接続系理論 ❺ A型の諸用法

音楽理論 接続系理論

今回は、Basic Nexusと対になる存在である、Active Nexus、A型の進行を見ていきます。

A型

A型の特徴

A型は、T-D-S-Tという「反時計回り」の動きをすることになりますから、それぞれが表現上大きな意味を持った、とても大切なグループです。これもサンプルを聴いてみましょう!

6-3-4-1

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6-3-4-1の動きは、すごく感情を揺さぶるような曲想をもたらす、バラードの定番コード進行です。前回やった「6-2-5-1」や「6-4-5-1」と、似ているけど性質は全然ちがう。いきなりトニックからドミナントへ駆け上がるエモーショナルな表情が魅力です。

Aimerの「蝶々結び」は、サビ冒頭がこの6-3-4-1ですね。とてもドラマチック。ほか、ちょっと古めの洋楽、イーグルスの「Desperado」なんかもサビにこの進行を使っています。

6-3は「急激な高揚」、4-1は「穏やかな着地」ですから、とても情感が豊か。魅力的な進行です。ポップスやロックでよく使われていますが、ダンスミュージックなんかでも使用例はあります。

こちらも、テーマとしては悲しめな感じで、鬱々としたコード進行がよく似合っています。EDMのサウンドで演奏されるとまた趣が異なって面白いですね。

6-4-1-5

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こちらは6-4-1-5、A¹を2連発する活性的なコード進行。やっぱりA型は移動量が大きいので、ダイナミックさがありますね。特に激しめのロックにぴったりで、定番進行のひとつです。


こちらはサビで使用されています。ダークなパワーが存分に表現されていて、A型の魅力が活きていますね。模範的な使用例と言えます。

こちらもやっぱりサビと、その後のAメロでも使われています。

これは一曲丸ごと6-4-1-5。やっぱりこの進行は大胆さがあって、それがいい「パーティー感」を演出していますね。

A²の用法

A型の中で唯一危険視されているのが、VIImの進行です。前回同様、ドミナントからサブドミナントへの下行であるというのが、要注意の理由。これもいわゆる「逆進行」のひとつです。

A2

先述のとおり、IImVの方は「トゥー・ファイヴ」という名前までついたド定番の接続。VIImはその逆を行きますから、ものすごい逆行感があります。
以前のC²群は、逆行とはいってもルートが2度で動く「穏やかな逆行」でした。今回は、ルートが4度で動く「強烈な逆行」。クラシック理論・ポピュラー理論がこれを禁則としているのはもちろんのこと、現代の音楽を実際に分析してみても、この進行に出会うことはそんなに多くありません。

ただ、21世紀に入ってからコイツの存在感はメキメキと増しています。「禁則です」で終わらせず、この活用法を覗いてみましょう。

A²の活用例

A²の刺激を活かした代表例といえば、アナと雪の女王の「Let It Go」でしょう。

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さすがに天下のディズニー・カンパニーの曲をそのまま引用する勇気はなかったので、同じコード進行で、別のフレーズの曲を作りました。このコード進行って実は、かなり勇気ある選択なんですよね。模範的な進行なら、最後はIにいけばいいんです。それがベタな展開法です。

しかしラストにあえて「逆進行」をすることで、起承転結の「結」を奪われた形になる。それによって、ただならぬ雰囲気や落ち着かない感情を巧みに表現しているんですね。
ココにA²があるからこそ、王国から逃げ出した主人公の悲しみがよく伝わってきます。あえてクラシックの型にはまらないことで表現の幅を広げている模範的な例といえるでしょう。

試しにラストをIに変えて、王道パターンである6-4-5-1型に収めてみましょうか。

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はい。確かに自然な流れにはなりました。でも、だからなんだというのでしょう。雪の白く冷たい情景、故郷を去る悲しみ、自己肯定の決意、不吉な予感・・・そういった曲想が全部消えてただの無意味なポップスに成り下がりました。

つまるところ、流麗で聴きやすければ良いなんて、現代の音楽はそんな単純じゃないってことなのです。表現したいものがあって、それを適切にアウトプットするためのツールとしての理論でなければならないのです。

エアロスミスのスーパー名曲、映画アルマゲドンの主題歌「I Don’t Want to Miss a Thing」も、A²を完璧にはめ込んでいます。

サビのコード進行が、IVIImIVVIと動いているのです。これは、歌詞とセットで考えましょう。まず冒頭1-5と進行した段階では、まだ「I don’t wanna close my eyes」としか歌えていません。ここでコードがドカンとトニックに解決してしまったら、まるで「目を閉じたい」というのが一番歌いたかったことかのように聞こえてしまいます。そう、まだこんなところで終止するわけにはいかないのです。

トニックに行くのをガマンしてガマンして、ちゃんとタイトルの「I Don’t Want to Miss a Thing」という部分を歌いきった瞬間に解決する。だからこの曲は痛快なのです。A²の動きは、その強烈な解決のための「クラウチング」として必要なのです。

もちろん、実際には曲が先で詞が後なんでしょうけど、歌詞がないメロディ作りの段階でもこんな風に、「解決するのはまだ早いな・・・」なんていうのを感じながらメロディメイクをしてほしいわけです。

全く同じことをしているロックソングが日本にもあって、それがウルフルズの名曲「バンザイ」です。こちらはおなじみのサビが、IVIImIIImIVVという進行になっています。こちらも、意図が非常に分かりやすい。
やっぱり、「バンザイ」のところでガツンとトニックに着地したいんですよね。そこまでは、しっかりとタメを作りたいのです。だから、「好きでよかった」のところはまだ、浮遊した状態でいたいから、IImなのです。ベタなコード進行であれば1-5-6などと着地してしまうところを、そうしないところがこの曲の魅力なのです。

例えばこの1-5-6-3-4-1-4-5という、王道としておなじみ「パッヘルベルのカノンの進行」に乗せても、このメロディは違和感なく歌うことが出来ます(歌ってみてください)。しかしこれだと、美しすぎて全然カッコよくないのです。この曲が本来持っていた泥臭さや朴訥さといったものがなくなり、ただの「切ない青春ポップス」になってしまいます。

たとえ従来の理論に沿っていたとしても、表現したいものに合致していなければダメになる。これはその典型例です。


Active Nexusは、間違いなくコード進行の「花形」です。いちばんドラマチックで、ダイナミック。まさに曲を「活発化」してくれる活性剤です。ビギナーのうちはA型とB型を「同じ四度の移動」ということで、さして区別せずに作曲するのもありですが、「時計回り」と「反時計回り」のニュアンスの違いを理解すると、グッと表現力のスキルは高まるはずです。

特に既存曲の分析をする際には、こういう点に着目してみると良いでしょう。

総括
  • Active Nexusは、四度の移動でTSD循環を「逆行」します。そのドラマチックさ、ダイナミックさが魅力です。
  • V-IImは従来の理論では禁則扱いですが、その「裏切り」の効果を活かすことで、より奥深い曲想の表現が可能になります。

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