しかしその半端な進行も、ロックや電子音楽とは実はかなり相性がいい。そのことに数々のアーティストが気付き始めたのが、21世紀初頭です。ハッキリしない方がいい時もあるというのは、ここまでのE¹の解説からも明らかですね。

E²はある意味、いま時代の最先端を行く接続法と言っても過言ではありません。その魅力を探っていきましょう!

VIm → I = 希望への予感

VImIは、定番のIVImと同じく、ゆったりとした流れがあります。しかしVImが先にいるぶん暗くなるので、ポップ系の曲よりもロックやダンスでよく使われる傾向にあります。
暗い曲調の中で使った方が生きやすいというのは、E²のメンバーいずれにも共通して言えることですね。

6141

「Star Train」はイントロとAメロで、「To Be With You」ではAメロでこの進行が使われています。暗いところから明るいところへ動くので、何か希望が差したような情感を出すときには特に力を発揮します。上の2曲は、どちらも前向きな曲ですもんね。

こちらはEDMですけど、これまた6-1-4-1というコード進行。この進行はドミナント不使用なので、どことなく落ち着きがあります。こんな風に、「4サイクルのコード進行の冒頭に使う」のが定番ですが、それ以外にも使い道はありますよ。

AKB48最大のヒット曲である「ヘビーローテーション」のサビには、E¹とE²が両方使われています。

ヘビロテ

先にVImで一回マイナーコードに着地するのですが、「このままでは暗くなっちゃうな」ということで、すぐIへと進むことで、明るさをキープする。こんな風に、4つでワンセットのコード進行の後ろ2つに使われるパターンも、定番のひとつです。

テクノ界のご先祖様、クラフトワークの名曲にもE²が使われています。こちらはカバー版ですね。IVIVVImIという、E型だけで成り立っている進行で、とても印象的です。オリジナルのコンピューター・ラヴは1981年リリースですから、サウンドだけでなくコード進行においてもかなり先進的だったと言えそうです。

サビとAメロの進行がVImIVIImです。アメリカのダンスミュージックでは、こういう進行が本当に21世紀のスタンダードです。E²だけじゃなく、A²(V→IIm)も使っていて、一般音楽理論からしたらまさに禁則のオンパレード。こ、こんなセオリー無視のコードでいいのか・・・!?
何をおっしゃる、セオリーに無いからこそカッコイイのです。「お約束」を破ってるからこそクールなのですよ。

IIm → IV = 静かな心の解放

IImIVも実はけっこう使い勝手がよく、連続サブドミナントということで、E型の中でも特に穏やかな流れを作ります。

IImというのは、基調和音の中では「タメ役」を担っているコードです。だから最もベタな展開は、Vへ進むことで高揚のピークへ持っていくこと。実際に、古典派理論ではそれ以外の進行は禁止されています。

しかしそこであえてのIVに進むと、一体どんな曲想が生まれるでしょうか? あえてサブドミナントから動かない。しかもマイナーからメジャーへ行きますから、結果として「静かで密やかな心の解放」とでも言うような独特の情感が生まれるのです。

2465

あえて派手にしない大人の上品な音楽」という雰囲気を演出するために、E²、E¹を連続して使っています。この曲は世界中で大ヒット、グラミー賞最優秀レコード賞を獲得しました。それは、クラシックやジャズの「型」の時代からすでにパラダイム・シフトが起こっていることの証明に他なりませんね。

2415

こちらは楽園の幻想的なイメージを音で表現するためにE²を選択しています。こういうフワフワした世界観を表現するのには、トゥー・ファイヴでは全然だめなのです。まさに適材適所、全てのコード進行には存在意義がある。それがだんだん分かってきたと思います。

邦楽でもある

中田ヤスタカは、E型とダンスミュージックの相性の良さをいち早く見抜いている、まさに時代の寵児です。こちらのPerfumeの曲のBメロには、IImIVVImVImという特徴的なコード進行が使われています。Get Luckyとよく似た、「E型の二連発」です。あえてドミナントを使わないことで、盛り上がりを抑制しているのです。

