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接続系理論 ❼ E¹の諸用法

By 2021.09.24接続系理論

さて、ようやくここまで来ました。最後に解説するのが、「E型」です。3度上行でElevate(浮上)するのがE型でした。

移度3級

E型は、その妙に落ち着かないフワフワした感じが独特で、「ソフトな効果をもたらす」などと称されます。1
クラシックではIIIImを除いて他はすべて非使用、ジャズでも「弱い進行」と評されます。しかしE¹の方に関しては、ポップスやダンス音楽で非常によく使われていますから、まずはそちらの使い方を見ていきましょう。

1 E¹の接続

E¹に所属する進行はポップスで幅広い用例があり、現代の「一般的なポピュラー音楽理論」では禁則という認識はないはずです。

E1

IIIImIVVIm、それぞれ個別に紹介していきますね。

I → IIIm : 微かな哀愁

まずIIIImについては、落ち着いた聴きやすさがあって、ポップスのAメロなどで普通に使われる接続であり、3度上行の中でも例外的にクラシック時代から認められ、広く用いられている存在です。2

サウンドとしては、同じTDのモーションであるIVと比べると移動量が少なく、またマイナーコードになるため、若干哀愁めいた曲想が生まれます。

Help!のメロ冒頭(When I was younger so much~)がIIIImですね。このクイっと持ち上がる感じがE型のキャラクターです。

こちらは恐ろしいほどのアイドルスマイルが印象的なMVですが、サビ・Aメロ共に出だしのコード進行がIIIImです。IVだと明るくってパワーがありすぎる、「恋の切なさ」みたいな風合いが足りないなんていう時に、代案として使うイメージですね。

その適度な切なさはK-Popでも引っぱりだこ。こちらは多国籍アイドルグループTWICEのシングル曲。これまたAメロ、サビ共に始まりがIIIImです。この「押し出しすぎない情感」はIIIm特有のもので、ポップスとの相性がすごく良いコード進行です。クオリティ・チェンジをしてIIIに変えてあげてもいい感じですよ。

IV → VIm : 静かな感情の露出

IVVImの方も、J-Popでこそあまり聴き馴染みがないですが、EDMやテクノといった電子音楽系のジャンルや、R&Bなどでは普通に使用されます。特に電子音楽にはBGMとしての側面がありますから、あんまり情感豊かに進行すると主張が強すぎて良くないなんて時もあって、そんな時には共通音が多く変化の少ないE型が活躍するのです。

例えばIVVImVVという進行が、ちょこちょこEDMの分野で使用されます。

ジャスティン・ビーバー、カルヴィン・ハリスの曲はどちらも弱気な感じの失恋ソングです。ムラマサとアリアナ・グランデの曲も、失恋を思わせるような感情の吐露が歌詞の中心にある曲。そういう「メソメソ感」「しっとり感」のようなテーマに対し、E型やC型のゆったりした流れが非常によくマッチしています。

イメージとしては、IVVVImという定番のコードからVを省いてしまって高揚の度合いを抑えているいるという感じで捉えるとよいでしょう。

GO ELEVATE!

4-5-6だと、ベタに感情を煽りすぎという場合もあるわけなんですね。4-6-5という、先にVImにスッと着地してしまった後に余韻のような感じでVに流れる方が良い情感に映ることがある。大人な穏やかさを出したかったり、メソメソした表情を出したい時には、E型の方が似合うと、そんなふうに言えるかもしれません。

ダンスミュージックにはダンスミュージックのお約束があるってことだな!

そういうことです。ダンス系だけでなく、他ジャンルの例も見てみましょう。

Maroon 5の「Sugar」、宇多田ヒカルの「光」という曲では、4-6-2-1という進行が使われています。J-Popでは滅多に見ることのない組み合わせですね。オトナかつファンキーな感じを演出するにも、E¹はピッタリ。ベタに盛り上げすぎていない感じがオシャレです。ドミナントを全く使っていないことも、落ち着いた感じの要因のひとつになっています。

宇多田ヒカルの曲には、すごくJ-Popらしく感じられるものとアメリカっぽいのと両極端だと思うのですが、その差を作っている要因のひとつがコードの接続傾向の差です。この曲は、J-Popらしからぬ接続がたくさん使われているのです。

エレクトロニカやオルタナティヴロック、ヒップホップなどのジャンルでは、IVVImの往来だけで1パートを乗り切る曲だってあります。

純粋にIVVImだけを用いるものと、間にちょこっと繋ぎとしてVを挟むものとがあって、その辺りの微妙な差異でバリエーションを作っていますね。そもそも音楽を展開させるものは決してコードだけではありません。リズムで聞かせるもの、サウンドの展開で聞かせるものなど様々です。抑揚のないコード進行が活きる場面だってあるのです。

そして、クラシックやジャズにないタイプの進行だからこそ新鮮に聴こえるという側面も多分にあります。それはブルースもロックもそう。どのジャンルも、“自分たちの定番”を形成していく中で、ジャンルとしての個性を確立してきたのです。

まとめ
  • Elevate Nexusは、D型と対になる存在で、浮上感がある代わり安定感に欠ける存在です。
  • しかし現代の音楽では、その大げさすぎないキャラクターが丁度よく、様々な場面で使われます。
  • ダンス音楽ではIV-VImが、ポップスではI-IIImが定番です。I-IIImは、クラシック時代から認められています。
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