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接続系理論 ❽ E²の諸用法

By 2021.09.17接続系理論

前回はE¹の解説をしましたので、ここからはE²の方を見ていきます。

1 E²の接続

E²とE¹の相違点として言えるのが、TDS機能に変化がないことです。

E2

1-6、4-2、5-3が定番の動きであるなか、E²接続はその逆を行くのがイレギュラーだとされ、クラシックでも禁則、ジャズでも非推奨です。ですからまず耳馴染みが薄いし、特にJ-Popリスナーは、次々と変化する多彩なコード進行に慣れ親しんでおり、そのような人たちにとってE²はどこか落ち着かなく聴こえる可能性があるわけですね。

しかしそんなE²接続も、ロックや電子音楽においては十分に活用の場があります。進行がハッキリしていない方がいい時もあるというのは、E¹の解説からも明らかですね。E²はある意味、いま時代の最先端を行く接続法と言っても過言ではありません。その魅力を探っていきましょう!

VIm → I : 希望への予感

VImIは、定番のIVImと同じく、ゆったりとした流れがあります。しかしVImが先にいるぶん暗くなるので、ポップ系の曲よりもロックやダンスでよく使われる傾向にあります。

これら、集めてきた曲はたまたまいずれもドミナント不使用で、E型の接続を活用しているのが特徴です。

VImIの接続は、明確に「暗から明へ」の転換を提示する形なので、どこか希望の光が指すような情感を曲にもたらすことができます。また1-6という定番の流れの逆を行くという点で、意志の固さや力強さの表現に向いていて、「STAR TRAIN」はそれがよく活きています。

一方「Sexy Bitch」や「RGTO」のような電子的な楽曲においては、キーがメジャー/マイナーのどちらかに偏りすぎないよう拮抗をもたらすような効果も感じますね。

6-1-5-4型

Vのコードを交えたパターンでは、6-1-5-4、もしくは6-1-5-2という進行がアメリカのポップス(特にダンス系音楽)では定番のひとつになっています。

初めの方が6-1-5-2、アヴィーチー以降はみな6-1-5-4です。ノリの良い音楽に似合うコード進行ですね。VImIだけでなくVIVないしVIImの禁則を両者とも犯しているのは面白いところ。洋楽界ではもはや禁則はもう禁則でなく、日常的な語彙のひとつになってきた感じがします。

この手の進行におけるVImIはやはりマイナーキーとメジャーキーのバランス取りとして機能し、曲を暗くしすぎない効果を発揮していますね。

つまり、まずスタートは多少ダークにVImを選んだはいいものの、そのままドンヨリとした雰囲気を続けたくはない。マイナー調を一発で打ち消せる最大の存在が、メジャーキーのリーダーたるIというわけです。

IIm → IV : 静かな心の解放

IImIVも「連続でサブドミナント」という穏やかさが魅力の素敵な接続です。IImというのは、基調和音の中では「タメ役」を担っているコードです。だから最もベタな展開は、Vへ進むことで高揚のピークへ持っていくこと。実際に、古典派理論ではそれ以外の進行は禁止されています。

しかしそこであえてのIVに進むと、一体どんな曲想が生まれるでしょうか? あえてサブドミナントから動かない。しかもマイナーからメジャーへ行きますから、結果として「静かで密やかな心の解放」とでも言うような独特の情感が生まれるのです。

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あえて派手にしない大人の上品な音楽」という雰囲気を演出するために、E²、E¹を連続して使っています。この曲は世界中で大ヒット、グラミー賞最優秀レコード賞を獲得しました。それは、クラシックやジャズの「型」の時代からすでにパラダイム・シフトが起こっていることの証明に他なりませんね。

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こちらは楽園の幻想的なイメージを音で表現するためにE²を選択しています。こういうフワフワした世界観を表現するのには、トゥー・ファイヴでは全然だめなのです。まさに適材適所、全てのコード進行には存在意義がある。それがだんだん分かってきたと思います。

邦楽でもある

中田ヤスタカは、E型とダンスミュージックの相性の良さをいち早く見抜いている、まさに時代の寵児です。こちらのPerfumeの曲のBメロには、IImIVVImVImという特徴的なコード進行が使われています。Get Luckyとよく似た、「E型の二連発」です。あえてドミナントを使わないことで、盛り上がりを抑制しているのです。

逆に2周目の「ハッピー Feeling Good〜」のところはIImIVIIIImとドミナントへ進むことで、「めいっぱいに手を伸ばして」の部分の情感を強めています。もし2-5-1-3にしてしまったら、Vの高揚感が勝っちゃって、IIImがこんなにも情緒豊かに感じられることはなかったでしょう。そのあたりのバランス感覚がとても上手なのです。

こうして考えてみると、「分かりやすい進行=良い進行」という発想は、我々現代人の繊細な感覚にそぐわない、画一的な思想の押し付けだと思いませんか? 禁則破りの歴史とは、まさに私たちの感性の進化の歴史であり、音楽の発展の歴史であるのです。

IIIm → V : メソメソからキリッと転換

残るIIImVはけっこうクセがあって使用頻度が落ちるのですが、やっぱり独特な面白さがあります。
IIIm自体が状況次第ではトニックぽくなってしまう中途半端なマイナーコードですから、そこで急にVに進むと、メソメソした響きからキッパリした響きへ変わる。結果として「グイっと持ち上がった感じ」「堂々と開き直った感じ」が生まれます。だから、30種の接続の中でも際立って「強さ」や「芯」を感じるコード進行になります。

ニューヨークのインディーポップバンドの曲です。AメロのコードがVImIVIIImVという進行になっていて、「モヤモヤしたIIImから力強いVへ」という質感が分かりやすく感じられる曲です。

こちらはVImIVVImIVIIImVVImという、8つで1サイクルのコード進行を繰り返しています。ちょっと強気な失恋ソングで、なんとも諦めのついていない気持ちを表現するにあたって、IIImVが持つ複雑なサウンドがうまく作用しています。

良くも悪くも耳新しさのある接続で、かなり上級向けではあると思います。


全てのコード進行に意味がある

さて、30種類の接続法、これで基本的な紹介はし終えました。どれも全然「禁則」じゃありません。むしろ「どの接続系をどう使うかによって、ジャンル性・時代性・スタイルを選択できる」と考えた方が、何倍も実践的で広がりがあります。これらを例外的存在として排除する世間一般の音楽理論は、単なる保守主義的見解にすぎません。

コンサバ

だからもしあなたが自由に作曲をしているところに、禁則がどうのと言ってくる人間がいたとしても、気にする必要はありません。確かにA¹・B¹・C¹・D¹の「四大接続」が自然でスムーズに聴こえるというのは、ジャンルを超えた事実として捉えて構わないでしょう。ただ、自然じゃない進み方だからこそ表現できる曲想も必ずあるということを忘れないでいてください。そして、あなたの表現にそのコード進行がぴったりだと感じたなら、間違いなくそれが「正しい」のです。

まとめ
  • E²の接続は2音共通でTDS変化なしで安定感もないことから、コンヴェンショナルな音楽ではあまり使用されません。
  • 理論としても禁則とみなす流派が多く、一般的なポピュラー音楽理論でも禁則扱いとなるのがほとんどです。
  • しかし、21世紀以降のロックや電子音楽ではこのような耳新しいコードを活用する人が増えています。
  • いずれも穏やかな変化を持っているので、Aメロ・Bメロに使用されることが多いですが、ひとつのコード進行だけで曲を作るダンスミュージックでは、サビまでずっとE²が使われることもあります。
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