逆に2周目の「ハッピー Feeling Good〜」のところはIImIVIIIImとドミナントへ進むことで、「めいっぱいに手を伸ばして」の部分の情感を強めています。もし2-5-1-3にしてしまったら、Vの高揚感が勝っちゃって、IIImがこんなにも情緒豊かに感じられることはなかったでしょう。そのあたりのバランス感覚がとても上手なのです。

古めの邦楽にもある

もちろん、古い曲を見ても、こうした進行は隠れています。IImIVなら、こんな有名な曲のサビにも使われていますよ。

俺ら東京さ行ぐだの進行

IImからVへ行く前にIVをクッションにしています。そこに「東京」という一番のキーワードが乗るところが、絶妙です。
これもやっぱり、模範的なIImVにしちゃうと、「東京がどんな所かもよく知らぬまま夢と希望を膨らませている少年の淡い心情」のようなものが、薄れてしまうんですよねえ。「東京でベコ買う」つってんですから、無知で無垢な少年の夢と希望の歌なんですよ。「東京」という言葉を口にした瞬間胸に込み上げてくる希望。それを表現するには、ドミナントではまるでダメだ。

こうして考えてみると、「分かりやすい進行=良い進行」という発想は、すごく西欧的で画一的で、我々現代人の繊細な感覚と比べたら、つまらないと思いませんか? 禁則破りの歴史とは、まさに私たちの感性の進化の歴史であり、音楽の発展の歴史であるのです。

IIIm → V = 堂々とした高揚

残るIIImVはけっこうクセがあって使用頻度が落ちるのですが、やっぱり面白いです。これからドンドン売れっ子になっていくであろう接続種ですよ。
IIIm自体が状況次第ではトニックぽくなってしまう中途半端なマイナーコードですから、そこで急にVに進むと、メソメソした響きからキッパリした響きへ変わる。結果として「グイっと持ち上がった感じ」「堂々と開き直った感じ」が生まれます。だから、30種の接続の中でも際立って「強さ」や「芯」を感じるコード進行になります。

ニューヨークのインディーポップバンドの曲です。AメロのコードがVImIVIIImVという進行になっていて、「モヤモヤしたIIImから力強いVへ」という質感が分かりやすく感じられる曲です。


こちらはVImIVVImIVIIImVVImという、8つで1サイクルのコード進行を繰り返しています。ちょっと強気な失恋ソングで、なんとも諦めのついていない気持ちを表現するにあたって、IIImVが持つ複雑なサウンドがうまく作用しています。

IIImVは、この高揚感が非常に耳新しいので、ロックやエレクトロ系でドンドン使われはじめていて、アジカンや、Radioheadの曲にも使用例が見られます。


全てのコード進行に意味がある

さて、30種類の接続法、これで基本的な紹介はし終えました。どれも全然「禁則」じゃありません。むしろ「どの接続系をどう使うかによって、ジャンル性・時代性・スタイルを選択できる」と考えた方が、何倍も実践的で広がりがあります。これらを「禁則」と呼ぶ世間一般の音楽理論は、単なる保守主義的見解にすぎません。

コンサバ

だからもし貴方が自由に作曲をしているところに、禁則がどうのと言ってくる人間がいたとしても、気にする必要はありません。確かにA¹・B¹・C¹・D¹の「四大接続」が人類にとって自然に聴こえるというのは、ジャンルを超えた事実として捉えて構わないでしょう。ただ、自然じゃない進み方だからこそ表現できる曲想も必ずあるということを忘れないでいてください。そして、あなたの表現にそのコード進行がぴったりだと感じたなら、間違いなくそれが「正しい」のです。

この節のまとめ
  • E²の接続は2音共通でTDS変化なしで安定感もないことから、コンヴェンショナルな音楽ではあまり使用されません。
  • 理論としても禁則とみなす流派が多く、一般的なポピュラー音楽理論でも禁則扱いとなるのがほとんどです。
  • しかし、21世紀以降のロックや電子音楽ではこのような耳新しいコードを活用する人が増えています。
  • いずれも穏やかな変化を持っているので、Aメロ・Bメロに使用されることが多いですが、ひとつのコード進行だけで曲を作るダンスミュージックでは、サビまでずっとE²が使われることもあります。

Continue