sus4とaugの拡張

コード編 Ⅲ章:新しい名前
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今回は「新しいコードネームを知る」回です。

これまでに身につけてきたコードとセブンスコードを合体させて、さらに複雑なコードを作るという回です。 かなりややこしいコードが多く、実際に使われるものは限られてきます。

良質なポップス、高級感のあるクラシック系楽曲、大人っぽいジャズ系楽曲などを作りたい時には、こうした複雑なコードが生きることがあります。


「四和音」と言えば、音を4つ重ねたコードのこと。これまでに、メジャーとマイナーを元にしたセブンスコード4種類を紹介してきました。

セブンスコードまとめ

しかし、我々はすでに「フラットファイブ」などの新しい和音を手に入れていますから、それとセブンスコードを組み合わせたらどうなるかを考える余地があります。

#1 sus4とセブンス

では、新しいトライアドとセブンスを合体させてみましょう! まずは、第3音を変異させた「sus4」です。

セブンスサスフォー

sus4においてももちろん「長7度」と「短7度」を乗せる2パターンが考えられますから、「M7sus4」と「7sus4」の2種類のセブンスコードが成り立ちます。

特にVsus4なんかの響きに厚みが足りないという時に、V7sus4にするといった使い方が一般的ですね。

IIm7Vsus4{IM7}{IVM7}
こちらは単なるsus4を使ったバージョン。確かにIIm7やIM7はセブンスコードですっかりオトナな響きなのに、sus4だけがストレートで力強く、足並み揃っていない感じがあります。
IIm7V7sus4{IM7}{IVM7}
そこで、sus4を7sus4に変えました。微妙な差ですが、こちらの方がサウンドが複雑でリッチになり、今回のジャズ風音源には似合っています。一段階グレードアップしたような感じがありますね。

ただしシンプルなロックなんかでは、単純なsus4の方が似合うこともありますから、適切に使い分ける必要があります。

ちなみに上の音源では、Vsus4を普通のVに解決させていませんね。そのままIへ進んでしまっている。実はジャズのように複雑なサウンドが愛されるジャンルでは、このように「sus4を解決させない」というパターンが、技法のひとつとして存在しています。

ちょっとの差が大切
音源を聴き比べて、「大した違いじゃないじゃん」と思った人もいるかもしれませんが、とんでもない。本当にこういう一音一音の小さな差が積み重なって、最終的には大きなクオリティな差になるのです。 例えばファッションも、ちょっとした小物やら丈やらへのこだわりで、初級者か中級者かが分かれてくるらしいですよね。料理なんかも、ちょっとした下ごしらへやら火加減やらで、最終的な仕上がりの「プロ感」が変わってきます。
FASHION

今やっているのは、まさにそれ。こういうところで大差無いからといって適当にしてしまうのはアマチュアのマインド、「当たり前に最高の音を選べる」よう耳の感覚を磨くのがプロフェッショナルのマインド、というところなのです。

M7sus4について

M7sus4の方は、実はあまり使われません。構成音を見るとわかりますが、ファとシで悪魔の音程である「増四度」が出来上がっています。そこがメジャーセブンス本来の優美で穏やかなサウンドとマッチせず、なかなか上手く活用しづらい、上級者向けのコードです。それゆえ、ここでは紹介を省略いたします。

#2 ♯5とセブンス

♯5とセブンスの場合、本来セブンスコードが4種類ありますから、そのそれぞれで#5を作ることができます。

7(#5)

オオオォ・・・ややこしいですね。でも、ようするに、さっきのセブンスコード4種の、ソに♯がついただけですよ。 だからもうこの辺まで来たら、暗記するとかいうことじゃなく、これまでの理論を元に組み合わせれば自然とこの名前と形になるねっていう話ですよね。

マイナーセブンスとマイナーメジャーセブンスにシャープファイブを施したものは、ポピュラー音楽の範疇ではまあめったに使われません。音響が複雑すぎますからね。

7(♯5)の活用

上の四つの中で唯一それなりに活用されるのが、7(♯5)の形です。けっこうピンポイントなのですが、{III7}と{VI7}の変形版として使うことでおなじみです。
IIIとVI

この2人はシャープファイブを施しても、「シ→ド」や「ミ→ファ」のように、そこに関して臨時記号が生じません。だから使いやすいわけですね。実際に聴いてみましょう。

IV6III7(+5){VIm7}Vm7I7
「パラレルマイナー」の時にも紹介した、バラード定番のコード進行ですが、IIIのところがずいぶんオシャレですね。この割り切れない感じの独特な濁りが魅力なのです。
{IVM7}{III7}{VIm7}VI7(+5)
今度はIIIの方では遊ばず、VIm7のあとにシャープファイブを入れてみました。すごく切なさを煽るような感じになりましたね。 VI7をVI7(♯5)にするというのは、ミをファに変えるということですから、強傾性音のファが強い不安を煽ることになります
VI7(+5)の楽譜

なかなか上級者向けのサウンドですが、ジャズっぽい曲調や、バラードのここぞというところに入れたりすると有効ですね。

実を言うとコレ、別にセブンスコードにせず単なるシャープ・ファイヴにするだけでもけっこう効果的なのですが、やっぱりセブンスコードの方が重厚感が出るのです。

Check Point

sus4や♯5・♭5は「飛び道具」として効果的だが、音を変位させた代償として、必然的に元々のコードトーンがひとつ減ることになる。そのため、本来のメジャー/マイナーコードよりも響きが貧弱になりがちで、ジャンルによってはそれが好まれない。

そこで、セブンスコードにしたうえでこれらを使うことにより、ユニークな響きとサウンドの厚みを両立することができる。

Augmented 7th

ちなみに以前「シャープ・ファイブ」を紹介したとき、メジャーコードのシャープ・ファイブには「Augmented」という別の呼び名もあるという話をしました。
aug
ですから、このセブンスコードバージョンについてもやっぱり、「Augmented 7th」「Augmented Major 7th」と呼ばれることがあります。むしろこの呼び名の方が一般的ですね。
aug7

シャープファイヴの説明はここでおしまい。 残るはフラットファイヴですが、一旦ここで記事を区切りましょう。

この節のまとめ
  • sus4からはメジャーセブンスとドミナントセブンスを作れます。
  • #5は、4種類のセブンスと組み合わせることができます。
  • こうしたコードには、いくつかの定番パターンが存在し、理論上コードとして存在するけれどほとんど使われないものもあります。
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