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接続系理論 ❺ A型の諸用法

By 2021.10.05接続系理論

今回は、Basic Nexusと対になる存在である、Active Nexus、A型の進行を見ていきます。

A型

1 A型の特徴

A型は、それぞれが表現上大きな意味を持った、とても大切なグループです。これもサンプルを聴いてみましょう!

6-3-4-1

6-3-4-1の動きは、すごく感情を揺さぶるような曲想をもたらす、バラードの定番コード進行です。前回やった「6-2-5-1」や「6-4-5-1」と、似ているけど性質は全然ちがいます。
「6-2-5-1」系列はまさに「起承転結」で、3つ目のVにピークがある。それに対し「6-3-4-1」は2つ目のIIImがいきなりピークで、そのあと少しずつ落ち着きを取り戻すような展開になります。

特に「蝶々結び」や「月光」のように、スローかつ激情的なバラードにおいてはこの進行がぴったり。「Emoji」はEDMのビルドとドロップにこの進行が使われている、ちょっと珍しいケースですね。

(※「SUNRISE」や「Desperado」では、2周目は違うコードになっていて、単純な6-3-4-1のループではありません。)

バリエーションの作り方

なかなか強烈な進行であるので、やはり2周目はバリエーションをつけてソフトな方に切り替えたりといったテクニックもよくとられます。

6341のチャート

例えばIIImVに換えれば、これはC型の穏やかな接続が連続することになる。またIV➡︎Iがちょっとパワー不足と感じたら、そこの枠にキュッとIVVを詰めることで、SDTの強力な着地を演出できます。「月光」や「キセキ」ではこの技が使われていますね。それからラストのIVに変えれば、「着地」がなくなって「高揚」になるわけなので、かなり展開性が違ってきます。

6-4-1-5

こちらは6-4-1-5、A¹を2連発する活性的なコード進行。やっぱりA型は移動量が大きいので、ダイナミックさがありますね。特にロック音楽にぴったりで、定番進行のひとつです。

前回紹介した王道の「6-4-5-1」と比べると、5と1をひっくり返しただけですね。それによってまずV➡︎Iという定番の解決が消失し、代わりにIV➡︎Iの終止形を構成するので、少し脱クラシック的なテイストが生まれます。また起承転結の流れも変わって、進行のラストがVになるので、次の周回へ繋がる際の推進力があります。

2 A²の用法

A型の中で唯一禁則に指定されているのが、VIImの進行です。これはC型の説明と同様で、「IImVという定番の流れを逆行するのが、緊張の緩和法として模範的でない」という考えから来ています。

A2

B型のとき述べたとおり、IImVの方は「トゥー・ファイヴ」という名前までついたド定番の接続。VIImはその逆を行きますから、強烈な逆流感があります。

以前のC²群は、逆流とはいってもルートが2度で動く「穏やかな逆行」でした。今回は、ルートが4度で動く「強烈な逆行」。クラシック時代では異端な進行ですし、ジャズでもまあ珍しいタイプでしょう。

ただ、21世紀に入ってからこの接続の存在感はメキメキと増しています。「禁則です」で終わらせず、この活用法を覗いてみましょう。

A²の活用例

A²の刺激を活かしたヒット曲といえば、2013年の映画「アナと雪の女王」の主題歌「Let It Go」のイントロでしょう。

ちょっと該当部分を切り抜いて、詳しく掘り下げてみます。

さすがに天下のディズニー・カンパニーの曲をそのまま引用する勇気はなかったので、同じコード進行で、別のフレーズの曲を作りました。このコード進行って実は、かなり勇気ある選択なんですよね。模範的な進行なら、最後はIにいけばいいんです。それがベタな展開法です。

しかしラストにあえて逆流することで、起承転結の「結」を奪われた形になる。それによって、ただならぬ雰囲気や落ち着かない感情を巧みに表現しているんですね。ココにA²があるからこそ、「王国から逃げ出した主人公の悲しみ」といったテーマがよく伝わってきます。あえてクラシックの型にはまらないことで表現の幅を広げている模範的な例といえるでしょう。

試しにラストをIに変えて、王道パターンである6-4-5-1型に収めてみましょうか。

はい。確かに自然な流れにはなりました。でも、だからなんだというのでしょう。雪の白く冷たい情景、故郷を去る悲しみ、不吉な予感・・・そういった曲想が全部消えてただのノーマルなポップスになってしまいました。「表現したいものに相応しい音響」という点でいえば、これは大失敗です。

つまるところ、流麗で聴きやすければ良いというほど、現代の音楽は単純じゃないということなのです。表現したいものがあって、それを適切にアウトプットするためのツールとしての理論でなければならないのです。

エアロスミスの名曲、映画アルマゲドンの主題歌「I Don’t Want to Miss a Thing」も、A²を完璧にはめ込んでいます。

サビのコード進行が、IVIImIVVIと動いているのです。これは、歌詞とセットで考えましょう。まず冒頭1-5と進行した段階では、まだ「I don’t wanna close my eyes」としか歌えていません。ここでコードがドカンとトニックに解決してしまったら、まるで「目を閉じたくない」というのが一番歌いたかったことかのように聞こえてしまいます。そう、まだこんなところで終止するわけにはいかないのです。

トニックに行くのをガマンしてガマンして、ちゃんとタイトルの「I Don’t Want to Miss a Thing」という部分を歌いきった瞬間に解決する。だからこの曲は痛快なのです。

もちろん実際には曲が先で詞が後なんでしょうけど、歌詞がないメロディ作りの段階でもこんな風に、「解決するのはまだ早いな・・・」なんていうのを感じながらメロディメイクをしてほしいわけです。

全く同じことをしているロックソングが日本にもあって、それがウルフルズの名曲「バンザイ」です。こちらはおなじみのサビが、IVIImIIImIVVという進行になっています。こちらも、意図が非常に分かりやすい。
やっぱり、「バンザイ」のところでガツンとトニックに着地したいんですよね。そこまでは、しっかりとタメを作りたいのです。だから、「好きでよかった」のところはまだ、浮遊した状態でいたいから、IImなのです。ベタなコード進行であれば1-5-6などと着地してしまうところを、そうしないところがこの曲の魅力なのです。

例えばこの1-5-6-3-4-1-4-5という、王道としておなじみ「パッヘルベルのカノンの進行」に乗せても、このメロディは違和感なく歌うことが出来ます(歌ってみてください)。しかしこれだと、美しすぎて全然カッコよくないのです。この曲が本来持っていた泥臭さや朴訥さといったものがなくなり、ただの「切ない青春ポップス」になってしまいます。

たとえ従来の理論に沿っていたとしても、表現したいものに合致していなければダメになる。これはその典型例です。


Active Nexusは、いわばコード進行の「花形」です。動きが大きく、しかもサウンドが個性的。まさに曲を「活発化」してくれる活性剤です。
ビギナーのうちはA型とB型を「同じ4度の移動」ということで、さして区別せずに作曲するのもありですが、このニュアンスの違いを理解すると、グッと表現力のスキルは高まるはずです。特に既存曲の分析をする際には、こういう点に着目してみると良いでしょう。

まとめ
  • Active Nexusは、4度の移動で機能を「逆行」します。そのドラマチックさ、ダイナミックさが魅力です。
  • V-IImは従来の理論では禁則扱いですが、その「裏切り」の効果を活かすことで、より奥深い曲想の表現が可能になります。
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